テスト3日目のカタルニア・サーキットは、明け方から雪に見舞われた。セッションの始まる午前9時の時点で、サーキットは完全に雪景色。コース上に積雪はなかったが、雪はなお止む気配がなく、気温1℃、路面温度2℃では、F1マシンが走れるはずもない。ピット出口のシグナルは赤く点灯したまま、チームスタッフは長い待機の時間を強いられた。
その間、トロロッソとホンダの面々は、具体的に何をしていたのだろう。
「決してヒマでブラブラしてるわけではなく、やるべきことはいくらでもありました」と、田辺豊治ホンダF1テクニカル・ディレクターは言う。
「チームとの共同作業で必ずやっておきたかったことのひとつが、『グリッド・プロシージャー』でした。雨や雪で走れないのなら、それを逆手にとって止まっていてもできることをこなそうと」
「グリッド・プロシージャー」とは、レーススタート直前のグリッド上の作業手順を指す。具体的にはレース当日、グリッドにドライバーが着いてから、30分後にレースがスタートするまでの間に行う作業である。エンジンに冷却器を付け、各部をチェックし、最後にタイヤを付けてエンジンをかけるまで。その作業確認をガレージ内をグリッドに見立て、ドライバーも参加させて行なった。
そしてそれ以外の時間は、前日までの走行データを通常よりはるかに深く見直す作業に費やしたという。
1回目のテストは、残りあと1日しかない。そこで最もすべきことは? と問うと、田辺テクニカルディレクターは「ドライ路面での全開走行。その状況でのパワーユニット作動確認ですね」と即答した。
「ウエットやちょい濡れ路面でも、全開で走ってはいますが、ドライ路面でのレースペース走行はまったくできてませんから。比較的長い周回を連続走行して、高い路面温度でのデータも取りたいですし」
最終日は少なくとも半日は雨が止む。そして気温も例年に近い、16℃前後まで上がるという予報である。
「天候不順にもかかわらず、ここまでで想定したプログラムの80%ほどは消化できています。明日、今言ったようなメニューがこなせれば、1回目のテストとしてはまずまずじゃないでしょうか」