映画『羊と鋼の森』のエンディングテーマ曲が発表。あわせて予告編が公開された。
エンディングテーマに起用されたのは、作曲と編曲を久石譲、ピアノ演奏を辻井伸行が担当した“The Dream of the Lambs”。ピアノの調律師を主人公に据えた物語であることから、映画の世界観やピアノの魅力を活かせるテーマ曲を想定した制作陣が久石と辻井にオファーをし、もともと原作を読んでいたという2人が快諾したことから今回のコラボレーションが実現したという。
楽曲は、昨年夏にコンサートホールにオーケストラを集めて久石譲が自らタクトを振って録音。この日が初対面だった2人は事前の打ち合わせを経て収録に臨み、演奏後も「本当に楽しかった」と笑顔を見せていたという。
久石譲は同曲について「調律師は求める音を表現してくれる、本当に大事な存在で、音は出さないけど立派な音楽家だと思います。そんな調律師を描いた原作を、オファーをいただく前に読ませていただきました。成長譚の美しくてとても良い話。だからこそ、綺麗なだけで終わらないように、映画の奥行を出せるように、シビアなミニマル的な部分とメロディアスな部分の交差する曲を作るように意識しました」とコメント。また辻井については「古典的なスタイルをとりつつ、現代的な曲を作ったのですが、見事に弾いてくれました」と賛辞を贈っている。
一方の辻井伸行は「久石さんの大ファンで、素晴らしい曲をずっと聴いていたので、本当に嬉しかったです。久石さんに楽譜をいただいた時に、どのような気持ちで作曲されたのか想像し、また映画のイメージを自分の中で膨らませて、できる限りのことをしようと思って練習し、本番に挑みました。お会いするまでは緊張しましたが、本当にお優しい方で、合わせやすく、またいろいろと勉強させていただきました」と久石とのコラボレーションを振り返っている。
あわせて公開された予告編には同曲を使用。山崎賢人演じる主人公・外村直樹がピアノの調律をする様子や、三浦友和演じる調律師・板鳥宗一郎、上白石萌音、上白石萌歌演じるピアニスト姉妹の姿、外村が鈴木亮平演じる先輩調律師に「なんのために今まで僕はピアノと向き合ってきたんですか」と涙ながらに掴みかかるシーンなどが確認できる。
6月8日から全国東宝系で公開される同作は、『全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 2016年本屋大賞』で1位に輝いた宮下奈都の同名小説が原作。北海道の田舎で育った主人公・外村直樹が、高校でピアノの調律師・板鳥宗一郎と出会ったことをきっかけにピアノの調律に魅せられ、調律師を目指して成長していく様を描く。
■久石譲のコメント
ピアニストはいろいろなピアノに出会わなければならない。ピアノによってタッチがそれぞれすごく違います。調律師は求める音を表現してくれる、本当に大事な存在で、音は出さないけど立派な音楽家だと思います。
そんな調律師を描いた原作を、オファーをいただく前に読ませていただきました。成長譚の美しくてとても良い話。だからこそ、綺麗なだけで終わらないように、映画の奥行を出せるように、シビアなミニマル的な部分とメロディアスな部分の交差する曲を作るように意識しました。
その曲を辻井くんと一緒に作ることができて嬉しく思います。古典的なスタイルをとりつつ、現代的な曲を作ったのですが、見事に弾いてくれました。辻井くんは本当に素晴らしいピアニストで、特にリズム感が凄いです。無駄なものが無いきちんとしたリズム。これを活かしたいと思って指揮をしました。演奏をしていて、とても楽しかったです。辻井くんとはまた是非一緒に演奏させていただきたいですね。
■辻井伸行のコメント
オファーをいただく前に原作を点字の本にして読んでいましたが、ピアノをやっている人なら皆さん興味のある話だと思います。曲にもたくさんのイメージがあったり、ピアノには壮大でカッコいいところがあったり、いろいろな面白いことが分かる素晴らしい物語です。そんな映画の演奏を、久石さんとご一緒させていただけたのは本当に光栄でした。久石さんの大ファンで、素晴らしい曲をずっと聴いていたので、本当に嬉しかったです。
久石さんに楽譜をいただいた時に、どのような気持ちで作曲されたのか想像し、また映画のイメージを自分の中で膨らませて、できる限りのことをしようと思って練習し、本番に挑みました。お会いするまでは緊張しましたが、本当にお優しい方で、合わせやすく、またいろいろと勉強させていただきました。この曲は感動的で、美しく、弾いていて本当に楽しかったですし、収録があっという間でした。また是非ご一緒させていただきたいです。
ピアノの調律師さんは僕にとってなくてはならない存在です。ピアニストは演奏するときは一人ですが、調律師さん、観客の皆さんと一緒にコンサートを作り上げていると思っています。
国内外の様々な場所で調律師さんと出会うのですが、いろいろなタイプの調律師さん、そして会場のピアノと出会えるのは楽しいですね。
■映画プロデューサーのコメント
ここまで音楽にフォーカスを当てることができる作品はない、だからこそ音楽界の巨星に認めてほしいという思いがありました。そんななか、久石譲さん、辻井伸行さんといえば、誰もが知る、日本が誇る才能。この二人が組んだら、どんな化学反応が起きるのだろうという期待もありオファーしたところ、原作がお好きという運命もあり初タッグが成立しました。
調律師の主人公の成長を見守るような久石さんの楽曲と、その調律師を讃えるような辻井さんのピアノの音色は、「羊と鋼の森」に太鼓判を押していることを物語っています。