厚労省の調査によると、2015年度の有給休暇取得率は49.4%。政府が目指す2020年に70%を目指すという目標には程遠い。
日本人の働きすぎを解消するためにも積極的に有休を取得していきたいところだが、なんとか阻止させようと目論む上司がいる。2ちゃんねるには今年2月末、「部下の有給取り消させたいんだけど」というスレッドが立ち、非難を浴びている。
休みと会議が重なり、「勝手に旅行の計画を立てるのが悪い」
スレ主の部下は旅行に行くため、1か月前に有休を申請。振替休日と合わせて1週間休む予定でいる。しかし休暇とプロジェクトの進捗会議が重なり、部下が会議を欠席してまで旅行へ行くことが許せないスレ主は、「勝手に旅行の計画を立てるのが悪い」などと怒りをにじませる。
その後も強気の発言を繰り返したが、背景には使用者が有休取得の時季を変えられる「時季変更権」の存在があるようだ。
「旅行で飛行機とホテルを予約済みらしい 舐めてんのか取り消せよ」
「キャンセル料とかグダグダ言ってるし そのために給料払ってんだろ」
と、ひどすぎて最早釣りかと思われるレベルだ。これに対してスレッドでは、「パワハラ」といった批判が相次いだ。
「無能上司『部下がいないと会議が~』 お前がフォローしろよ」
「1ヶ月前なら代理を手配してない上司の手落ちだろ」
1か月前に申請があったのに今になって時期を変えろ、というのは理不尽だ。プロジェクトの進捗会議も、事前に部下から引き継いで上司であるスレ主が対応すればいいだけのことだろう。
もっと有休を取得する人が増えれば、こうしたケースは少なくなるのでは?
労働基準法では、働く人が雇入れの日から起算して6か月継続して勤務し、所定労働日の8割以上の出勤があれば付与されることになっている。取得に際して承認は必要ないとされる。
ただ、好き勝手に休みを取られては仕事に支障をきたすおそれがある。そこで使用者には、「時季変更権」が認められている。「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、有給を認めず休みを別の日にずらすことができる。たとえば、同じ時季にたくさんの人が有給を取ったり、代わりの人の配置が困難な場合などが該当するが、ただ忙しいだけでは理由として不十分だ。(参考:『2016-2017年版 図解 わかる労働基準法』荘司芳樹・著)
ただ、今回のように休む人が悪者扱いされてしまうのは、有休を取得刷る人が普段から社内に少ないからではないだろうか。
エクスペディアが昨年12月に発表したリリースによると、日本人は「休むことに罪悪感がある」と答えた人の割合が調査対象30か国中でもっとも高く63%もいた。本当は休みたいのに、周りの目を気にして遠慮している様子が見てとれる。
有休という権利を使えず、企業の都合に合わせっぱなしでは生産性だって上がらない。仕事と休みのメリハリをつけられる社会になってほしいものである。