"猫の島"として有名な、愛媛県大洲市・青島。昨今はネットでも話題となり、国内外問わず観光客が猫見物に訪れている。そんな中、愛媛新聞が2月21日に報じた記事によると、住民らは島に住む約130匹の猫の不妊・去勢手術に乗り出す方針を固めたという。
現在、「青島猫を見守る会」という島民らの団体が猫の世話をしている。しかし島の人口は13人で、平均年齢は75歳を超える。昨年の7月には支援を同市に求め、今後、同市と公益財団法人「どうぶつ基金」からの支援を受け、手術を行う予定だ。
これに対してネット上では「猫が可哀想」の声もあがっているが、概ね「仕方がないことだと思う」といった肯定的な反応が目立つ。(文:松本ミゾレ)
島民13人、猫130匹……過剰繁殖は住民と猫、両者のデメリットになることも
もちろん本来動物が有している機能を、人間が勝手に失わせるというのは決して賞賛できるものではない。動物にとって食うこと、寝ること、そして子孫を残すことは、人間以上に重要な命題だ。それを去勢手術で奪ってしまうことが酷だという意見も、もっともだ。
ただ、可哀想とも言ってられない事情がある。というのも、そもそも青島の猫たちは観光資源ではなく、元々住んでいた猫がやや増え過ぎてしまっているだけ。かつては適正頭数をキープしていたのかもしれないが、住民が少なくなれば管理もそれだけ大変になる。
猫は生後半年もすれば繁殖可能になり、一度に数匹産むのですぐ増える。すると、猫たちによる熾烈ななわばり争い、メスを巡ってのオス同士の闘争による負傷猫の増加、感染病の媒介などが懸念される。また糞害などが増え、劣悪な衛生状態を招くこともある。猫と住民が気持ちよく住むためにも、過剰繁殖を防ぐ手術は必要だろう。
ただ筆者は現在、3匹の猫と暮らしている。すべて去勢手術をしているが、毎回「飼い主の身勝手なエゴではないのか」という気持ちが消えることはない。それでも逃げ出した場合を考えると、手術をさせずにはいられなくなる。
全国的に、猫が増え過ぎて管理できない状態に 猫にとっての幸せとは何だろう
先述の通り、去勢されていない猫の繁殖力はとてつもない。脱走し、野良猫と交尾してしまえば、明日をも知れない運命の野良猫を増すことになる。それは飼い主としてはあまりに無責任で、避けたいところだ。
逆に、飼い猫に限らず野良猫、地域猫への去勢が徹底されていれば、過酷な屋外生活を強いられたり、不運にも馬鹿に捕まって虐待されたりする猫も減る。長期的に見れば殺処分される猫までも減るだろう。
実際問題、人間が住みよいように作った世界は、他の動物と共存するには向かない。無理解な人も多いし、ペット可物件なんかそこまで多くもない。そんな状況下では、やっぱり適正数以上に猫を増やさない努力も必要ではないだろうか。
青島の不妊・去勢手術は、かなり大規模に思えるが、同じような取組みは全国各地で行われている。全国的に、猫が増えすぎて管理が行き届かないという現状が問題になっているのだ。
ここから先は「増やす」「減らす」といった次元の話に囚われるのではなく、猫にとって何が幸せなのか、どうすれば猫に当世限りの命を全うしてもらえるかというところに着目していきたい。