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“面白さ至上主義”でギリギリまで攻める! TVアニメ「ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-」ゲーム×アニメプロデューサー対談

2018年03月02日 18:53  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

“面白さ至上主義”でギリギリまで攻める! TVアニメ「ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-」ゲーム×アニメプロデューサー対談
2018年2月4日、東京・恵比寿で行われたファン感謝祭で、突然のアニメ化が発表された『ラストピリオド ―終わりなき螺旋の物語―(以下、ラスピリ)』。

原作はHappy Elementsが2016年5月にリリースしたスマートフォン向けアプリゲーム。絶望によって生まれた怪物“スパイラル”を唯一倒すことができる存在“ピリオド”を目指す少年・ハルの成長と冒険を描いたハイ・ファンタジーRPGで、現在累計500万ダウンロードを記録している。

「輪廻(スパイラル)を断ち切る」というコンセプトのもと、ハルたちの過酷な運命を笑いありシリアスありのアプローチで描いていく本ゲーム。だが、アニメではゲームの展開はひとまず置いておいて、完全オリジナルストーリーによる新たな『ラスピリ』が見られるという。

そこで今回は、原作を手掛けるHappy Elementsの松田晃佑プロデューサーと、アニメのプロデュースを担当するEGG FIRMの大澤信博代表取締役に取材を敢行。アニメ化までの背景と制作の舞台裏を探ってみた。

インタビューでは、「ゲームとアニメの融合を果たす」という“攻め”の姿勢を保ちながら、ゲーム原作アニメというジャンルに捉われない自由な発想で面白さを追求したいという、意欲的な発言を色々と聞くことができた。

TVアニメ『ラストピリオド ―終わりなき螺旋の物語―』
2018年4月11日(水)からTOKYO MX、ABC朝日放送、BS11にて放送
http://lastperiod.jp
[取材・構成=小松良介]


■2015年から温めていたアニメ化プロジェクト

――突然のアニメ化発表でしたが、ファン感謝祭の会場を訪れていた方々の反応はいかがでしたか?

松田晃佑(以下、松田)
すごく喜んでくださいましたね。まぁ、初めは全然信じてもらえませんでしたが(笑)。発表した2ヵ月後にもう放送開始というのは、今どき珍しいと思うので、なかなか衝撃が大きかったんじゃないかと思います。

大澤信博(以下、大澤)
ネットもざわざわしてましたね。あの日はYahoo!急上昇ワードも1位になってたくらいですから。

>>ファン感謝祭の模様はこちら【「ラストピリオド」4月よりアニメ化! 感謝祭イベントに花江夏樹、M・A・Oら登壇】

――アニメ化の話題に入る前に確認ですが、そもそもお二人が関わられることになったのはいつ頃から?

大澤
『ラスピリ』のゲームのオープニングアニメーションをやるというお話のタイミングだから、2015年からですね。

松田
それこそアニメ化のお話になってしまうんですけど、『ラスピリ』はアニメ化することを目標に作られたタイトルなので、OPアニメもきちんとしたクオリティのものを作りたいという思いがあったんです。ゲーム企画段階から各アニメ会社さんに色々とお話はしていたのですが、その中で大澤さんが快く引き受けてくださって。

大澤
アニメ化したいというお話はその時点からお聞きしていたので、うち(EGG FIRM)とJ.C.STAFFという基本的な座組みはすでに出来上がっていた感じでしたね。


――アニメ制作側である大澤さんからご覧になって『ラスピリ』の魅力は?

大澤
やっぱり一番大きいのはキャラクターのビジュアルです。デザインを担当しているwhoopinさんのイラストって、アングルや色塗りによるところも大きいんだけど、特に露出が大きいわけでもないのに何故かエロいんですよ(笑)。

松田
うちでは「色気」と言っています(笑)。ちょっと特徴的なイラストで、太もものムチムチ感とかもいやらしさじゃなくて色気が感じられるみたいな。『ラスピリ』は彼が描いたキャラクターが魅力の大部分を支えてくれていて、弊社でも自信を持ってアピールしている部分です。

大澤
あと世界観がすごく特徴的ですよね。舞台も中世でもヨーロッパでもどこでもない特別な感じで、そこはアニメでもきちんとフィーチャーできるようにしたいと思いました。


――ゲームのキャラクターをアニメに落とし込む作業はスムーズにいきましたか?

