導入が決まった時にはあれほど非難の嵐が吹き荒れた、ドライバー頭部保護デバイス『ハロ』。各チームの開発エンジニアたちは新車発表の際も、「ハロ自体が重い上に重心が高いから、マシンバランスが完全に狂ってしまった。空力的な影響も、ものすごく大きい」とハロのせいでいかに迷惑を被ったか、ぼやきまくっていた。
一方で『外見の醜さ』は、どうか。バルセロナのテスト現場で実車を間近で見た感想で言うと、これが意外に違和感がないのである。確かにかなりのボリューム感なのだが、メルセデスとレッドブル以外はカーボンむき出しの黒ではなく、マシンと同一カラーリングにしていることもあって、存在がそれほど気にならない。個人的にはすでに初日で完全に見慣れてしまった。
実際に運転するドライバーに訊いてみても、たとえばシャルル・ルクレールは、「ガレージに停まっている時は、頭の上に大きな物体がのしかかってる感じがする。でも実際に走り出すと、まったく気にならないね」という。
「真ん中に確かに支柱が見えてるんだけど、走ってる最中はピントは遠くに合ってるわけで、ほとんど見えてないのと同じなんだ。コーナリング中は左右に目線が行くから、いっそう気にならないしね」
ただしマシンへの乗り降りは、ちょっとめんどくさそうだ。
ピエール・ガスリーも走行中はルクレールと同じく「付いてるかどうかさえ意識しない」と言うが、ハロに触れないように乗ろうとして、レーシングスーツを引っかけて破いてしまったそうだ。
さらに降りる時も、「ハロを両手で掴んで立ち上がろうとしたら、『上部に付いてる空力デバイスが壊れちゃうから、掴んじゃダメ!』と、エンジニアに怒られてね」と、苦笑する。
ちなみに去年までは、コクピット内で立ち上がって横に降りるのが普通だった。それが今年は、ハロの前部を跨いでノーズに立ち、そこから降りることになりそう。メルセデスではさっそく、ハミルトンがコクピットから毎回飛び降りずに済むよう、専用の小さな降車台が置かれていた。ボッタスにも同様の措置が取られたかどうかは、まだ不明だ。