2018年03月08日 08:51 弁護士ドットコム
鳥取市の国道で盗難車の軽トラックが事故を起こし、荷台にいた中学2年の男子生徒(14)が転落。全身を強く打って死亡した事故があったと共同通信などが報じた。鳥取県警鳥取署は3月6日、自動車運転処罰法違反(無免許過失致死)と窃盗などの疑いで、運転した中学2年の男子生徒(14)を、窃盗などの疑いで助手席にいた中学3年の男子生徒(15)をそれぞれ逮捕した。
【関連記事:カップルの1人は何も頼まず「水だけ」「大盛りをシェア」、飲食店の「迷惑客」論争】
2人は、鳥取市の男性(68)宅から、鍵がついたままだった軽トラックを盗んだ疑い。運転した中学2年の男子生徒については、3月6日午前3時55分ごろ、無免許で運転して単独事故を起こし、荷台にいた中学2年の男子生徒を死亡させた疑いがあるという。
事実だとすれば、盗んだ車で無免許運転で人を死なせたという重大な事案だ。自動車運転処罰法は無免許過失致死の場合、「10年以下の懲役に処する」(5条、6条4項)と規定するが、未成年である2人の男子生徒は刑事上、どのような処罰を受けることが考えられるか。
また、亡くなった生徒と、逮捕された2人の生徒との関係は報道を見る限りは不明だが、遺族が不法行為に基づく損害賠償請求をする場合、どのような論点が考えられるか。濵門俊也弁護士に聞いた。
ーー自動車運転処罰法とはどのような法律でしょうか
「まずは亡くなられた男子生徒のご遺族に対し、お悔やみ申し上げます。正式には『自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年11月27日法律第86号)』といいます。それまで刑法に規定されていた自動車の運転により人を死傷させる行為に対する刑罰の規定を独立させたものです」
ーー刑事責任はどのように考えられますか
「報道によりますと、被疑者らが犯した罪は、窃盗罪や自動車運転処罰法違反の罪が中心となりますが、未成年であることからしますと、基本的には少年法の枠組みで処分が下されると思います。
被疑者として逮捕・勾留された後、家庭裁判所に送致され少年鑑別所に入所し、少年審判を待つということとなる公算が高いです。少年審判において何かしらの保護処分が下されることとなるでしょう」
ーー検察官送致、いわゆる逆送(検察から送致された少年を家庭裁判所が調査し、刑事処分を相当として検察に送致すること)はありえますか
「まったく考えられないわけではありません。ただ、16歳以上の少年が故意に被害者を死亡させた事件でもありませんので、刑事処分は受けないと思います」
ーーそれでは民事責任はいかがでしょうか
「被害者の遺族としては民事上、不法行為に基づく損害賠償請求(民法711条)をすることが考えられます。加害者らが中学生であることから責任能力(民法712条)が一応問題となりますが、14歳以上であれば原則的には責任能力はありとされると思います。ただ、支払能力はないでしょうから、加害者らの親族が支払うこととなるでしょう」
ーー事案の態様によって過失割合はどのように変わりえますか
「報道からは詳細な事情が分からない点もありますが、亡くなられた被害者生徒の態様によっては過失相殺(民法722条)が生じるのではないかと思われます。例えば、3人が友人関係にあり亡くなられた被害者生徒が自発的に荷台に乗ったとすれば、いわゆる危険の引受けのようなものですから、過失割合は大変多くなるでしょう。
また、本件では考えにくいですが、亡くなられた被害者生徒が何らかの事情で強制的に荷台に乗せられていたような事情があれば過失割合は軽減されるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えています。依頼者の「義」にお応えしたい。濵門の門(もん)は開いています。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/