外国人技能実習生の劣悪な労働環境が問題となる中、新たに外国人の就農が認められる可能性がでてきた。国家戦略特区に指定されている京都府などが外国人の就農を解禁するよう求めていることが3月8日までにわかった。
外国人材が求められる背景には、深刻な人手不足がある。府の農林水産部の担当者は、「京野菜や宇治茶の生産が行われているが、農家が高齢化し、労働力が不足している。特に農繁期に人手が必要だ」と話す。
「農繁期と農閑期があるため、一か所で働き続けてもらうことは想定していない」
昨年、国家戦略特別区域法が改正されて、外国人の就農が規制緩和の項目に盛り込まれた。京都府と大阪府・兵庫県が指定されている「関西圏国家戦略特別区域」では、京都府での実施を盛り込んだ事業計画を提出し、認定を待っているところだという。
愛知県でも外国人の就農解禁を求めている。同県・政策企画局の担当者は、
「日本人が集まりにくい。渥美半島ではトマトやキャベツの生産が盛んだが、農家の高齢化も進み、人手が足りていない」
という。今回、受け入れる外国人材は、農家自らが行う加工業で働いてもらうこともできるため、農業と製造・加工業を一体化させる6次産業化の担い手になることも期待されている。
日本で働くことができるのは通算で3年だ。3年間働き続ける必要はなく、農繁期だけ働いて一度帰国し、また繁忙期に働くこともできる。人材派遣会社などが外国人を雇用し、農家に派遣する。農家や農業法人が直接雇用しない理由について、京都府の担当者は、
「農繁期と農閑期があるため、一か所で働き続けてもらうことは想定していないのではないか。例えば、野菜の収穫期にあるところで働き、別の期間にはお米の加工に従事してもらった方がいい」
と話す。繁忙期には人手が必要になるが、それ以外の期間も農家や農業法人が雇い続けるのは難しいということのようだ。
「何よりも問題なのは、受け入れ先の企業を変更できないことだ」
近年、外国人技能実習制度における、賃金の未払いや長時間労働がしばしば問題になっている。昨年末にも、女性服ブランドが発注している岐阜県の縫製工場が、時給400円で実習生に長時間労働させた挙げ句、1人600万円以上の賃金や残業代を踏み倒したことが問題になった。
今回の受け入れでは、外国人材が劣悪な環境で働かされる恐れはないのか。内閣府・地方創生推進事務局の担当者は、「人材派遣会社等の受け入れ企業は、外国人を派遣労働者としてフルタイムで雇用し、日本人と同等以上の賃金を支払うことになっている」と話す。
しかし、外国人技能実習生の問題に取り組む小野寺信勝弁護士は、心配は拭えないという。
「繁忙期の複数の農家を回ることで長時間労働になる可能性がある。また、農業に付随する作業には時間外の割増賃金が支払われるが、農作業には割増がない。割増賃金がきちんと支払われるのかどうか疑問だ。何よりも問題なのは、受け入れ先の企業を変更できないことだ。労働条件が悪くても受け入れざるを得なくなる」