大澤
たしかに一般的なハイ・ファンタジー系ゲームをアニメに落とし込むには、どうしてもキャラクターに描かれる線を省略する作業が発生することがあります。でも、今回のwhoopinさんのデザインはとても描きやすかったです。アニメにしやすい、つまり動かしやすいキャラクターデザインでした。

松田
まさにそこがアニメ化を見越したゲーム開発のポイントでした。whoopinはこれまでも弊社のタイトルで度々イラストを描いてきましたが、今回の『ラスピリ』では美麗的な描き方は控えめにして、アニメになっても嫌味を感じさせないカジュアルなイラストにしてほしいとお願いしまして。タッチを色々と調整しながら、キャッチーなかわいらしいビジュアルを作り上げてくれたんです。だから、僕らもビジュアルを全面に押し出しながらキャラクターを強く印象付けたゲーム性にしようと思っていて。

――具体的にいうと?

松田
例えばソシャゲのRPGでは、ユーザーが自己投影しやすいように主人公に名前を付けないケースが多いのですが、『ラスピリ』ではあえてハルという名前を付けてます。あと、ハルたち主人公チームをスリーマンセル(3人組)にして関係性を明確にしてみせたりと、あくまでキャラクター重視の設計を心掛けていきましたね。



■キャラクターと世界観を使って「攻める」

――本作はゲームとは異なる完全オリジナルストーリーになると聞きました。ゲームとアニメの相関性についてはどのように考えていますか?

大澤
スマホゲーム原作のアニメを手がけるのは、『スクールガールストライカーズ』以来となりますが、やっぱり誰に向けてアニメを作るか? というのは難しいんですよね。ただ、当たり前ですけどメディアミックスの大きな目的は、原作とメディア作品のそれぞれでファンを生み出していくことが大事ですから、原作のストーリーをなぞるだけの閉じたコンテンツにするのではなく、松田さんと相談しながらオリジナルストーリーをやろう、と構成の段階で話しました。

松田
そうですね。キャラクターや世界観はゲームと同じですが、本筋とはほとんど関係ないです(笑)。

大澤
よくハピエレさんが許してくれたなあっていう。普通だったら怒られますよ(笑)。

松田
僕も最初から原作をやるつもりなんて一切なかったんです。極端に言えば、既存のファンは自分の好きなキャラクターと世界観がアニメになるだけで、きっと喜んでくれると思っていて。ゲームではもう第9章まで物語が進んでいるのですが、ファンはアニメで同じストーリーをなぞられても驚きや感動がどうしても薄くなってしまいます。だったらみんなが親しんでくれるキャラクターや世界観と、アニメでしか表現できない演出を使って、毎話楽しみしてくれるようなシナリオを追求しようと思っていました。この点に関しては僕と大澤さん、J.C.STAFFのプロデューサーを務める松倉(友二)さんの3人で価値観が共通していたので迷いはなかったですね。


――オリジナルエピソードと言っても、その方向性は色々あると思いますが、今作ではどのような感じになりますか?

松田
ノリはゲームとも似ていたりします。元々ゲームについてもそこまでシビアなファンタジーではなく、メタ要素などもあったりと攻めている部分があるのですが、アニメではより強くそれが出ているかもしれません。

大澤
中二感もありますよね。

松田
そうですね。だから今回のアニメでも、台本にほとんどNGを出してないと思います。

大澤
むしろ松田さんに煽られますからね。「もっとやれ!」って(笑)。

――そうなんですか(笑)。

松田
どうせだったら面白くしましょうよ、と(笑)。ラスピリチームのコンセプトがすでにそうなんですけど、今作は「攻める」をコンセプトにしているんです。だから、みんなと打ち合わせしてる時も、「これ大丈夫?」「いいじゃんやろうよ!」みたいな感じで。

大澤
まあネタバレになっちゃうから具体的には言えないですけど、現場のみんなの倫理観がゆるすぎるのかなって思っちゃうくらい(笑)。ものすごいギリギリのラインを攻めていると思います。

――すごく内容が気になってきますね。ヒントだけでも。

大澤
えーっと、性的な表現や差別的な表現は一切してないですね。

松田
ここは嘘でも何か言っておいた方が良いんじゃないですか?

