2018年02月28日 09:02 リアルサウンド
4人組R&Bコーラスグループ・DEEPが、2月28日に約1年ぶりとなるシングル『SING』をリリースする。DEEPのメンバーは、この1年、どんな活動をしていたのか。そして「SING」というストレートなタイトルの表題曲は、どのようにして生まれたのか。その背景には、結成から10周年を迎えたグループの濃密なドラマがあった。(編集部)
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■KEISEI「ポジティブなスイッチが入りました」
――16年の3月にシングル『MAYDAY』を出して以降、しばらくリリースが途絶えていましたが、その後はどんな活動をしていたのですか?
TAKA:実はあの後、ニューヨークに行くことになって……。
YUICHIRO:16年の3月に『MAYDAY』を出したあと、一昨年の6月から住むことになったんですよね。そこから去年の3月まで9ヶ月間、向こうで、歌やダンスのレッスンはもちろん、夜は「オープン・マイク」って言って、生バンドで演奏するところに飛び入りで歌いに行ったりとか。あと、教会でゴスペル体験をしたり、ハーレムで歌ったり。最終的には、向こうでワンマン・ライブもやることができて。そうやって、向こうの空気を吸収してきました。
――その情報って、あまり公にはしてませんでしたよね?
TAKA:そうですね。オフィシャルにはしてなかったです。
YUICHIRO:っていうのも、RYOがビザを取るのに失敗して……RYOだけ来れなかったんですよね(笑)。だから、ホントは4人で行く予定だったんですけど、結局僕たち3人だけで行くことになって。4人で行ったら、映像を回したりとか、またいろいろ展開が違ったのかもしれないですけど……みなさん、ビザの申請には気を付けましょうっていう(笑)。
――なるほど……実際向こうに滞在してみて、いかがでしたか?
TAKA:向こうでは、3人で共同生活をしていたんですけど、やっぱりDEEPのルーツは、そこにあるというか……自分たちが影響を受けてきたブラック・ミュージックだったりR&Bの発祥の地なわけじゃないですか。そもそも、4人組のコーラス・グループを作るっていう僕らの結成の経緯自体、向こうのブラック・ミュージックやR&Bのコーラス・グループの影響を受けているところがあるので。だから、言ってみれば本場なわけで、そこで感じることは、やっぱり多々ありましたよね。
KEISEI:滞在当初は、慣れない環境でしんどいところもありましたけど、自分が高校生の頃とかに経験したような新しい刺激を受けた感じで、とにかく多感になりましたね。きつい、つらい、嬉しい、楽しいとか、そういう感情に、すごく敏感になったというか。そういうのって、この歳になると、なかなか味わえないじゃないですか。
――そうですよね。
KEISEI:そういう環境に身を置くことによって、もう一回、音楽にかける自分たちの思いみたいなものも確認することができたし、新しいことにどんどんチャレンジしていこうっていう、何かポジティブなスイッチが入りました。自分たちで、切り開いていこうっていう。
YUICHIRO:うん。やっぱり、ものすごい刺激になりましたね。現地の雰囲気だったりカルチャーだったりも、直接感じることができたし。
――ちなみに、その間、RYOさんは何を?
RYO:メンバーとちょくちょく連絡は取りつつ、僕はこっちで歌やダンスのレッスンに励んでいました。もちろん、メンバーに対して申し訳ない気持ちもあって、当初はかなり落ち込みましたけど、事務所の人も「逆に、自分を見つめ直す機会になっていいんじゃないか」みたいなことを言ってくれたので。その言葉を信じて、頑張っていた感じですね。
YUICHIRO:その後、僕らは去年の3月に戻ってきて、ファンクラブ限定のライブとかで全国を回らせてもらって、かなりお待たせしちゃったけど、こういう理由でニューヨークに行ってたんだですっていうことを、ファンの方々に直接説明しました。で、去年の秋ぐらいにはシングルを出す予定だったんですけど、なかなか「これだ!」という曲にめぐり合えなかったんですよね。
――リリースも空いたし、かなり重要な一曲になりますからね。
YUICHIRO:そう、中途半端な気持ちで出すのは、すごい嫌だったので。だから、多少時間を掛けてでも、自分たちが満足行くものを、しっかり作ろうっていう話になったんです。
■TAKA「歌いたいっていう気持ちが、いちばん強い」
――4人としては、どんなイメージの曲で、リスタートしたいと思っていたのですか?
TAKA:やっぱり、僕らDEEPっていうのは、バラードが真骨頂のグループだと思うんです。ニューヨーク組はニューヨーク組で、向こうで観たり聴いたりした新しいことをやりたいという思いが、無きにしもあらずだったんですけど、向こうにいるときに結成10周年を迎えて、次の一曲は勝負になるなっていう感覚もあって。だったら、やっぱりまずは、渾身のバラードを作ろうということになりました。そこは4人全員のなかで、固まっていたことなんですよね。そこからさらにドラマがあって。
――ドラマ?
