3月8日に開幕を迎えるWRC世界ラリー選手権第3戦メキシコに向け、参戦するドライバーが意気込みを明かした。
2018年シーズン第3戦となるラリー・メキシコは、厳しい寒さのなか争われた第1戦モンテカルロ、第2戦スウェーデンとは一転、気温が摂氏30度前後まで達する南米メキシコを舞台に争われる。
この週末は4日間で22のスペシャルステージ(SS)が行われる予定だが、このうち現地9日の競技2日目にSS3/7として組み込まれているエル・チョコラッテは今大会最長の31.44kmで争われるロングステージ。
加えて標高2700メートル付近で争われる高地ステージでもあり、ドライバーは暑さだけでなく薄い酸素にも立ち向かう必要がある。また、空気が薄い状態ではエンジン出力も低下するため、マシンにもタフさが要求されることになる。
最上位クラスはシトロエンを除いた3チームが3台体制でエントリー。このうちMスポーツは若手テーム・スニネンに3台目のフォード・フィエスタWRCを託すほか、ヒュンダイは前戦ラリー・スウェーデンで総合5位を獲得したヘイデン・パッドンに代わって、第1戦モンテカルロに出場したダニ・ソルドを起用している。
2台体制での参戦となるシトロエンは若手クレイグ・ブリーンに代わって、WRC9連覇を達成したレジェンド、セバスチャン・ローブを起用。ローブにとっては2015年にラリー・モンテカルロにスポット参戦して以来のWRC復帰となるが、2006~08年、2010~12年と計6度ラリー・メキシコを制するなど、イベントとの相性は抜群だ。
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■Mスポーツ・フォード
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・メキシコに戻ってくるときは、いつも特別な思いがある。僕にとっては10年前、すべてが始まった場所だからね! 僕たちにとって初めての世界選手権イベントで、その物語はジュニアWRCでの優勝から始まったんだ」
「今年最初のグラベル(未舗装路)イベントとなるけど、ラリー・メキシコには独特な特徴があって、そのほかのグラベルラリーとは区別される。メキシコはシーズンを通して僕たちが戦うなかで、もっとも高度が高い。空気が薄いから、通常よりマシンパワーも不足してしまうんだ」
「こういった高い高度と暑さが重なる状況をヨーロッパ圏で再現するのはほぼ不可能なんだ。つまり、最大限にパフォーマンスを発揮するには人工気候室で作業するエンジニアたちに一層、頼ることになる」
「軟らかいグラベル路面も出走順の早いドライバーにはチャレンジングな要素になるだろうね。僕たちが先頭走者にならなくても、後ろには速いドライバーたちが控えている」
「(実質的に競技がスタートする)金曜朝に、差を詰めなければならない。そこで自分たちのポジションが見えてきたら、最高の結果を手にするために全力でプッシュするよ」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・メキシコは、本当に楽しめるイベントだ。雰囲気が素晴らしいし、過去にはいい結果も残している。クレバーな走りが結果に反映される1戦なんだ。スピードとリスクを負うバランスを取る必要があって、そこを目指して走りたいね」
「このイベントで思い出されるのは、暑さと高度だ。肉体面でもドライビング面でも、この環境に早く慣れなくてはいけない。空気が薄くなると最大20%程度はパワーが低下するから、コーナーを確実に攻略しなくてはならない」
「出走順は(遅く)悪くないけど、ライン上に石や岩が出ている可能性もあるから、難しい状況は変わらない。集中を切らさないようにして、弾みをつけたいね」
●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)
「本当にタフな状況に直面するから、ラリー・メキシコはシリーズのなかでもスペシャルなイベントのひとつだよ。気温は高いし、高度のおかげで空気は薄い。これはドライバーだけでなくマシンにも影響して、ほかのグラベルイベントよりエンジンパワーが低くなるんだ」
「(ヨーロッパでは)冬の寒さが続いたせいでテストできなかったのが残念だけど、こういうこともあるさ。メキシコでのフィーリングを確かめるためにもシェイクダウンを充分に活用しないとね」
■ヒュンダイ・モータースポーツ
●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・メキシコはこれまでに3度出場したことのあるイベントだ。ステージのことは熟知しているよ。気温が高いイベントだから、特にブレーキへ気を配らなくてはいけないね」
「路面も荒れていて、とてもミスを犯しやすいんだ。(出走順が早くコースの)掃除役を務めることが多いし、高地のSSではエンジンパワーが落ちる。だから、ドライビングスタイルを少し変える必要があるんだ」
「(第2戦)スウェーデンを表彰台で終えてから最初のヒュンダイ・モータースポーツで迎えるラリーだ。また強力な結果を出す準備はできているよ」
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「スウェーデンで夢のような勝利を飾ったあとでメキシコに向かうから、モチベーションも士気もこの上なく高い。メキシコは素晴らしいイベントで、いい思い出が蘇ってくる。2013年には初めて表彰台をメキシコで獲得して、その1年後にはヒュンダイ・モータースポーツにとって初の表彰台を手にした」
