『第90回アカデミー賞』の発表がいよいよ今週末3月4日に迫る。
ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞を含む最多13部門にノミネートされているが、作品賞にノミネートされている9作品のうち、2作に出演して注目集めるのが現在22歳の俳優ティモシー・シャラメだ。
ティモシー・シャラメは作品賞ほか5部門の候補に上がる『レディ・バード』と4部門ノミネートの『君の名前で僕を呼んで』に出演。後者では今年の最年少の主演男優賞候補となっている。『アカデミー賞』の長い歴史の中でも、主演男優賞部門ではここ80年の中で最年少のノミニーだという。
グレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』と、ルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』はどちらも思春期ならでは少年少女の心情を描いた作品。前者でシャラメは主人公の恋人で、あの年頃の女子にモテそうな、大人びて少し不良っぽい少年役を演じた。『レディ・バード』での出演シーンはそう多くはないが、初主演作『君の名前で僕を呼んで』ではアーミー・ハマー演じる24歳の青年と初めての恋に落ち、戸惑いながらも恋の喜びや痛みを経験していく17歳の少年を繊細に演じてみせ、メディアや批評家から絶賛を浴びた。
■芸術一家に育ちフランス語も堪能 名門ラガーディア高校卒
ティモシー・シャラメは1995年ニューヨーク・マンハッタン生まれ。姉と母が女優、叔父は映画監督、祖父は脚本家という芸術一家で育った。父親がフランス人でフランス語を話すことができ、『君の名前で僕を呼んで』でも英語、フランス語、イタリア語を使った演技を披露している。
高校時代はロバート・デ・ニーロやアル・パチーノ、マーティン・スコセッシも卒業した名門ラガーディア高校演劇科で学んだ。『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴートとは同級生だそうで、エルゴートのInstagramでも交流の様子が披露されている。
■『インターステラー』ではマコノヒーの息子役
『君の名前で僕を呼んで』で一躍その名を世界に轟かせたシャラメだが、映画デビューは2014年の『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』。同年公開のクリストファー・ノーラン監督作『インターステラー』ではマシュー・マコノヒーの息子役を演じた。
シャラメが17歳の時に出会い、『君の名前で僕を呼んで』の主演に抜擢したというルカ・グァダニーノ監督は、インタビューなどで野心的な若い青年でありながら同時に純真さも合わせ持つシャラメの雰囲気がエリオにぴったりだと思ったと語っている。この映画では少年から青年へと変わる、二度と訪れることのない瞬間のシャラメの姿が美しく切り取られている。
■フランク・オーシャンやグザヴィエ・ドランも魅了
初主演作で一気に脚光を浴びたシャラメの魅力に惹きつけられたのはグァダニーノ監督だけではない。
フランク・オーシャンや映画監督のグザヴィエ・ドランもその1人。男性ファッション誌『V MAN』では、両者がそれぞれインタビュイーを務めたシャラメのインタビューを掲載している。
フランク・オーシャンは『君の名前で僕を呼んで』で、シャラメ演じるエリオの父親役を演じ、映画のハイライトの1つとも言える胸打たれる父子のシーンを作り上げたマイケル・スタールバーグの演技について自身のTumblrで言及するなど、同作に賛辞を贈っている。シャラメはかつて「Lil Timmy Tim」という名でラップをしていたこともあるなど、大のヒップホップ好きで知られ、『V MAN』でのインタビューでもフランク・オーシャンとの対話に興奮を隠せない様子が垣間見える。
またグザヴィエ・ドランとの対談では、ドランが「『君の名前で僕を呼んで』を見た時、僕は君のことを知ってるような気がした」と明かすなど、自身の映画でも恋や愛の痛みを描いてきたドランならではの視点で、俳優としてのシャラメの姿に迫っている。
さらに最近では『GQ』でのライアン・マッギンレーとのフォトシュートも話題に。
この『GQ』の記事では、『レディ・バード』でシャラメを起用したグレタ・ガーウィグの「彼はクリスチャン・ベールであり、ダニエル・デイ=ルイスであり、レオナルド・ディカプリオみたいでもある。一流の演技テクニックを持ちながら、みんなの胸をときめかせる男」という言葉が紹介されている。
■次回作はウディ・アレン監督作やスティーヴ・カレルとの共演作
ティモシー・シャラメの公開待機作にはセレーナ・ゴメス、エル・ファンニングらと共演したウディ・アレン監督の『A Rainy Day in New York』、スティーヴ・カレルと親子役を演じた『Beautiful Boy』がある。(ウディ・アレン監督作については、アレン監督への性的虐待疑惑を受けて同作のギャラの全額をTime's Upなどの慈善団体に寄付すると宣言している)。
1作品で一気にスターダムを上りつめただけに次回作には大きな関心が集まるが、日本では『君の名前で僕を呼んで』が4月27日に公開。『レディ・バード』が6月に公開される。初主演作にしてその恵まれた容姿と繊細で確かな演技力によって、多くのクリエイターの心を掴んだティモシー・シャラメ。今後も大物監督からのラブコールが続きそうな彼に今から注目しておいて損はない。