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山崎賢人が、見つけたものと失ったもの 『トドメの接吻』で繰り返した門脇麦への別れのキス

2018年03月05日 14:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「僕には社長のイスより大切なものがある」


 旺太郎(山崎賢人)を潰すべく、宰子(門脇麦)を拉致した尊氏(新田真剣佑)だが、旺太郎の方が1枚上手であった。尊氏はおろか、視聴者である私たちも知らぬ間に、旺太郎と宰子は“タイムリープ”し、同じ時を繰り返していたのだ。その背後に、逮捕されていたはずの和馬(志尊淳)が再登場し、じりじり忍び寄る。


参考:『トドメの接吻』は、ダーク版『花より男子』だった!?


 3月4日に放送された『トドメの接吻』(日本テレビ系)第9話は、「教会」という愛を誓い合う場で、それぞれの想いが交錯する。


 前回に引き続き、旺太郎と尊氏の強烈なにらみ合いでの幕開け。やはり前半は旺太郎と尊氏の攻防が見ものであった。尊氏の叔父・新井(小市慢太郎)は「役員に根回ししておけば、美尊と旺太郎が結婚しても、社長のイスは死守できる」と助言するが、尊氏は「あなたは何も分かってない」と返し、そして冒頭の言葉を言い放つ。


 一時は、旺太郎と同じく自身の欲望のため、成り上がるために暗躍していたかに見えた尊氏だが、彼の美尊(新木優子)へのひたむきな想いには胸を打たれる。旺太郎に敗れた彼の、去り際の叫びは悲痛なものであった。公開中の『不能犯』で演じる、不器用で一生懸命な新人刑事・百々瀬というキャラクターとは真逆のパフォーマンスを披露している新田だが、このようなニヒルな役どころがじつによくハマる。微笑をたたえた穏やかさから激しい怒りの感情への切り替えの上手さ、そして弱冠21歳にしてこの貫禄。本作でさらなる飛躍を遂げたと言えるのではないだろうか。


 そんな彼の想いに少なからず共鳴する、宰子の姿がまた切ない。「想いが届かないと分かっていながら、この想いだけは捨てられない」という尊氏の美尊を想う気持ちを、唯一理解できるとすれば、それは宰子なのだろう。「想い」を言葉にせず、仕草や微細な表情の変化で見せる門脇の好演は、行動派でストレートな面々が揃った本作に、深みを与えている。ラストでの宰子の唐突な死に、旺太郎は慟哭する姿を見せた。愛を否定し、「愛なんて欲しがるから不幸になる」が口癖の彼だが、この瞬間の彼の中に渦巻いている感情は、「愛」以外になにかあるというのだろうか。


 いよいよ次週は最終回。“タイムリープ”を使えないはずのいま、宰子の死に、身近な人の死に、旺太郎はどう応えるのだろうか。そして、“キスしてもタイムリープしない”春海(菅田将暉)とは何者なのだろうか。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


(折田侑駿)