「環境と時差に適応するために、ふだんよりも早めに現地に入るんだ。今年初めての、高い気温下における高地でのイベントだ。ユニークで楽しめる挑戦になるだろうね」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「スウェーデンでチームがシーズン最初の優勝を飾るのを見ることができてよかった。それにラリー・メキシコでラインアップに戻ってこれてうれしいよ」
「メキシコのステージはいつも楽しんでドライブしてきた。たくさんの熱心なラリーファンが並んでいて、週末をとおして声援をおくってくれるんだ」
「メキシコで掃除役を務めることは、先頭走者と以降のドライバーに大きな違いを生む。マニュファクチャラーチャンピオンシップでチームがリードを守れるよう、自分たちの出走順を生かして、トップに近いところで戦えるよう願っている」
■シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「メキシコはカタルーニャ(第12戦スペイン)に少し似ている。昨年僕たちがとても強かったグラベルラリーのひとつだ。それ以来、C3 WRCにさらなる改善を施してきたから、トップ争いに加わりたいという強い願いがある」
「もちろん、昨年は多くのライバルたちが標高のせいで信頼性の問題に見舞われていた。彼らは今回はより周到な準備をしているだろう」
「ラリー・メキシコは間違いなく僕好みのイベントだ。マシンのフルパワーを出すことはできないから、できる限り着実にドライブしていかなければならないんだ」
「最近行ったテストの結果にも満足しているよ。僕たちは一層前進したようだ。特にオーリンズの協力でダンパー部分が進化したようだ。セバスチャン(・ローブ)も同じ印象を持っている」
「どんな場合でも、僕はラリーが楽しみだけどね。初日の7番目という出走順を最大限に活用する必要がある。良い結果を出すためにはそれが鍵になるだろう」
●セバスチャン・ローブ(シトロエンC3 WRC)
「ラリー・メキシコは昔から大好きなラリーなんだ。ドライブするのが楽しいC3 WRCで各ステージを楽しみたいと思っている。それ以外に、何が起こるか予想がつかないのはライバルと同じだ」
「周りと変わらないペースで走りたいとは思うけど、ほかのドライバーと比較してペースが速いか遅いか見当がつかないから、とにかくスタートが待ち遠しい」
「事前テストの結果にも満足しているよ。2日間でほぼ500kmを走り込んだ。マシンのバランスは非常に良いし、2017年の終わりのテストのときからまた改善されていると感じた」
「事前に(2016年まで使用されていた)シトロエンDS3 WRCをドライブする機会を多く設けた。自分の感覚と反射神経を取り戻すためにね。ラリーのオンボード映像を見たりもしたよ」
「(週末のSSのうち)全体の28%は初めて走る部分になる。それに対して他のドライバーたちが初めて走るのは全体の4%だ。それでもここは僕が熟知しているイベントのひとつだから、とてもポジティブな心境なんだ」
「ただ、記憶にある72%の部分を最後に走行したのは6年も前のこと。混乱しないように準備を整えたよ」
■トヨタ
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「冬が終わり、メキシコで暖かな気候と日差しを最初に経験するのがいつも楽しみなんだ。メキシコのステージは非常に高速なセクションと、低速なセクションの両方があり、走行ラインの外側には岩が転がっているため正確なドライビングが求められる」
「我々はスペインでグラベルテストを行ない、いい結果を得た。もちろんメキシコはもっと暑くなるだろうけど、1年のこの時期にヨーロッパでできるテストとしてはベストな環境だったと思うよ」
「サスペンションに改良を加えた結果、駆動力とブレーキング時のグリップ力が去年の終わり頃よりもよくなったように感じた。クルマに高いパフォーマンスがあることは明らかだし、もし表彰台に上がることができたら、それは選手権を戦う上で本当に素晴らしいことだ」
●オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)
「僕にとってラリー・メキシコは、ヤリスWRCで戦う最初のグラベルラリーとなる。新たに学ぶべきことは沢山あるけど、先週スペインで行なった2日間のテストはとても有効だったよ」
「可能な限り多くのことを試し、それに対してクルマがどのように反応するのかを理解できた。まだまだ慣れなくてはならないことや、改善可能な点はあるけど、グラベルでの最初のフィーリングはとても良いものだったよ」
「メキシコでグラベルステージの“掃除役”はかなり大変だけど、私の出走順は5番手と前戦よりもいいから、それが助けになるのではないかと期待している」
「メキシコでの実戦経験は充分にあるので、リラックスしてラリーに臨むことができるし、トップ争いに加わることも充分可能だよ」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「去年、コースのレッキ(事前下見走行)は行なったけど、ラリー・メキシコに出場するのは今回が初めてだから、どのようなラリーになるのか予想がつかない」
「メキシコの路面は、皆がプレイベントテストを行なったスペインのグラベルコースと似ている。しかし、SSを2回目に走行する時、路面はかなり荒れているだろうね。また、高度もスペインとは大きく異なるけど、空気が非常に薄い状況でドライブしたことはない」
「エンジンのパワーが低下するため、普段とは少し異なる運転をする必要があるだろう。開幕からの2戦については自分でも満足しているから、メキシコでもそのいい流れを維持したいと思うよ。すべてのステージを走り切り、将来のために経験値を高めることが今回の目標になる」