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中島美嘉、『ダリフラ』主題歌で見せた“二面性” 13年ぶりのHYDEとのタッグから紐解く

2018年03月07日 15:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 アニメ好きの知人に「今期のアニメ、どう?」と聞くと、ほぼ100パーセント「『ダリフラ』がヤバい!」と返ってくるほどに、筆者の周りでも人気を博している『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(TOKYO MXほか)。アニメファンであれば迷わず必見と言っても過言ではない豪華スタッフ陣が手がける本作だが、オープニングテーマを飾る中島美嘉とHYDEの壮麗すぎるタッグに、さらに度肝を抜かれた人も多いのではないだろうか。


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 物語の舞台となるのは、遠い未来、荒廃した大地に建設された移動要塞都市・プランテーション。その中に作られた「トリカゴ」と呼ばれるパイロット居住施設では、子どもたちが「フランクス」というロボットに乗って戦うことを使命としていた。


 オリジナルアニメの本作で監督を務めるのは、『アイドルマスター』の監督や『天元突破グレンラガン』のキャラクターデザインを担当した錦織敦史。キャラクターデザインには、『君の名は。』や『心が叫びたがってるんだ』で知られる田中将賀が参加。そして、制作は『キルラキル』『リトルウィッチアカデミア』などのTRIGGER、アイマスシリーズや『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などのA-1 Picturesがコンビを組むという、まさに夢のような企画となっている。


 そんな中、主題歌「KISS OF DEATH(Produced by HYDE)」では、中島美嘉とHYDEが、映画『NANA』の「GLAMOROUS SKY」から実に13年ぶりとなるタッグを組んだ。曲名からもわかる通り、この曲では、HYDEが作詞作曲のほか、プロデュースまで手掛ける。


 Aメロから妖艶な歌い出しが印象的なこのテーマ。一人称が〈ボク〉となっている歌詞や、CDビジュアルやMVで中島美嘉が“ツノ”をつけていることなどから、本作のヒロイン・ゼロツー視点で歌われている楽曲だということがうかがえる。そして、錦織監督も「中島美嘉さんの持つミステリアスな雰囲気がヒロインのゼロツーに少し被る気がして、今回主題歌をお願いさせていただきました」と語るように、中島美嘉の佇まいには、ゼロツーを想起させるような部分が大きい。


 この曲のアートワークは、「楽曲とアニメ両方の世界観を表現したい」という中島本人の思いから実現したそうで、「強さの中にある儚さ、孤独」が描き出されている。これは、中島が映画『NANA』で、原作漫画から飛び出したかのような大崎ナナを演じていたこととも共通しているだろう。『NANA』においても、着る人を相当選ぶであろう、ヴィヴィアンのラブジャケットをさらりと着こなしていた中島は、本作でも、飄々としつつも強烈な個性を放つ少女・ゼロツーの三次元的存在として君臨している。


 また、ナナとゼロツーにも少なからず類似点が感じられる。おそらく両者とも、傍から見れば「自立した強い女性」に映るのだろうが、それぞれ“弱さ”も抱えているのだ。人気バンドのボーカリストとして、ファッションや趣味趣向もかなり“強め”だが、非常に儚く繊細な心を持ち合わせているナナ。ゼロツーも、エリートパイロットとして周囲から疎まれるほどの才覚を放つが、その特殊な適性から「パートナー殺し」となってしまい、人知れず孤独に苛まれている。


 本作では、〈ボクを怖がらないで〉という弱気な歌詞を力強く歌い上げている中島。勝気な女性が持つ二面性を、今回も非常にうまく体現している。そして、ビジュアル的な意味でも、彼女が持つダークで妖艶な雰囲気が、アニメの世界観にガッチリと重なっている。ダリフラファン、特にゼロツーファンで、「KISS OF DEATH」MV未視聴の方は、“実写版ゼロツー”ともいえる彼女の姿をぜひ目の当たりにしてほしい。


■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。