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三浦大知、Nulbarich、H ZETTRIO、yahyel、PAELLAS…国内シーンの質の高さ感じられる新作

2018年03月06日 10:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 オルタナR&B、EDM、インディーロック、エレクトロハウス、ジャズの最先端をダイレクトに反映させながら、アーティスト自身の血が通った歌、サウンドと結びつけ、世界のどこにもないポップミュージックへと昇華。そんな素晴らしい作品が続々とリリースされている。三浦大知、Nulbarich、H ZETTRIO、yahyel、PAELLASの新作を通して、現在の日本の音楽シーンのクオリティの高さをたっぷりと感じ取ってほしい。


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■三浦大知『BEST』
 2017年1月にリリースされたシングル『EXCITE』がキャリア初のオリコン週間シングルランキング1位を獲得。さらに6thアルバム『HIT』をヒットさせ、大みそかの『第68回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場するなど、デビュー20年目を迎え、名実ともに大ブレイクを果たした三浦大知。海外のR&B、ヒップホップ、EDMなどともリンクした楽曲、ダイナミズムと表現力を兼ね備えたボーカル、質の高いコレオグラフによるダンスパフォーマンスはいまや世界レベルに達したと言っても過言ではない。そして、これまでの全シングルを収めた初のベスト盤『BEST』には、2005年から2017年に至るソロアーティストとしての進化の過程がリアルに刻まれている。その指針となるのは“トレンドの先を目指す”という意志と“どんな楽曲であっても、三浦大知は三浦大知”という姿勢。単に流行を取り入れるのではなく、独創的なスタイルを確立していることこそが、彼のもっとも大きな魅力なのだと思う。


■Nulbarich『H.O.T』
 全国FM局のパワープレイをきっかけに知名度を高めた(≒純粋に楽曲の力で音楽ファンの支持を得た)Nulbarich。いまだロングセールスを記録中の1stアルバム『Guess Who?』から約1年半ぶりに届けられた2ndフルアルバム『H.O.T』は“90年代のヒップホップ、アシッドジャズなどのルーツを現代のポップミュージックに結びつける”このバンドのコンセプトがさらに明確に示された作品となった。軽快なギターカッティング、しなやかなファンクネスを感じさせるリズムを軸にしたリードトラック「ain’t on the map yet」をはじめ、快楽的なグルーヴを備えたポップソングがずらり。希望を見出しづらい現代において、「気分が良くて何が悪い?」と言わんばかりの楽曲にはやはり、抗いがたい魅力がある。


■H ZETTRIO『Mysterious Superheroes~DYNAMIC FLIGHT盤』
 ドラムンベース、ヒップホップ、ファンクなどの要素を取り入れた多彩なリズムアンサンブルのうえで、重力からも解放されたかのような自由なピアノが舞い踊る。H ZETTRIOの新作『Mysterious Superheroes』は、日本におけるジャズの解釈を広げ続けるこのバンドのコンセプトがさらに突き詰められた作品となった。3人のプレイヤーとしての個性がぶつかり合う表題曲「Mysterious Superheroes」、リバイバルの兆しを見せている80’sフュージョンを進化させた「Fusion in Blue」、まるでJ-POPのバラードのような叙情的メロディを軸にした「どこか遠く」など楽曲のテイストもさらに拡大し、誰もが楽しめるポップミュージックとしての機能も備えている。


■yahyel『Human』
 ダンスミュージックとロックを軸にした海外の音楽シーンとつながりながら、日本の音楽に新鮮な刺激を与えてきたyahyelの2ndアルバムは、『Human』という肉体的なタイトルが示すように、生々しい人間性を反映させた作品に仕上がった。真ん中にあるのは、ボーカリスト・池貝峻の感情と生き様。彼自身のリアルな思いを濃密に映し出す楽曲を中心に据え、それを際立たせるためにアレンジ、サウンドメイクを組み立てる。制作のベクトルが明確になったことで彼らは、自らの音楽的アイデンティティをこれまで以上に強く示すことに成功している。声、歌詞、メロディ、リズム、各楽器のフレーズをナチュラルに結合させた有機的なプロダクションも素晴らしい。


■PAELLAS『Yours』
 海外のオルタナティブR&B、エレクトロハウスなどと同期した音楽性によって、Suchmos以降の新世代シーンで大きな注目を集めているPAELLASの新作『Yours』。そのもっとも大きな特徴は、生々しさを増したバンドサウンドだろう。リードトラック「Echo」をはじめ、メンバーのセッションをもとにした楽曲が増えたこと。スタジオで実際に演奏しながらフレーズを組み立て、それをコンピュータ上で再構築することで生まれたグルーヴは、まさにPAELLASの新機軸と言っていいだろう。グレッグ・カルビ(MGMT、ボン・イヴェールなどの作品を手がけるマスタリングエンジニア)のマスタリングによる良質なサウンドメイク、日本語の歌詞を増やした歌を含め、オーバーグラウンドへ向かう意志が強く伝わる作品だ。(森朋之)