経団連の調査では、企業が新卒採用の選考時にもっとも重視する要素は、15年連続で「コミュニケーション能力」だ。そんな中、大学や企業は、学生のコミュニケーション能力を開拓すべく変わった取り組みを始めている。
3月8日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で、卒業直前の学生を対象にした「叱られ方セミナー」や、ツイッターで採用活動する企業を紹介した。(文:okei)
「いつまでかかってるんだ!」は「作業時間が長い」と考えよ
大正大学(東京・豊島区)が8日に開催した「叱られ方研修」の目玉は、「本当の叱られ方を身に付ける」ことだ。「怒る」と「叱る」の違いや、「叱るのは成長してもらいたいため」など、叱る側の意図を学ぶ。
叱られたときの言葉の読み解き方も教えており、例えば「いつまでかかっているんだ!」は、
「作業時間が長い」「仕事の仕方を変える必要がありそう」「早く完成してほしい」
などと訳されている。「突然話しかけてくるんじゃねーよ!」は「今は別のことに集中している」という意味だ。激しい口調に戸惑わず相手の真意を探るよう、外部講師がアドバイスしていた。
セミナーを開催した大正大学の木元修副学長は、
「叱る方は相手を育てようとしていても、新人は思いのほか強いダメージで受け止める。未経験な部分を、社会に出る前の心構えとして講座を受けておけば、びっくりせずに済む」
と意義を説明した。
受講した学生は、「ここに気を使わなきゃいけないのか(と気付いた)」「叱る側にも、もっと伸びて欲しい、向上して欲しいという意図があるとくみ取れた」と話す。
上司世代からしてみれば、そんなこと当たり前だと思うかもしれないが、叱られ慣れていない若者からすると「いつまでかかってるんだ!」の意図を正しく理解しろと言われても困るだろう。本来はこうした暴言を吐かずに普通に注意や指導をすればいいだけで、あまりに続けばパワハラだ。しかし若者も繊細すぎる面はあるため、簡単に心が折れないよう考え方を整理するのも、コミュニケーション能力のひとつと位置付けられるのだろう。
「写真で一言!」今だから必要な文章表現力
一方、今年から「ツイッター大喜利」で採用を始めたのが、中古車販売会社のネクステージだ。公式アカウントにお題となる写真を用意し、面白い一言をリプライで投稿してもらう。8人いる採用担当者の過半数が面白いと認めると、一次面接を飛ばしていきなり最終面談に臨めるという。
投稿には、"車のエンジンルームをのぞき込む写真"で、「お父さん こんなとこにいたの…」。"車のバンパーを指さす男性の写真"で、「[話題の記事]ネクステージ営業職男性 指で走行中の車両を止める」など。投稿をした学生は、「発想力が面白い」として、すでに面接に進む予定が決まっている。
取締役の一人は、ツイッターの投稿はコミュニケーション能力を見る材料になると語る。
「営業職では会話が大事と思うんですけど、文章で人の心を動かすのは、今だから必要な能力なのかなと」
ツイッター大喜利を始めるきっかけになったのは、去年4月に入社した、新人のなかで成績トップの営業社員だ。彼は成約すると手書きの手紙をお客に手渡しており、通常のお礼のほか、P.S.で相手に合わせた気遣いやメッセージを添え信頼を得ている。コミュニケーション能力と一口に言っても、ただペラペラ喋れればいい訳ではないことがよく分かる。
確かに一発芸のようなものでどうかとは思うが、ツイッターで魅力ある発言ができる人は貴重だし、今どきのコミュニケーションはメールが大きな比重を占めている。「文章で表現する能力や発想力を見極める」という意図は、あながち間違ってはいないだろう。