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呪縛を解く方法は? 『隣の家族は青く見える』“毒親が生む負の連鎖”に切り込む

2018年03月09日 14:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 場の空気をかき乱す上、自分の価値観を人に押し付けるなどして、コーポラティブハウスの中でも第1話から嫌われキャラだった小宮山深雪(真飛聖)。3月8日に放送された『隣の家族は青く見える』第8話では、彼女が必死に取り繕っていたメッキが剥がれ、バックグラウンドがついに明らかになった。


参考:松山ケンイチが語る、夫婦のバランス 「片方が落ち込んでいたら片方が楽しい方に連れていく」


 子供が欲しくない事実婚カップル・杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)vs子育てを全力で推奨してくる深雪、コーポラティブハウスが建つ前から険悪だった2人。これまでも度々繰り広げられてきた彼女たちの熱烈なバトルは、五十嵐奈々(深田恭子)が困り顔で仲裁に入ったり、青木朔(北村匠海)が「もっとやれー」とはやし立てたりするなど、重いテーマを扱う本作の中でもコメディー要素の役割を果たしており、名物的シーンとなっていた。


 しかし反発し合う深雪とちひろは、それぞれ親の呪縛から離れられずにいる共通したバックグラウンドを持っていたことが今回明らかになる。深雪の長女・優香(安藤美優)は、私立中学受験合格を願う深雪の思いに反して、ダンス部がある公立中学に通いたいと心中を吐露。深雪は、そんな娘にいら立ちを覚え、思わず手を上げてしまいそうになるが、ちひろが全力で阻止し、事なきを得る。


 実は、ちひろは母親から暴力を受けて育ってきており、そんな親を見てきたからこそ「子供を持ちたくない」という思いを抱えて生きてきた。一方、深雪はどんなに努力をしても親から褒められることのない幼少期を送ってきたことを告白。親が喜んでくれたのは子供を産んだときだけだと語り、それが深雪が子育てを強く勧める理由になっていた。


 ネグレクトや暴力など、子供に悪影響を与える親のことを、ネットでは“毒親”と呼んでいる。「親を大切にする」というのは社会的正義とされているが、世の中には心の底からそれができない“親の呪縛から逃れられず大人になった子供たち”が存在している。


 さらにこの呪いの苦しいところは、親の嫌な部分が、自分の中にも宿っていることに気付く瞬間だ。親から褒められないことに苦しみ、Instagramで見栄を張り、他人にマウントをかけてきた彼女は、無意識のうちに親から受け継いだ呪いを娘にもかけてしまっていたのだ。だから、幸せとはいえない子供時代を送ってきたちひろが、亮司の息子・亮太(和田庵)に対してうっかり働いてしまった過ちに、全力で頭を下げる姿は非常に印象的だった。ちひろのように、毒親の呪いは強い信念と殻を破る勇気で、自ら解き放つことができるのかもしれない。


 「子供を授かりたい」と願う五十嵐夫妻を中心に描かれてきた本作だが、同時進行で“毒親”に切り込むのはかなり挑戦的な姿勢だった。しかし、対極する意見が共存しながらも、どこか説得力を持たせるのは、本作が十人十色のテーマを崩さず描いているからだろう。


 大器(松山ケンイチ)の母・聡子(高畑淳子)が言っていたように、自分の意見が昨日と違うことは悪いことではない。知らない世界や人々の考えを知った上で、固定観念を破壊するのは多様性重視の現代に必要なスキルだと強く感じさせられた。


(阿部桜子)