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嵐、『Find The Answer』は“壮大な”リリース? 精巧に作り込まれたサウンドを徹底分析

2018年03月04日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2018年3月5日付週間CDシングルランキング(2018年02月19日~2018年02月25日)(ORICON NEWS)


 2018年3月5日付のオリコン週間CDシングルランキングでは嵐の『Find The Answer』が1位を獲得。売り上げ枚数は39万枚を超え、2位以下に圧倒的な差をつけての首位を記録した。嵐がシングル1位を記録するのはこれで50作目だという。


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「来るとこまで来たなあ……」


 これは初回盤DVDでカメラを向けられた相葉雅紀の発言(メイキング映像もスマートフォンで撮る時代になったのかという意味で)だが、この言葉がどこか含みのあるように使われているのが非常に印象的であった。2000年代中盤から着々と人気を獲得し、そして2010年代に入ってからは不動の地位を確立した感のある嵐が、日本を代表するグループとしての自覚と覚悟を持ち始めた――それがここ数年の彼らの状態であるとするならば、今回の表題曲「Find The Answer」は、そうした大きなものを背負って強く前へと進む5人の勇ましい姿が音像化されたような、まさに”来るとこまで来た”感のある広大なサウンドスケープを描いている。昨年のアルバム『「untitled」』の終盤の神々しいイメージの延長線上にありながらも、どこか未知なる領域へと踏み込む期待感や疾走感を感じさせるものだ。


 音楽面に限って言えば表題曲のアレンジャーであるmetropolitan digital cliqueは、嵐がこうしたイメージをまとうまでに至らせた影の立役者と言っても過言ではないだろう。2012年の『Popcorn』期より嵐の楽曲の編曲欄にクレジットされ始めたmetropolitan digital cliqueは、「Face Down」から始まり「ミラクル・サマー」(『誰も知らない』のカップリング曲)などを経て、2015年発表の「青空の下、キミのとなり」でついに嵐流ポップスの金字塔を打ち立てる。16分のカッティングギターと透明感のあるシンセが印象的な「青空~」の世界観は、今の嵐のイメージに繋がる非常に重要な一手だった。


 「We wanna funk, we need a funk」や「Mr. FUNK」といった過去のアルバム曲を聴けば彼(彼ら?彼女?不明である)の音楽的趣味がしっかりと確認できるが、metropolitan digital cliqueの最も注目すべき特徴はアコースティックなサウンドとエレクトロニクスの大胆な融合であり、彼が編曲する今回のようなシングル表題曲においてそれは顕著である。生音の性質を持ったストリングスやコーラスが高音域を撫でることで神秘的な雰囲気を漂わせると同時に、電子的な性質を持ったシンセやダンスビートが同量かそれ以上のバランスで加わることで力強いダンスナンバーへと変容させる。「Find The Answer」はその最新型だ。つまりこの曲から感じ取れる爽やかに強く輝くような魅力は、歌い手である嵐自身の状態はもちろんだが、精巧に作り込まれたサウンド面からも多分にもたらされている。metropolitan digital cliqueの作り出す音世界が、今の嵐にとって非常に重要な一面を担っていると言えるだろう。


 また、今回通常盤に収録されているカップリング曲のエッジの効いたサウンドの志向性は嵐にとってまさに未知なる領域だ。「Circle」が試みるベースミュージック的なアプローチは、近年J-Popのアーティストも少しずつ取り入れ始めているフューチャーベースで、世界的に流行しているジャンルのひとつである。「Bounce Beat」のリズムの跳ね具合に至ってはほとんど洋楽サウンドで、王道路線のイメージが強いジャニーズのグループがこうした音楽的なトレンドにチャレンジしている姿は実に頼もしい。


 確固たる人気と地位を獲得するグループには、それなりの作り込まれたクリエーションがある。今回のシングルはその証拠のような作品だが、今まで積み上げてきたものや次なる一手も同時に感じさせてくれたという意味において、深みと幅を利かせた”壮大な”リリースであった。(荻原 梓)