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深田恭子vs真飛聖のコントラスト! 『隣の家族は青く見える』巧みな光の演出

2018年03月08日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 不妊治療に励む夫婦を主人公に、それぞれひそかに悩みを抱えた4組の家族・カップルの姿を描いたドラマ『隣の家族は青く見える』。3月1日放送の第7話では、それぞれが抱える不安や不満が爆発する回となり、胸が締め付けられる思いで鑑賞した視聴者も多いことだろう。


参考:深田恭子、視聴者の心に訴えかける苦悩の表情 『隣の家族は青く見える』の演技を読む


 第7話は光の当たる屋外のシーンは少なく、薄暗い屋内での会話シーンが多かった。コーポラティブハウスの住人たちに対してあたりの強い小宮山深雪(真飛聖)でさえ、冒頭のシーンでは顔に影を落としていた。登場人物たちの繊細な心理を描いてきた本作だが、その心理を描く上でキーとなっている“光”の演出に着目したい。


 もっとも心情と光の演出が顕著だったのは、感情の起伏が激しい深雪と主人公・奈々(深田恭子)が対峙するシーンだ。裕福な実家に娘の塾代を工面しに行った深雪だがうまくいかず、顔に影を落とす深雪だったが、帰り道、奈々の夫・大器(松山ケンイチ)が面識のない女性の部屋へあがるのを見て、表情を明るくさせる。ここから光の演出が顕著になる。わざわざ奈々に「旦那さん、浮気してるんじゃない?」と話す深雪。このとき、さっきまで光の当たっていなかった深雪の顔には、部屋の外から燦々と光が当たり、不妊治療で心身を消耗させ、夫の不倫疑惑に不安を抱く奈々の顔は、少々極端なほど暗く映し出される。深田の顔が暗くなればなるほど、真飛の表情は生き生きとしていき、顔に当たる光も強くなっていく。この分かりやすすぎるほど極端なコントラストによって、開始直後から、この回の全体的な不穏さが視聴者に伝わったはずだ。


 思い返してみると、不妊治療に励む前の夫婦の姿が描かれた第1話では、画面の暗さが気になるシーンはなかった。一方で第6話のラストでは、「子供なんか産むんじゃなかった」と泣く琴音(伊藤沙莉)の表情は、暗く映し出されていた。その後、琴音の頰を叩いた聡子(高畑淳子)とその場に居合わせた奈々や啓太(前原滉)のシルエットが逆光で映し出される。逆光により、呆然と立ち尽くす彼らの姿だけがシルエットとして浮かびあがり、静まり返ったその空間を際立たせていた。


 映画やドラマ作品において、照明の当て方で感情や雰囲気を演出することは決して珍しいことではない。だが、登場人物が抱える悩みを、これほど丁寧に描いた作品は近年なかったように思う。それぞれが抱える悩みに視聴者が頷きながら、ときに反発しながら観ることができるのも、キャスト陣の演技はもちろん、照明演出をはじめとしたスタッフ陣の繊細な仕事によるところが大きいのだろう。


 登場人物を映し出す色が、第1話から徐々に暗くなっている事実に気付いた今、テーマである「不妊治療」がどれだけ心身ともに消耗するものかを思い知らされる。フィクションとはいえ、間接的に不妊治療の方法とそのつらさ、その治療に励み続ける女性の姿を知ることができるのは貴重だと思う。


 なお予告編を見る限り、第8話は明るい話題の多い回になりそうだ。登場人物の表情が心情描写としても物理的にも明るく見えている。実際、予告編では「妊娠していますよ」と奈々が医師から告げられている。その表情は明るい。この光の演出が、それぞれの家族・カップルの明るい未来を演出しているのであれば、いくらフィクションであっても嬉しい。次回からは、明るい光で映し出される彼らの姿が見られることを願いたい。(片山香帆)