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松田翔太&鈴木亮平の演技が新たな“幕末史”を作る? 『西郷どん』江戸編突入で新展開

2018年03月05日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 西郷吉之助(鈴木亮平)が薩摩を飛び出し、ペリー来航に揺れる江戸に到着。NHK大河ドラマ『西郷どん』は、吉之助が日本の表舞台へと駆け上がっていく新章に突入した。第9回「江戸のヒー様」では、吉之助が後に江戸幕府最後の将軍となる一橋(徳川)慶喜(松田翔太)と出会い、“異文化”に触れる中で成長を遂げていく最初の一歩が描かれた。


参考:鈴木亮平、西郷吉之助役になぜハマる? 『西郷どん』で見せるストイックさと包容力


 江戸に到着した吉之助は先んじて江戸勤めをしていた有村俊斎(高橋光臣)と大山格之助(北村有起哉)と再会を果たす。薩摩の芋侍であった2人も江戸の嗜みを覚え、吉之助と比べるとあか抜けた雰囲気に。再会を喜ぶ3人が無邪気にはしゃぐ様はまるで男子校の様で、観ているこちら側もつられて笑顔になってしまう。“男同士のじゃれ合い”を魅力的に描写してきた『西郷どん』だが、それを成立させているのも吉之助を演じる鈴木が表現する“まっすぐさ”がひとつの理由であろう。


 吉之助は有村と大山に連れて行かれた旅籠屋では、女子衆が寄り添い給仕をしてくれることを知り、「こんなことのために江戸に来たわけではない」と店から出ていこうとする。そんな吉之助を引き止めたのが、かつて吉之助が身売りから救うことのできなかったふき(高梨臨)。ふきは薩摩から下関、京都へと転々としながら江戸へ流れ着いていたのだった。そんなふきをひいきにしているのが、ヒー様こと一橋慶喜。この後の幕末史の中心となる吉之助と慶喜が、こんな形で出会う史実はない。まさに大河ドラマとしての一幕が詰まった出会いのシーンだったが、異彩を放ったのが松田翔太だ。


 松田は2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』で第14代将軍・徳川家茂を演じていたが、家茂は気品と聡明さを持ち合わせた人物、いわば将軍らしい将軍であった。対して、今回の慶喜は、旅籠屋に出入りし、女たちに似顔絵を贈り、騒動が起きれば一目散にトンズラするという破天荒ぶり。ある意味、家茂とは真逆のキャラクター像を演じることになったわけだ。登場した瞬間、SNS上では「ヒー様、ぴったり過ぎ!」「遊び人なのに漂う気品」など、松田の演技を賞賛する声が相次いでいた。終盤の登場シーンでは遊び人姿とは打って変わっての“一橋慶喜”としての威厳ある姿も見せ、出演シーンはわずかながら今後への期待が大きく膨らむ演技だった。2011年の大河ドラマ『龍馬伝』では、倒幕派の薩長などを憎み、まるで悪役のように描かれるなど、作品によってそのキャラクター像が変化する慶喜。松田によって、そのどれにも勝る誰も観たことのない、新たな慶喜像を作ることになりそうだ。


 吉之助は島津斉彬(渡辺謙)から書状を届ける名を受け、水戸藩・徳川斉昭(伊武雅刀)を訪ねる。吉之助が書状を渡すと斉昭は一読してそれをすぐさま破り捨てる。吉之助はその行為に激昂するが、斉昭はその手紙が別の者に読まれるの防ぐため、そして斉彬の思いを受け取ったという意味での行動だった。吉之助が己の理解の至らなさに恐縮しているところに現れたのが、斉昭の息子・慶喜だ。吉之助は慶喜との再会に「ヒー様!」とそのあだ名を呼び、懐から書いてもらった似顔絵まで取り出す。慶喜が、父・斉昭に旅籠屋に行ったことがばれないように素知らぬ顔をしているにも関わらず、執拗に食いつく吉之助の空気の読めなさには笑ってしまった。


 無垢でまっすぐすぎる鈴木演じる西郷吉之助と、これまでのイメージを覆す松田演じる一橋慶喜。幕末史の中心となる2人は、これからどんなどらまを繰り広げてくれるのだろうか。(石井達也)