3月1日、大学3年生に向けた就職活動の説明会が解禁された。2018年も売り手市場が続き、企業間の人材獲得競争が激化すると見られている。そんな中、これまで人気の高かった「公務員」を希望する学生は、2011年をピークに徐々に減ってきているという。3月1日放送の「おはよう日本」(NHK)は、地方公共団体が学生へのアピール合戦に参戦し始めた様子を伝えた。(文:okei)
昨年就活を終えた大学生に聞くと、公務員に魅力を感じていない様子がうかがえる。
「民間企業の方が、頑張った分、所得が増えるのかなというところで選びました」
「『公務員は安定する』と昔から言われてきましたけど、自分が挑戦してみたいことに直結しないかなと思って」
「地味・堅苦しい」イメージを払拭、「♯生駒は違う」でSNS発信も
これを見ていた視聴者からは、ツイッターで「就職活動で若い人が公務員離れしてるなら ロスジェネ世代を雇ってあげて下さい…」などの声が上がっている。
ただ、専門家に言わせれば、公務員はPR不足なのだという。リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎所長は、「仕事の魅力や仕事そのものの存在を知らせることが鍵だと思います」と語る。少子化もさることながら、全力でアプローチする民間企業に比べ、公務員の仕事が学生たちに伝わっていないという指摘だ。
その中でも、学生に上手くアピールして応募を増やした自治体もある。奈良県生駒市では、「地味・堅苦しい・つまらない、生駒は違う」というフレーズから始まるPR動画を配信。地域の生活を支え、やりがいをもって働く若い職員の様子を紹介している。地元で就職したい学生にとって、魅力ある動画に仕上がっていた。
SNSでもハッシュタグ「♯生駒は違う」でアピール。文字のみだった募集要項をカラフルなマンガのポスターに変えるなど工夫を凝らし、応募者が236人から1033人と4倍以上に増加した。イメージ戦略が功を奏したようだ。
長野県中野市では、ブルゾンちえみ風にポーズをキメる女性職員のPR動画やポスターを製作、SNSでも発信している。兵庫県加古川市の職員募集ポスターには、「試験対策不要」「人物重視」の文字が躍る。膨大な知識を求められる「教養試験」を受けなくても面接に進めるようにして、人物重視に力を入れているという。
警察のインターンシップ、「なりきり刑事(デカ)」体験も
警察でも人材獲得は大きな課題だ。長野県警が今年1月に初めて行ったインターンシップ(職場体験)では、白バイ体験を実施。和歌山県警では、およそ10キロの装備を身に付けながらの機動隊の訓練体験を始めている。
3年前から様々なインターンシップを行う静岡県警では、「なりきり刑事(デカ)体験」ができる。実際の捜査車両に乗り敷地内を移動したり、現役の職員から指紋採取などの指導を受けたりする。
少し遊びの要素がありそうにも感じるが、適性を見極めるための採用活動だという。市民の安全を守る大事な仕事だけに、人材の質が落ちてはならない。静岡県警の採用チーム・チーフの警部は、
「(応募者の)量が減っている中で、質を高めなければならない。いかに警察官にふさわしい人材を採用するかを考えながらやっていく」
と説明している。公務員の不足は市民生活・公共サービスに直結するため、ぜひPRに力を入れてもらいたい。公務員を含めた人材獲得競争は、ますます激化しそうだ。