MotoGPクラスではライダーの身長が高い、低いでマシンの走らせ方の好みやカウルの形状が変わってくる。2017年シーズンは、もっとも身長が高いライダーともっとも身長が低いライダーの差は31cmもあった。そんなMotoGPライダーの身長をランキング形式でお届けする。
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身長の高いライダーは手足も長く、その分、マシンの上で前後左右に大きく動けることで、荷重バランスなどを自らの体を使って取ることができる。
一方、身長に比例して体重も重く、大柄なためぴたりと伏せても体がカウルからはみ出すなど、空気抵抗の面ではやや不利な部分がある。身長の低いライダーは、小柄なため体重も軽い傾向にあり、空気抵抗の面でも有利。
ただし、MotoGPライダーはそれぞれの体格に合ったポジションのマシンを用意されるため、タンクやシート、カウルなどの形状、ハンドル、ステップ位置などでポジション調整は可能なので、身長の高い、低い、どちらが有利かは一概には言えない。
2017年シーズンのMotoGPライダー身長ランキングトップ5の傾向を見るに、身長の低いライダーのほうがシリーズランキングでは上位につけている傾向にあるようだ。
■MotoGPクラス身長の高いライダーランキング
【5位:ダニロ・ペトルッチ、アレイシ・エスパルガロ(180cm)】
ペトルッチは、MotoGPライダーの中では少数派のプロダクションレース出身ライダー。ヨーロッパ選手権STK600、同STK1000を経て、スーパーバイク世界選手権(SBK)には参戦せず、2012年よりMotoGPクラスに参戦する。
2014年までCRT、オープンクラスでの参戦だったが、2015年にドゥカティのデスモセディチGPに乗り換えると、初表彰台を獲得。2017年シーズンはベストランキングとなる8位を獲得した。
ペトルッチと同一で5位となったアレイシは、グランプリ初参戦は2004年というベテラン。弟のポルもMotoGPクラス参戦しており、MotoGPクラスでは唯一の現役兄弟ライダーだ。
弟のポルが171cmであるのに対し、兄のアレイシのほうが9cm身長が高い。アレイシは、125ccクラスでデビューし、250ccクラスを経て2009年にMotoGPクラスにデビューしたが、一度はシートを失いながら、Moto2クラスから再びMotoGPクラスにステップアップした苦労人。2012年から2014年までの3年間、CRT、オープンクラスのランキングトップを獲得した。
【4位:カレル・アブラハム(181cm)】
250ccクラス、Moto2クラスを経てMotoGPクラスにステップアップした唯一のチェコ人MotoGPライダー。Moto2クラスでは1勝をマークしている。チェコのブルノサーキットはアブラハム家が所有するなど、裕福な実家のバックアップを受けているとはいえ、長年、トップカテゴリーに参戦し続けている。
【3位 バレンティーノ・ロッシ(182cm)】
2018年で39歳となるMotoGPクラス最年長のベテランライダーのロッシ。125ccクラスで1回、250ccクラスで1回、500ccクラスで1回、MotoGPクラスで6回タイトルを獲得しており、現在もトップライダーとして君臨している。
長身を生かしてマシンの上で前後左右に動き、ブレーキング時の足出し走法を生み出すなど、ライディングに対する探究心が強く、それが長くMotoGP界に君臨する原動力となっている。
【2位 スコット・レディング(185cm)】
小排気量クラスのころから大柄だったレディング。それでも125cc時代1年目の2008年にはグランプリ最年少優勝記録を樹立。2010年にはMoto2クラスにステップアップ、2014年よりMotoGPクラスに参戦している。
【1位 ロリス・バズ(191cm)】