大澤
じゃあ『血界戦線』ぐらいの攻めっぷりということで……。


――(笑)。

大澤
まあそれは冗談ですけど(笑)、なかなか類似作品がないくらい珍しいアニメになったと思います。メタやパロディなど、色々といじり倒していますから。

松田
そうですね。特徴としては、このチームだけではなく、自分が今までお世話になった方々にも協力していただいて出来上がった作品です。色々な方に許可を取りながらというか、気を遣いながらというか。

――それってつまり、ゲーム内であったコラボもネタになるということですか?

松田
まあまあ、それぐらい攻めながら作った作品なので、ぜひ楽しみにしてもらいたいなと。

大澤
でも、『ハピエレ』のファンのみなさんってすごく悪ノリに対する耐性が強いですよね。ビックリしました。

松田
そうなんですよ。今回でいきなり攻めてるわけじゃなくて、今までもゲーム内や生放送などイベントでもけっこう無茶苦茶やってきてるので(笑)。それをユーザーさんはずっと経験しているから、受け入れてくれる土台ができているのかなと思います。

大澤
コール(ゲーム内のいわゆるガチャ要素)にもアニメ演出のひとつとして普通に出てきますからね。荒れないのかなって不安になります(笑)。

松田
普通はやっぱり原作に愛着があるので、「アニメになって絵が違う」とか「このキャラクターはこんな性格じゃない」とか、色々と怒られるケースもあると思うんですけど、僕ら自身が楽しみながら作っているのを理解してくださってるのかなって。すごくファンに恵まれている作品だと思っています。

■アニメで受けた刺激をゲームに反映させたい

――松田さんは今回のアニメ化で制作工程をひとつずつご覧になっていると思いますが、ゲームとアニメの制作で何か違いを感じる部分はありますか?

松田
衝撃を受けたのはアフレコですね。ゲームだとキャストさんは個別収録が普通ですけど、アニメでは掛け合いが基本だから演技にライブ感が生まれていく様子が見て取れて。そこはすごく感動しましたね。

大澤
ファン感謝祭でもキャストの方々が言ってましたけど、収録日の直前まで台本が渡されないから次の話数で何をやるのかビックリ箱みたいって。

松田
「次の脚本が来るのを楽しみにしてます!」と言っていただけるのがすごく嬉しいですね。

――今作ではルルナという、田辺留依さんが演じるアニメオリジナルの新キャラクターが登場します。今後はこういったアニメでの展開がゲームに影響を与えることも?


大澤
そこは僕のほうからもぜひお願いしたいなと(笑)。

松田
いやもう、ぜひやりたいです。ルルナもゲームの世界観から完全に逸脱しているわけではなく、ちゃんと関係のあるキャラクターになっているので、リンクは全く問題なくできると思います。むしろ個人的には、アニメの反響がどんどんゲームに刺激を与えてくれることを望んでいるので。

大澤
基本的に松田さんには毎回会議に参加していただいているので、監修だけだけでなく一緒になってオリジナルストーリーを作れるというのは大変ありがたいですね。

――アニメ化にあたってスタッフの人選はどうやって?

大澤
これは制作現場の声を聴きながら、弊社とJ.C.STAFFさんから松田さんに提案しました。岩崎(良明)監督は『ラブひな』や『ゼロの使い魔』といった美少女キャラクター作品に強い印象がありますけど、男の子が主人公の描き方も上手いし、何よりキャラクターと真っ直ぐ向き合ってくれる監督なので今作に適任だと考えました。

松田
僕がプロデューサーなのにけっこう無茶をするので、監督が上手く手綱をとってコントロールしてくれてますね(笑)。岩崎監督はゲームのほうもしっかりやり込んでくださって、キャラクターの魅力もちゃんと担保してくれるので助かりました。

大澤
あと、キャラクターデザインの高橋(みか)さんはJ.C.STAFFさんからの推薦ですが、描いてもらったラフを松田さんにお見せしたところ、一発OKで。

松田
普通に「すごい!」って思いましたよ。whoopinの特徴を上手く捉えているし、表情集もたくさんバリエーションを描いてくれて、すごく意気込みを感じました。


大澤
たしかに高橋さん本人もすごく気持ちが乗って描いていると思いました。シリーズ構成の白根(秀樹)さんは、うちも『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』でお世話になっていて頼りになる方なんですけど、今回はオリジナルなのでゼロからネタを考えないといけないから、色々と辛かっただろうなあ……(笑)。

松田
本当に大変だったと思います。しかも「攻めましょう!」なんて言っちゃってすみません(笑)。

■ゲームで培った強みをアニメと融合させる

――シナリオは各話完結のオムニバスに?

