トロロッソ・ホンダはバルセロナテスト2日目も、まったくのトラブルフリーだった。ただし、コンディションは初日以上に悪化していた。何しろ午前9時のセッション開始時点で、気温3℃、路面温度4℃という寒さ。
とてもF1マシンが走れる状態ではない。そのためこの日が初テストだったピエール・ガスリーも、本格的な周回を始めたのはセッション開始後1時間以上経ってから。
それでも路面温度は10℃に満たず、「タイヤに熱を入れるのが本当に難しかった。少し雪がちらついてからは、コース上に留まってるだけでも大変だった」と、語っている。
にもかかわらず、この日のガスリーは計82周を周回。1分21秒318の自己ベストは、全11台中6番手タイムだった。ちなみに昨年のスペインGPでのトロロッソは、カルロス・サインツJr.が予選Q2で1分21秒371を出している。
ガスリーの走りは超低温のコンディション下で、もちろんバリバリのパフォーマンスランではない。にもかかわらず去年の予選タイムと、ほとんど同タイム。この日走った他チームのドライバーも同様の速さを見せており、エンジン馬力が出やすい低気温だったとはいえ、今年もGP本番で次々に最速記録が塗り替えられるのかもしれない。
初めて本格走行したSTR13についてガスリーは、「まだ調整すべき点は多いけれど、バランスは悪くない。低中速から高速区間まで、安定した挙動を見せてる」と、一定の評価を下していた。
一方でホンダ製パワーユニットに関しては、「全然問題なかったよ」と言うものの、前日のハートレーほどには手放しの高評価ではなかった。アグレッシブなドライビングが身上のガスリーだが、現時点ではまだ慎重に、今季のパッケージの見極めをしている段階という印象だった。
ところでトロロッソ・ホンダは初日に主要スタッフが出席しての合同会見を行なったのだが、帰りがけに報道陣全員にお土産を配ってくれた。
最近のF1では珍しい気配りにちょっと驚き、うれしかったが、中身を見てさらにびっくりした。何と使用済みのホイールナットに、ふたりのドライバーのサインが添えられた記念品だったのである。チームにしてみれば捨てるだけの消耗品パーツを、F1好きの心をくすぐる品に変身させるとは、トロロッソもなかなかやるもんである。
それを写真に撮ってSNSに上げたところ、思わぬ反響があった。
「あえてのホイールナット?」とか「あのチームへの皮肉ですね」というメッセージが来たのだ。一瞬何のことかわからなかったが、マクラーレンのことを指しているとすぐに思い当たった。というのもこの日、フェルナンド・アロンソが右後輪を脱落させてコースアウトしたのだが、原因がホイールナットのトラブルだったのである。
もちろんこの記念品は何日も前から用意されていたもので、未来が見える超能力者がトロロッソにいるとは思えない。しかしアロンソがコースから飛び出したのは午前9時43分で、トロロッソの会見が始まったのはそのわずか20分後という、タイミング的にも絶妙なものだった。
翌日トロロッソの広報スタッフに、「日本のF1ファンが、こんなリアクションしてましたよ」と伝えてみた。彼女は「いやいや。そんな意図、持ってるわけないでしょ」と言いつつも、その顔からは押さえきれない愉快そうな笑みがこぼれていた。