4日間で計498周、距離にして2,323.17km。これは3レース週末分の距離に匹敵する。バルセロナ合同テスト2回目でトロロッソ・ホンダはこれだけの距離を走破した。
テスト1回目は様々なアイテムを効率よくテストするために、毎晩別のアイテムが組み込まれたパワーユニットを組み替えながら走行していた。しかしテスト2回目は本格的な耐久テストを行なうため、1基のパワーユニットでこれだけの距離を走り切ったのだ。
ブレンドン・ハートレーがフルレースシミュレーションの終盤に差し掛かった頃、テレメトリー上でパワーユニットに異常な数値が確認されたためチームはハートレーをピットに呼び戻し、確認作業のためここでテストは終了となった。
ホンダにとっては今季初めての不具合らしい不具合だったが、これがパワーユニットをさらに上手く使うための一助になってくれるはずだ。田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターはこう語る。
「レースシミュレーションがほとんど終わるところだったんですけど、データ上に異常な数値が見られたのでそれを切り上げてピットに戻って、データ解析と現物確認をしているような状況です。残念ですけど、そのまま終了ということになってしまいました」
「今回走ったエンジンをきちんとバラして中を確認して、ベンチでテストをしているエンジンともダメージ度合いなどを比べて、その上で(どこまで攻めれば壊れるということを把握して)使い方を考えていきたいと思っています」
この影響もあって前日のガスリーのように夕方に改めてフルアタックを行なうチャンスはハートレーには巡ってこず、午前最後の予選シミュレーションで記録したのがこの日の自己ベストタイムとなった。
ハイパーソフトを履いてはいたものの、アタックラップではセクター3でレッドブルに引っかかり、ハートレー曰く完全な空タンクでもなかったようだ。事実、各車が午前中の予選シミュレーションを終えた時点ではハートレーは3番手につけていた、
そのため、7番手という最終順位とは裏腹に「中団で戦える」という手応えはよりいっそう強固なものになったようだ。
「僕としては8日間の最初と最後を担当して、この8日間で僕らはSTR13のパフォーマンスを大きく引き出すことができた。フルレースシミュレーションや軽いタンクのラン……もちろん完全な空タンクじゃないし燃料搭載量がどのくらいかは教えられないけど、とてもポジティブなテストができたと思うよ」
これからトロロッソの本拠地ファエンツァとHRD Sakura(栃木県の研究所)では8日間のテストで得たデータをさらに詳細に分析し、現状のSTR13が持つポテンシャルを最大限に引き出さなければならない。加えて、ホンダとしては万全の信頼性で開幕を迎えたいという思いもある。
「ここの最終テストの中でオーストラリアGPのベースとなる仕様をきちんと確認するというのが目標でしたから、ここからさらに一歩前に踏み出してオーストラリアでコケるというようなことはやらないようにと考えています。確実に一歩一歩前に進んで、良いところというか確実な結果をお見せできるようにやっていきたいと思います」
田辺テクニカルディレクターはそのようにあくまで慎重な姿勢を崩さないが、チーム側はマシンパッケージとしてのポテンシャルに手応えを掴んでおり、中団グループでポイント争いも充分可能だと見ている。
「ハースやルノー、マクラーレンはとても強敵だしトップ3チーム以下の残りのポイント圏内4席の争いは熾烈だけど、彼らとは戦える位置にいると思うし、僕らが中団グループのバトルの中にいることは間違いない」
「ここからさらに最大限にパフォーマンスを向上させるためにメルボルンまで最後の2週間で膨大なデータ分析と対策を行なわなくてはならないけど、チーム内は本当にものすごくポジティブな雰囲気に包まれているよ」
そして、ハートレーは開幕戦のターゲットをこう語る。
「まずはメルボルンで僕にとってF1での初ポイントを獲ること、それが僕たちのゴールだよ」
果たしてトロロッソ・ホンダは開幕戦でどのようなポジションにいるのか。トロロッソにとってもホンダにとっても新たなチャプターの1ページ目となる開幕戦は、2週間後に迫っている。