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初のスーパー耐久合同テストを終えたピレリ。車種によって感触はさまざま?

2018年03月07日 17:21  AUTOSPORT web

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富士スピードウェイに持ち込まれたピレリのトランスポーター。まずは無事にスーパー耐久の合同テストを終えた。
3月3日、富士スピードウェイで行われたスーパー耐久の公式テスト。このテストは、2018年からワンメイクタイヤとなったピレリが初めて公の場で使用される機会となった。このテストでピレリを履いたドライバーたちに、その感想を聞いた。

 スーパー耐久では、2018年から17年までのヨコハマに代わって、ピレリがワンメイクタイヤを供給する。これまで日本国内でピレリがこういったワンメイクというかたちでタイヤ供給を行うのは初めてのことだ。

 ピレリはヨーロッパで隆盛を誇っているブランパンGTシリーズなど、多くのGTカー、ツーリングカーのレースにワンメイクタイヤ供給を行っているが、近年はアジアのマーケットを重要視。ブランパンGTシリーズ・アジア等をはじめさまざまなシリーズに供給してきたが、今季からはいよいよ日本でもその活動がスタートする。

 今回のスーパー耐久公式テストに向け、これまで他メーカーで活躍していたスタッフを中心に日本でのサポートチームが作られたピレリは、トレーラーを4台富士に持ち込み、参加したマシンたちにタイヤを供給した。スーパー耐久はGT3規定のST-Xから、コンパクトカーのST-5までさまざまな車種が参加するレースだが、VLNニュルブルクリンク耐久シリーズや、アメリカのピレリ・ワールドチャレンジでもツーリングカーへの供給を行っており、サイズは全クラス問題がないという。

 また、今季はスーパー耐久と協議のうえ、ピレリがもつコンパウンドのうち、もっとも耐久性があるものを採用。コース問わず、年間を通じて同じものが使用されるという。ピレリはワンメイク供給で世界中で実績をもつが、この仕組みをうまく日本に取り入れていくというかたちだ。

■タテと横のグリップに違い
 そんなピレリのワンメイクタイヤだが、ドライブする側のフィーリングはどんなものなのだろうか。何人かのドライバーに聞いたが、昨年までのヨコハマとの特性の違いはありつつも、悪い評価は聞かれなかった。

 2017年にブランパンGTシリーズ・アジアにスポット参戦したD'station Racingのポルシェ911 GT3 Rをドライブする荒聖治は、「そのときに履いたタイヤと比べると、しっかりしていますね」と好印象をもった様子だ。

 また、同じST-1に参戦するENDLESS SPORTのニッサンGT-RニスモGT3の山内英輝は、「タイヤの特徴としては、やはり硬い方向です。タテと横のグリップに違いがあって、はっきりしています。でもそこをうまく使わないとタイムが出ない。難しいところですね」という。

「ピレリのレインタイヤは前にテストしたときに、グリップがあっていい感触がありました。スリックについてはタイムが落ちていますが、クルマのセットアップも変わってくると思います。ピレリには特徴があって、そこに合わせ込むのに時間がかかっています」

 一方、ST-2ではTOWAINTEC RacingのスバルWRX STIをドライブした井口卓人に話を聞いた。井口は昨年WRX STIをドライブしていないので比較することはできないが、チームによれば昨年同等のタイムは出ているという。「乗って違和感はないです」とのこと。

■車種によって感触の違いも
 タイヤの種類や銘柄の変更等によって勢力図が変わることは、他のレースでも良くあることだが、各クラスとも車種の特徴や走らせ方で、ピレリが合う、合わないはやはりあるようだ。埼玉トヨペットGreen Braveのトヨタ・マークXを駆る服部尚貴は「事前にST-3クラスでは『ヨコハマと比べるとグリップが若干足りない』と聞いていたんですけど」という。

「でも、ウチが履いたら去年よりタイムが上がっていた。昨年まではまわりに対して、我々は一発のタイムが出なかったんですが、かなり近いところに来たんじゃないかと。ピレリ様々です(笑)。マークXのディメンションに対して、タイヤが近づいてくれた感じかな」

「僕たちのクラスではタイヤのハイトが上がってしまうので、そのままいくと車高が上がってしまう。その分、リヤの倒れ込みが気になるところはありますが、ヨコハマでその症状がまったく無かったかというと、そういうわけでもない。アクセルを開けるところをアジャストすれば、うちにとっては『全然いいタイヤだね』となっている」

 一方、同じST-3に参戦するル・ボーセモータースポーツのレクサスRC350をドライブする嵯峨宏紀は、「何セットか履いていますが、そこでの個体差がないので、ワンメイクタイヤとして悪いタイヤではないと思います」と評する。

 ただ「ヨコハマと比較すると、僕たちはグリップが落ちるんです。もう少し夏場にならないと、ちゃんと評価できないかもしれませんが、コンパウンドがちょっと硬めな気がしますね」とRC350としては現状まだそこまでうまく使いこなせていない状況を明かした。車種によって感じ方が違うのは興味深いところだろう。

 全体的な印象としては、タテ方向のグリップ、そして硬さにもあるのか、耐久性に優れているというのがピレリのイメージと言って良いだろう。もちろん、来季さらに軟らかめにすることもピレリとしては可能なはずだ。

 このピレリを履きこなすことは、今後ブランパンGTシリーズ・アジア等海外のレースでもメリットになる。そして何より、今回トラブル等なく、無事に合同テストを終えたのはピレリ、そしてスーパー耐久にとって大きな一歩となったはずだ。