インディカー・シリーズ開幕戦がセント・ピーターズバーグで開催。11日に決勝レースが行われ、セバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング)が2年連続でオープニングレースを制した。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)は、追突されたのが響き12位となった。
シリーズに出場する自動車メーカーにとっても、各チームにとっても経済的負担が大きくなってしまった空力対決には2017年で終止符が打たれた。インディカーの陣頭指揮でユニバーサルエアロキットと呼ばれる全車共通のエアロパッケージが開発され、それが2018年シーズンからは使われることになった。
ベースシャシーは元々全員同じ。エンジンはホンダとシボレーの2メーカーが2012年から開発競争を続けてきており、もう何年も彼らの実力は拮抗したまま。そんな状況で迎えられた2018年のインディカー・シリーズは一体どのような戦いにになるのだろうか? フロリダ州のストリートコースで開催された開幕戦ファイアストンGP・オブ・セント・ピーターズバーグでひとつの答えが出た。
それは、シリーズやファンが期待した通り、昨年まで以上の実力伯仲状態が作り出されたということだ。エンジン性能にほとんど差はなく、歴史あるチームから新興勢力までの実力差も新エアロの導入で縮められた。新しいマシンはベテランとルーキーのドライビングやセッティングにおける差も小さくさせていた。
曇りがちだった金曜と土曜、雨交じりのコンディションで争われた予選でポールポジションを獲得したのは、ルーキーのロバート・ウィケンス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)だった。
ドイツのDTMというプロフェッショナルシリーズで経験を積んで来た彼は、ハーフウエットの難しいコンディションでインディカーをもっとも巧みに操作し、予選最速の座を勝ち取った。
予選2番手こそ2014年チャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が手にしたが、3、4番手にはマテウス・レイスト(AJフォイト・レーシング)とジョーダン・キング(エド・カーペンター・レーシング)というルーキーが食い込み、グリッド2列目までにルーキー3人が陣取った。予選5、6番手はベテランの佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)とライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が手に入れた。
ルーキーたちはレースでも変わらぬ速さを見せるのか、大きな注目が集まった。タイヤのマネジメント、燃費をセーブしつつラップタイムを落とさない走り、ピット・ストップ、リスタート……とルーキーには身につけるべき要素が多い。
しかし、今年のルーキーたちはそのほとんどがレースでも驚くべき順応ぶりを見せた。特にウィケンスは素晴らしく、スタートからトップ争いに残り続け、レースが終盤になってもトップを保っていた。
しかし、結果を見ると最終的にトップ10でフィニッシュできたルーキーはいなかった。ウィケンスは勝利目前までいったが、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)にゴール前3周のリスタートでヒットされてクラッシュ、リタイアの憂き目を見た。
■最後のリスタートを悔やむルーキー
ターン1でウィケンスのインに飛び込んだロッシだったが、タイヤかすに乗ってスライド、アウト側でコーナーを回り切っていたウィケンスにヒットした。
ロッシは走り続けて3位フィニッシュ。ウィケンスは110周のうちの69周をリードするルーキー離れしたパフォーマンスを見せながら、1ラップダウンの18位という結果に終わった。
「あのリスタートは今日何度もこなした中での最悪のものになっていた。ちょっと混乱があったからね。無線でグリーンフラッグだと聞かされたが、目の前をいくペースカーのライトは点灯したままだった。それで十分にリスタートの用意ができなかった」とウィケンス。
その2周前のリスタートでは悠々とロッシを突き放し、1ラップの終わりには決定的な差をつけて見せたが、最後のリスタートは不運な結果に繋がった。
「レースのペースをコントロールできていた。必要と感じたら後続に差をつけることさえ可能だった。燃費も言われた数字をキッチリ実現させていた。110周のレースは、あのアクシデントの前まで本当に良いものになっていた」とウィケンスは悔しがっていた。
勝ったのはセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)。昨年に続く地元での開幕2連勝だ。
「1周目にタイヤをカットしてフレッシュレッドを無駄にした。そこから作戦も利用して上位に進出。開幕戦は3位でもハッピーと、リスタートでも前の2台とは間隔を十分に開けようと考えていたぐらいだった」
「そうしたらターン1で前の2台が絡み、僕の元へ勝利が転がり込んできたんだ。勝てたと知った時には感激したよ。昨年のインンディ500の予選で怪我をして以来の初勝利だからだ。リハビリは自分だけでなく、周りの人たちも本当に大変だったからね」と彼は話した。
予選5番手から開幕戦に臨んだ佐藤琢磨は4、5、6番手を保って周回を重ねていたが、35周目にスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がターン1でブレーキングをミスして突っ込んできた。
右リヤタイヤがパンクし、ディフューザーなどにもダメージを受けたマシンでは最後尾からの追い上げも叶わず、完走はしたものの12位という結果に終わった。
「今日のレースではタイヤかすが凄かった。ダウンフォースの少ないマシンになった影響ですね。それにしてももあのぶつかり方はないですね」と琢磨は残念がった。
あの時点で琢磨のすぐ後ろを走っていたジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が4位でフィニッシュし、琢磨にぶつかった張本人のディクソンも6位で初戦を終えた。
優勝争いが可能なペースではなかったが、上位でのフィニッシュは十分に可能なパフォーマンスを見せながら、琢磨は不運に見舞われた。