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『M-1』出演歴のある異色のバイプレイヤー!? “笑い”に欠かせない俳優・前野朋哉

2018年03月12日 06:02  リアルサウンド

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 いよいよ佳境を迎える連続テレビ小説『わろてんか』(NHK)で、その存在がお茶の間に浸透し、賑やかな面々とともにアサリ役として日本の朝を元気にしてくれる前野朋哉。auのテレビCM『三太郎』シリーズで演じる一寸法師役をはじめとし、見かけない日などなくなりつつある彼は、今どこを見ても“必ずいる”ように思える俳優だ。それほどまでに目覚ましい活躍ぶりのなのである。それも特に、笑いの場には欠かせない。


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 『わろてんか』で演じるアサリは、歌舞伎役者に憧れながら“にわか”を演じる芸人だったが、いつしか大野拓朗演じるキースと絶妙なコンビ感を披露するようになり、ど派手な「どつき万歳」から軽妙な「しゃべくり漫才」へと、その先駆者として大きく花開いていく存在だ。心地良い掛け合いを見せる大野との共演は、本作が3度目。ついつい笑える他愛のない諍いから、男子2人の青春模様を思わせる熱く切ないぶつかり合いまでを見せ、本作を大いに盛り上げている。


 前野と大野は、『M-1グランプリ2017』に、「潮干狩」のコンビ名で出場し、予選の1回戦を突破。コンビ芝居が抜群に上手い前野とはいえ、これには恐れ入る。ところが彼は、前年の2016年にも映画『エミアビのはじまりとはじまり』で森岡龍とともに漫才コンビ役を演じ、「エミアビ」のコンビ名で『M-1グランプリ2016』に出場。同じく予選の1回戦を突破している。こちらの作品では『わろてんか』とはまた違った趣の、現代の漫才を披露。リアルとファンタジーが融合した世界観の中で“笑い”を体現し、さらに言えば作品の恋愛パートまで担い、不器用な恋心をも垣間見せている。もとはお笑いに門外漢であるはずの彼だが、コンビを組む相手が違っても結果を残せるということは、その“笑い”の素養を持ち合わせていることの証明でもあるだろう。


 『桐島、部活やめるってよ』(2012)で、神木隆之介演じる主人公の親友役で一躍注目の的となり、絶えずキャリアを積み重ねる一方、多忙な日々の中で自身も監督作を発表し続ける前野だが、『恋愛奇譚集』や『東京喰種 トーキョーグール』、『エキストランド』に『勝手にふるえてろ』など、2017年には8本もの映画に出演。これまでにも若手から名匠に至るまで多くの監督たちに重宝され、また小品から超大作に至るまで、その味わいを遺憾なく発揮できる役どころへの起用が続いている。これは映画界における彼の信頼度の高さがうかがえる事実だ。


 『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』では初めて声優に挑戦し、声の演技だけで、映画やドラマと同じくその個性を作品に焼き付けた。出演最新作である『チェリーボーイズ』では、林遣都、柳俊太郎とともに“こじらせ男子”トリオを結成。脇役でキャスティンされることが多い彼だが、主役ポジションで作品の中心に立っても大いに目立つ。お正月映画『嘘八百』でも、ベテランである中井貴一や佐々木蔵之介を相手に安定の“笑い”で勝負。2018年の“笑い初め”に、前野の存在はたしかに間違いのないキャスティングあった。


 しかし『わろてんか』での好演がそうであるように、彼の活躍のフィールドはもちろん映画だけではない。昨年はドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)や『コウノドリ』(TBS系)などにゲスト出演し、その回の展開を大いに盛り上げた。あたかもレギュラー出演しているかのように作品世界にごく自然とフィットする、その順応性の高さもまた、前野の魅力であり強みだろう。


 ごく平凡な若者から、特異なキャラクターまでを巧みに体現し、演じる役の大小に関わらず作品ごとに強い印象を残していく前野朋哉。ラストへと向かう『わろてんか』を最後まで支え、まだまだ大きな笑いを巻き起こしてくれることに期待したい。


(折田侑駿)