2017年MotoGPナンバーワンの高身長のバズ。もともとSBK時代から大柄で知られていたライダー。標準仕様のデスモセディチでは、マシンの上で伏せてもカウルから体がはみ出すため、やや大きめのフロントアッパー、スクリーンなど、バズ専用のパーツが装着されていたという。今年は再びSBKに参戦する。
■MotoGPクラス身長の低いライダーランキング
【5位:カル・クラッチロー(170cm)】
クラッチローは、スーパースポーツ(600cc)やスーパーバイク(1000cc)のプロダクションレースで活躍を収め、2007年にはスーパースポーツ世界選手権(WSS)チャンピオンを獲得。SBKを経て、2011年にMotoGPデビューした遅咲きのイギリス人ライダーだ。
身長は170cmだががっちりとした体格が特徴。MotoGPクラスでは参戦3年目の2013年にワークス勢に割って入るランキング5位を獲得した。
翌年2014年、ドゥカティ・ワークスに起用されるがマシン面で苦戦し、2014年以降はホンダのサテライトのLCRホンダから参戦中。2018年は中上貴晶のチームメイトとなる。
【4位:アルバロ・バウティスタ(169cm)】
バウティスタは、125cc、250ccクラスを経て2010年よりMotoGPクラスに参戦を続けるスペイン人ライダー。125ccクラスでは2006年にチャンピオンを獲得している。
MotoGPではスズキ、ホンダ、アプリリア、ドゥカティと4メーカーのマシンを乗り継ぎ、ホンダ時代にはサテライトチームながら3回表彰台に立った経験を持つ。ややムラっ気があるライダーで、転倒も多い。
【3位:マルク・マルケス(168cm)】
2017年MotoGPクラスチャンピオンのマルケス。MotoGPクラス5年間で4回タイトルを獲得する偉業を達成した。また、予選結果をポイント化してその総合ポイントで争うBMW Mアワードを5年連続獲得するなど、MotoGPライダーナンバーワンの速さを持つライダー。
一発の速さとともに競り合いの強さを兼ね備えており、レース戦略も幅が広い。また、2017年は転倒も多かったが、驚異的なリカバリー能力を発揮して転倒を回避することもあった。名実共に、MotoGPのトップに君臨するライダー。
【2位:アンドレア・ドビジオーゾ(167cm)】
2017年にチャンピオン争いに加わり、MotoGPクラスベストとなるランキング2位を獲得したドビジオーゾ。2004年に125ccクラスでチャンピオンを獲得、250ccクラスを経て、2008年にMotoGPクラスにステップアップしたイタリア人ライダーだ。
常にコンスタントに成績を残して来たものの、MotoGPクラスでは長くトップライダーとしては見られていなかったが、ドゥカティ入りした2013年以降、デスモセディチGPの開発に手腕を発揮。2017年に一気にトップライダーの仲間入りを果たした。
2017年はチームメイトのホルヘ・ロレンソ(173cm)が空気抵抗の大きな大型のエアロカウルを常用していたのに対し、ドビジオーゾはエアロカウルを使ったり、使わなかったりするなど、ハンドリングの要求に対する体格面の差があったのかもしれない。
【1位:ダニ・ペドロサ(160cm)】
MotoGPクラスでは最も身長が低いペドロサ。2位のドビジオーゾと比べても7cmも低い。
125ccクラス、250ccクラス時代は小柄な体格を生かしてチャンピオンを獲得したペドロサだが、MotoGPクラスステップアップ後、2017年で12年目のシーズンとなるものの、いまだチャンピオン獲得には至っていない。
ペドロサのマシンは以前からフロントアッパーカウル、スクリーン、シートカウルやタンクエンドの形状が小柄な体格に合わせた専用仕様となっており、ウイングレットに代わる2017年のエアロパーツも、マルケス機に比べてペドロサ機のほうが一回り小さいなどの特徴がある。
体格の問題だけでないが、ペドロサが切り返しの重さなどを嫌う傾向にあるものと推測される。
それでも、MotoGPクラスの12年間で常に上位ランキングにつけており、ペドロサはまさにリトルジャイアントと呼ぶにふさわしい記録を残している。