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「ジャニーズJr.チャンネル」は“海外展開”と“新規開拓”がキーワード? YouTube進出の狙いを読む

2018年03月06日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ジャニーズ事務所が動画投稿サイト・YouTubeに公式チャンネル「ジャニーズJr.チャンネル」を開設。チャンネル内にて公開された予告動画にて、3月21日より動画配信をスタートすることを明らかにした。


(関連:社会学者 太田省一が語る、“テレビとジャニーズ”の過去と未来 書籍刊行記念インタビュー


 ネットメディアと長らく距離を置いてきた同事務所では、近年その姿勢に少しずつ変化が見られるようになっていた。ここまでの例を挙げると、アーティスト写真やジャケット写真の解禁からはじまり、映像ストリーミングサービス・Netflixのオリジナルドラマへの出演、ネット記事における記者会見時の写真解禁などである。なお、同事務所がインターネット上に無料配信される映像コンテンツを制作するのは今回が初だ。チャンネルの説明文によると、「音楽コンテンツをはじめ、普段見せたことのないトークや、バラエティ、チャレンジングな企画まで幅広く展開」し、「HiHi Jets、東京B少年、SixTONES、Snow Man、Travis Japan が各曜日を担当し、視聴数を競う形」で映像が配信されていくとのこと。


 ジャニーズJr.内の5ユニットを対象にスタートする公式YouTubeチャンネルの開設について、『中居正広という生き方』や『テレビとジャニーズ』の著者である社会学者の太田省一氏は以下のような見解を示す。


「まずは“画期的な一歩”というのが率直な感想です。ジャニーズJr.は今、事務所にとってとてもパワーがあり、有望な人材が揃っている。彼らの表現、エンターテインメントをしっかり見せることができるメディアを開拓することが事務所としても必要だったのでは。テレビでは深夜帯に『真夜中のプリンス』(テレビ朝日系)や『ジャニーズJr.dex』(フジテレビ)という番組が放送されていますが、事務所主導でコンテンツを作ることができるのもネットのメリットでもあります。現在公開されている予告動画では、昔のテレビのモチーフが使われていました。そこから想像するに、今回の動画にはテレビ番組を補完するような意図があるのかなとも思います」


 予告映像の“世界中のみんなに贈る夢のエンターテインメントショー”というワードや、「世界中の視聴者に向けて公開されます」という説明文、外国語が並ぶコメント欄からもわかるように、テレビ番組を補完するだけのものではなく、その先に海外展開を視野に入れた事務所の方針があることもうかがえる。


「ジャニー喜多川社長の頭の中に今あるのは、2020年にむけてジャニーズが培ってきたエンターテインメントをいかに世界へ発信していくかということでしょう。時間の感覚としても平昌五輪が終わり、東京五輪・パラリンピックが近づいてきた感のある2018年のこのタイミングで、主体的にネット展開の一歩を踏み出した。とても大きな意味のあることだと思います。近年のアイドル文化では、ネット動画を通してファンを増やすということが重要とされている。ジャニーズJr.の既存ファンの方々が楽しめるということはもちろん、新しいファンを開拓するという点でも期待できるはずです」


 同氏が指摘するように、YouTubeにおける動画配信はファン以外にも彼らの魅力を届けるきっかけとなりうるものだ。チャンネルの説明文の中にも「ファンは勿論、普段、動画を楽しんで頂いている方にも楽しんでいただけるような映像をほぼ毎日配信していきます」といった一節が添えられている。


「特に若い世代を念頭においた新しいファン層の開拓は考えられますよね。今までのジャニーズとは一味違うイメージのコンテンツ動画を作るのであれば、ジャニーズに興味はなかったけど動画を観ているうちにはまってしまうという人たちも出てくるかもしれません。小・中学生からの支持も厚いユーチューバーたちはとにかく毎日のように新しい動画をアップしていくのが基本ですが、今回のチャンネルもそれに近いかたちで運用されていくよう。最近ではテレビとネットの壁はなくなり、トップユーチューバーのHIKAKINなどをテレビで見かけることも多くなりました。逆にYouTubeで人気が出たJr.メンバーがテレビに進出するという流れが生まれる可能性もありますね。また、5ユニットで動画の視聴数を競い合うという企画は視聴者の熱気を生みそうです。そういった複数グループで盛り上げていくことができるのはジャニーズならではのアドバンテージでもあり、有利な点だと思いますね」


 最後に、ジャニーズのYouTube進出について今後期待したいことを太田氏に尋ねると、デビュー組への展開と、テレビ・舞台との連携について言及した。


「ジャニーズのライブ・コンサートや舞台の生中継ができるというところまで来ると、2020年にジャニーズのエンタメを世界に発信するという目標を果たせることになります。そのことを踏まえると既存のグループやメンバーも徐々に動画に登場する流れになってほしいですが、たとえば最初はジャニーズJr.と舞台で共演する『Endless SHOCK』の堂本光一さんや、『滝沢歌舞伎』の滝沢秀明さんが舞台裏の映像に出てくるなどがあるかもしれません。しかしまずさしあたっては、ジャニーズJr.が動画という新しい自前の表現手段を使って、テレビだけでは収まりきらない、またすぐにできないことをネットで発信していくという流れになっていくのかなと思います」


 「ジャニーズJr.チャンネル」の結果次第では、事務所のネットメディアとの向き合い方にさらなる進展が訪れることが十分に考えられる。21日からの配信とその反響を注意深く見守っていきたい。(編集部)