都内で行われたホンダの取材会で、ホンダワークスチーム復活の理由を「魅力あるレースをやるため」だと語ったホンダモータースポーツ部の山本雅史部長。全日本ロードレース選手権JSB1000と鈴鹿8時間耐久ロードレースにチームHRCとして挑むその意味とは。
2017年12月、ホンダは2018年に10年ぶりとなるワークスチームを復活させ、『チームHRC』として全日本の最高峰クラスであるJSB1000、鈴鹿8耐に参戦することを発表した。山本部長によると、ホンダワークス復活の構想は2017年から持っていたという。
「1年前に『ワークス活動をやらないんですか?』という質問をされました。それに対して僕が『検討してます』と答えましたが、そのとおりで検討していました」
「二輪のモータースポーツ活動を見ていていちばん思うのが、モーターサイクルを日本でもっと活性化できればいいということでした。魅力あるレースをするためにも、まずHRCを復活させてホンダ自らが携わっていく。そうすることで、今まで見えていなかったものがより見えてくるんじゃないかと」
「(全日本と鈴鹿8耐でホンダがワークス参戦していなかった)10年のブランクの間で、ハルク・プロさんやモリワキさんも含め大きく協力してくれました。それを超えたなかで、HRCが先頭を切って自分たちが自ら手をくだして全日本と鈴鹿8耐を戦いたいということで、HRCワークスを復活させました」
チームHRCはエースライダーに、2017年までMuSASHi RT HARC-PRO.Hondaから参戦していた高橋巧を起用。チームを指揮するのは元MotoGPライダーあり、鈴鹿8耐で最多記録となる5度の優勝経験を持つ宇川徹監督だ。ふたりの起用理由について山本部長は次のように語る。
「巧君は、非常に厳しい環境のなかでJSB1000を勝ち抜いたという実力を持っている。今のホンダのライダーだと巧君しかいないなと思い選びました」
「宇川君については、四輪ほど二輪に詳しくない私でも知っているくらい鈴鹿8耐マイスターで、5回の優勝経験を持っている。宇川君自らがライダーの経験を持っていてライダーに非常に近いし、コミュニケーションを含めて期待しています」
■ホンダ3強チームが使用するモノに規制は課していない
鈴鹿8耐に関しては、MuSASHi RT HARC-PRO.Honda、MORIWAKI MOTUL RACING、そして二輪の世界耐久選手権(EWC)にフル参戦するTSRホンダのホンダ3強をベースにチームHRCを組み立てていくようだ。
「ハルク・プロさんとモリワキさんに関しては(鈴鹿8耐の)経験も豊富だし、昨年のバイクをベースにHRCとともにアップデートしてもらい、きっちりベースをかためていきます。HRCが復活したからといってレースの世界は(すぐ勝てるほど)甘くありません。ホンダは、ハルク・プロさん、モリワキさん、EWCにシリーズで出ているTSRさんに協力しています。この3強をベースにHRCがうまくリンクをしていきながら、巧君と現在選出しているライダーふたりをうまく噛み合わせていければと思っています」
ワークス復活により、マシン開発はチームHRCが中心となって行っていくことになるが、他のホンダ系チームへ供給するマシンはどうなるのか。「すべてのチームに同じタイミングで同じものを供給することはなかなかできない」と山本部長。
「常に日進月歩で新しいパーツを組み込んでいくと当然トラブルが出ます。ライダーのインプレッションをもらって開発をすぐ回していくという形で、昨年までハルク・プロさんを中心に進めてきていて、そこである程度決まった部品をモリワキさんやTSRさんに配っていました。2018年はHRCが中心となって開発を進め、出来上がった部品をハルク・プロさん、モリワキさん、TSRさんに渡すという形です」
また、山本部長はホンダとしては使用するパーツや装備に大きな規制は課していないと述べ、最後に鈴鹿8耐に向けた思いを語った。
「昨年から若干システムが変わりました。モリワキさんはピレリタイヤ、それ以外はブリヂストンタイヤです。ブレーキなどいくつかの装備はライダーの好みなので、ホンダとして規制はしていません。チームHRCも宇川を中心にチャレンジングにやっていきますので、ハルク・プロ、モリワキ、TSRホンダのみなさんも個々にオリジナリティをもってチャレンジングにやってもらうというのが現状です」
「私の場合、当然(優勝してもらいたいのは)HRCと言わなきゃいけないのかもしれないけれど、ホンダのどこが勝ってもいいと思っています。(鈴鹿8耐では)できれば1-2-3-4を獲りたいですね」