2018年03月03日 09:32 弁護士ドットコム
新たな物件探しをする際、迷っていると他の人に先を越されてしまう可能性があります。
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「ここに決めた!」とCMのように言い切れればいいのですが、現実は簡単ではありません。不動産業者で内見を終えた後、「どうしますか?人気物件ですよ」と言われると「他に取られたくない」と思って反射的に申し込みたくなるもの。ただ、別日に他の不動産業者で内見した物件も同じように魅力的で、すぐに判断がつかないということもあるでしょう。
この場合、同じくらい魅力的ないくつかの物件に申し込みをし、「キープ」しておいて、最終的に一つにしぼれるとしたらありがたい。でも、そのようなことをしては不動産業者や貸主、さらに物件探しをしている他の人にも迷惑です。実際、複数物件のキープをすることは法的にどのような問題を引き起こすのか、高橋辰三弁護士に聞きました。
ーー複数物件のキープは法律上、問題になりますか
「悪意をもって多数の賃貸物件の仮押さえをすることにより、入居募集物件の集客を困難にして不動産仲介業者や大家の業務の妨害をするような例外的なケースを除けば、物件を複数キープすることによって法律上の責任を負うことはないと思います。
ただ、不必要に多数の物件を仮押さえすることは、仲介業者やオーナーの迷惑になって業務妨害を疑われることもありますので控えるべきです」
ーーキープのため金銭を支払うこともあります
「物件をキープするにあたり、『申込金』等の金銭を支払った場合、優先的に本契約をできる権利を確保してもらえます。この申込金を支払っている以上、キープ自体に法律上の問題はありません。実務上は、金銭を支払わなくとも仲介業者を通じて大家に申込書を送るなどして、一定期間、優先順位を確保する例もあります。
申込金は、賃貸借契約における優先順位を確保するために、賃貸借契約成立前に不動産仲介業者に差し入れる預け金であるので、最終的に賃貸借契約が締結されなかった場合、仲介業者(貸主の場合も同様です)がお金を保持する法律上の根拠はなくなります」
ーー申込金は返ってくるということですか
「契約自由の原則により、契約成立前であれば契約締結をキャンセルすることは問題がありません。キャンセルされた場合には、仲介業者は申込金の返還に応じなければならず、手数料や手付であるとして返還を拒むことはできません。宅地建物取引業法上もそのように規定されています(同法47条の2第3項、同規則16条の12第2号)。
申込金の返還についてのトラブルの回避の方法としては、預り証を発行してもらう等して、あくまでもお金を預けているに過ぎないということを明らかにしておくべきでしょう」
ーーそれでは仲介手数料についてはいかがでしょうか
「仲介業者の仲介手数料は成功報酬であり、原則として当事者間で契約が成立した場合のみ発生しますので(一般媒介契約約款9条、商法550条参照)、契約が成立していない以上、仲介業者に報酬を支払う必要もありません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高橋 辰三(たかはし・たつぞう)弁護士
東京都世田谷区において、町医者のような法律事務所を目指し2010年にアジアンタム法律事務所を開所し、民事事件、家事事件、刑事事件などを取り扱っている。弁護士会や地域ボランティア団体などでの公益活動に携わりながら、気ままに仕事をしている。
事務所名:アジアンタム法律事務所
事務所URL:http://www.adiantum.jp/