大澤
オムニバスではあるものの、全話通したメインストーリーはありますね。白根さんをはじめ、制作スタッフみんなのアイデアを吸収しながら作っていった感じです。

松田
基本構成はハルたち主人公チームと、ワイズマンというチームの対立構造がベースになるのかなと。すごく大きなことを言うと、今作はこれまでアニメを培ってきた方々の知恵や技術と、僕らゲームサイドで培ってきた強みの融合がもしかしたら出来たのかな、というう手応えはあるんですよ。


大澤
そこはすごく分かります。ゲーム業界もアニメ業界もネタとしていじってるし。ここら辺はもうちょっと大きく言っといたほうが良いかもしれない(笑)。

――具体的なポイントをお聞きしてもいいですか?

松田
実は今回、うちのゲームサイドのシナリオライターが丸ごと担当した話数があるんです。

大澤
やっぱりゲームのネタを盛り込むとなると、我々では分からない部分が多いので。企画当初から1話分どこか書いてくださいというお願いをしました。

松田
初めてだったので大分時間がかかったんですけど、苦労した分、面白い感じになったと思います。

――やっぱりゲームとアニメではシナリオ制作の勝手が違いますか?

松田
当たり前ですが、ゲームとアニメでは文法が違うんですよね。例えばゲームの場合、シーンが切り替わるごとに今どういう状況なのか説明を入れる必要がありますが、アニメだと視覚的に見せられるから必要がない、みたいな。演出のアプローチがゲームと全然違うのですごく勉強になりました。これを逆輸入すれば、ゲームシナリオももっと削れる部分があると思うし、まだまだ進化できる余地があるのかなって。

――そのぐらいクリエイティブを刺激するアニメが出来上がったわけですね。

松田
まあ、ふたを開けてみたら「え、どこが?」って言われるかもしれないけど(笑)。

大澤
こういう融合かよ、みたいな(笑)。でも、面白い試みができたんじゃないかと思います。アニメはアニメとして、新規ユーザーが楽しめるように作ってますので、あまりゲーム原作だからと身構えずに、気軽に見てもらえたら嬉しいですね。

松田
そうですね。アニメとゲームの各チームが結集して、全話本当にアグレッシブに面白さを追求して作ってますので、ぜひご期待ください!


TVアニメ『ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-』

【スタッフ】
原作:Happy Elements
キャラクターデザイン:whoopin
監督:岩崎良明
シリーズ構成:白根秀樹
アニメーションキャラクターデザイン:高橋みか
総作画監督:高橋みか
美術監督:岩瀬栄治
美術設定:大平 司
色彩設計:安藤智美
撮影監督:廣瀬唯希
編集:新見元希
音楽:マニュアル・オブ・エラーズ
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音響制作:マジックカプセル
音楽制作:NBCUniversal Entertainment
プロデュース:EGG FIRM
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:LAST PERIOD ANIMATION PROJECT

【キャスト】
ハル:花江夏樹
ちょこ:田村ゆかり
リーザ:菊地美香
ガジェル:村瀬 歩
エーリカ:加隈亜衣
カンパネルラ:M・A・O
ミウ:?
ジレッド:金城大和
ノイン:上田麗奈
イオナ:茅野愛衣
ミザル:原田彩楓
キカザル:鬼頭明里
イワザル:真野あゆみ
グル:井澤詩織
ルルナ:田辺留依

【放送情報】
TOKYO MX 4月11日より毎週水曜日 24:00~
ABC朝日放送 4月11日より毎週水曜日 26:15~
BS11 4月12日より毎週木曜日 24:00~

【CD情報】
OP主題歌
「欲張りDreamer」ハル(CV:花江夏樹)×ちょこ(CV:田村ゆかり)
発売日:2018年4月25日
1,200円+税

ED主題歌
「タイトル未定」ワイズマン(CV:原田彩楓&CV:鬼頭明里&CV:真野あゆみ)
発売日:2018年4月25日
1,200円+税

(C)Happy Elements K.K/LAST PERIOD ANIMATION PROJECT