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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『坂道のアポロン』『去年の冬、きみと別れ』

2018年03月09日 23:01  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のロン毛担当・宮川が2本のイチオシ作品をプッシュします。


参考:岩田剛典×斎藤工が語る、信頼関係から生まれた“その先”「偶然ではなく必然的なものになっていく」


■『坂道のアポロン』


 原作は『月刊flowers』で連載された小玉ユキの同名コミック。2012年には『COWBOY BEBOP』の渡辺信一郎監督と音楽の菅野よう子の再タッグによって、フジテレビ「ノイタミナ」枠でアニメ化もされ、好評を博した人気作品だ。父を亡くし、長崎県・佐世保の高校に転校した西見薫が、誰もが恐れる不良・川渕千太郎と、その幼なじみの迎律子と出会い、一生ものの友達と一生ものの恋、そしてジャズの魅力を知っていく模様が描かれる。


 1960年代という時代設定、長崎県・佐世保というロケーション、そして物語の大きなテーマのひとつでもある“ジャズ”の演奏を実写でどう表現するのか。原作者の小玉自身も「想像がつかなかった」と公式サイトでコメントを寄せているが、それを見事にやってのけたのが、『ホットロード』、『明日、昨日のきみとデートする』、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』など、原作ものの実写映画化作品で数々の成功を収めてきた三木孝浩監督だ。


 映画では、高校時代から10年後、大人になった薫が当時を回想する形で物語が進行していく。これは原作にはない映画オリジナルの試みで、ただのティーンムービーにはとどまらない、大人にも楽しんでもらえるようにという制作陣の思いがあったようだ。とはいえ原作に忠実な作りになっているのも事実。佐世保でのロケはもちろん、ジャズの演奏シーンも薫役の知念侑李と千太郎役の中川大志が吹き替えなしで挑んでおり、大きな見どころのひとつとなる文化祭のシーンは圧巻と言える。


 女優の演出においてその手腕が評価されている三木監督だが、本作では知念侑李と中川大志による、薫と千太郎の友情以上とも言える関係性を、光や空間を巧みに使った演出で、見事に表現しており、新たな一面を見せている。


 近日中に公開予定の三木監督のインタビューでは、そのあたりの演出の秘密や、原作もの映画化成功の秘訣などを語ってもらっているので、そちらもあわせて楽しんでもらいたい。


■『去年の冬、きみと別れ』


 実写映画化のハードルでいうと、この作品も負けてはいない。芥川賞作家・中村文則の同名小説を、『脳男』『グラスホッパー』の瀧本智行監督が映画化した『去年の冬、きみと別れ』。


 本作では、最愛の女性との結婚を控える若き記者の耶雲恭介(岩田剛典)が、危険な噂の絶えないカメラマン木原坂(斎藤工)と、かつて木原坂が容疑者として逮捕された猟奇殺人事件の真実を暴こうとする中で、抜け出すことのできない闇に堕ちていく模様が描かれていく。


 サスペンスである本作をネタバレなしで語るのは至難の技ではあるが、映像化困難と言われた原作を、非常に挑戦的な構成で描いているのが本作最大の特徴だろう。サスペンスとしての面白さはもちろんだが、中でも特筆すべきは役者陣の見事な掛け合いだ。これまでのイメージを大きく覆すような岩田剛典の演技はただただ素晴らしい。本作で、役者として大きな進化を遂げたと言っても過言ではない。


 リアルサウンド映画部では、そんな岩田剛典と斎藤工のインタビューを掲載中。お互いの印象やチャレンジングな本作の試みを存分に語ってくれている。(リアルサウンド編集部)