TAKA:原点回帰のバラードで勝負するって決まったあと、「じゃあ、誰に曲をお願いする?」となったときに、やっぱりこの10年を支えてきてくれた人にお願いしたいと思って。それで、春川(仁志)さんにお願いしたんです。春川さんは、僕らのコーラスの師匠であり、10年ずっと見守ってくれた方でもあって……僕らの真の理解者なんです。
KEISEI:もう、親父みたいなもんですよね。僕ら、いっつも怒られましたから(笑)。「お前らうるさいから、スタジオから出ていけ!」って言われて、近所のカフェで一生懸命自分のパートを覚えたり。それぐらい、僕らのことをストイックに見ていただいてきた方なので、やっぱりこの方にお願いするしかないというか。良い意味で僕らのケツを叩いてくれる人は、春川さんしかいないんじゃないかと思って。
TAKA:それで、春川さんに「僕らの10年の思いを込めた、渾身のバラードを作りたいんです」っていうことを直接お伝えして。そしたら「わかった。じゃあ、俺がお前らを見てきた感じを曲にするから任せてくれ」って言ってくださって。それで上がってきたのが……。
――今回の表題曲の「SING」であると。
TAKA:はい。そのトラックをメンバー4人で聴いたときに「うわっ」って感動して。楽曲の素晴らしさにも感動したんですけど、もうホント、僕らのことをわかってくれてるなっていうことにも感動して。ここまで僕らの思いを汲んで作ってくれた曲だからこそ、僕たちも自分たちの10年の思いっていうのを、ちゃんと乗せたいなって思ったんです。それで、自分たちの心の芯の部分にあるものは何かって考えたときに出てきたのが、「歌いたい」っていう思いだったんです。
――まさしく“SING”であると。
TAKA:この10年間、苦しかったり、つらかったり、楽しかったりとか、いろいろな思いがあるなかで、やっぱりその「思い」を「歌」に変えて届けることしか、僕たちにはできないんですよね。だからもう、「歌いたい」っていう気持ちが、いちばん強いっていうことで。そのためには、やっぱり自分たちで歌詞を書いたほうがいいと思って、メンバーそれぞれに、この10年の「思い」を文字に起こして、僕に送ってもらったんです。それを組み合わせながら僕が歌詞を書いて、みんなで見ながら、いろいろディスカッションして。その段階で実は、僕のなかでは、みんなが歌うパートっていうのが見えていたんですよね。その思いを綴ったメンバーが、そのパートを歌うっていう。だから、それぞれが歌っているのは、それぞれ自分が書いた言葉になっています。
■RYO「正直に自分の思いを書いていたから、照れもだんだんなくなってきて」
――なるほど。そういう話になったとき、みなさんは、どんなことを考えたのですか?
KEISEI:ホント、ありのままのことですよね。メロディとリンクして成立するレベルで、自分が思っていることを、そのまんま書いたというか。
――走馬燈のように、これまでのことを振り返ったり?
YUICHIRO:いろいろ振り返りましたね。
RYO:なので、結構スラスラ書けたんです。自分が経験したことや、当時思ったことを書いていったので。まあ、最初はちょっと照れもあったんですけど、みんな正直に自分の思いを書いていたから、そういう照れも、だんだんなくなってきて。
――そんなみなさんの思いが、サビの「歌いたい」というフレーズに繋がっていく感じが、すごくエモーショナルな一曲だと思いました。その「思い」の濃さが伝わってきて、良い意味で軽く聴き流せる楽曲ではありません。
TAKA:「歌いたい」って歌ってますからね(笑)。
YUICHIRO:インパクトはありますよね。歌手が「歌いたい」って歌っている歌って何なんだっていう(笑)。
TAKA:でも、それがホント、僕らのストレートな思いなんですよね。だから、あくまでも等身大の言葉であることは意識して。それをあんまり綺麗な言葉で表現するのも、何か違うと思ったし……ホントにもう、「歌いたい」ってことなんです。
YUICHIRO:これからもそうやって、歌い続けたいっていう。やっぱり、僕らにできることは歌うことなので、歌でいろいろな人に恩返しもしていきたい。
――とはいえ、コーラスやハーモニーの部分は、しっかりと綺麗に作られていますよね。
TAKA:そうですね。そこはやっぱり、僕たちがずっとこだわり続けてきた部分なので。だから、コーラスとかは、ちゃんと曲のなかに反映させた感じで作っていったんです。
■YUICHIRO「コーラス・グループであり、ボーカル・グループでもある」
――ここで改めて「DEEPらしさ」を言葉にするとしたら、どんなものになるのでしょう?
YUICHIRO:やっぱりコーラス・グループであり、ボーカル・グループでもあるというのは、ひとつ特徴なんじゃないかと思います。この曲に関しても、ひとりひとりが歌い繋いでいるような感じがあって。
――確かに、この曲は、ヒップホップのマイクリレーのような感じもありますよね。
YUICHIRO:そうですね。自分のパートは、自分で歌詞を書いているっていうところも含めて、ちょっとそういう感じはあります。
TAKA:DEEPは、全員がメインボーカルで成り立つグループなんです。ひとりがメインボーカルで、他の人たちはハーモニー担当っていうボーカル・グループが、日本に限らず海外でも多いんですけど、DEEPは全員がメインを張れます。そこは、僕たちならではの強みなのかなって思います。今回の曲も、各メンバーが入れ替わり立ち代わりメインを取っているので。なので、このスタイルを、DEEPというジャンルじゃないですけど、何か確立させていきたいなっていう想いはありますね。あと、今回のシングルは、「SING」のようなバラード以外にも、向こうの最新のサウンドを取り入れたアップテンポの楽曲とかも入っていて。ただバラードを歌うだけではない、アカペラを歌うコーラス・グループではない、僕らなりの魅力も詰まっていると思うので、そこも含めて「DEEPらしさ」を感じてもらえたら嬉しいですね。
RYO:あと、さっき言っていたコーラス・グループでありボーカル・グループである面で言えば、今回のレコーディングも一発録りなんですよね。今の時代、そういうことができるアーティストが、どんどん少なくなっているなか、そういうところもDEEPの強みなんだと思います。
――では最後、ファンにとっても久しぶりのリリースになることですし、本作で初めて知る人も多いかもしれないので、リーダーのTAKAさんから、本作に寄せて何かひとつメッセージを。
TAKA:ファンのみなさんに対しては、2年間リリースがないなか、本当にお待たせしましたっていう感じですね。このシングルで初めてDEEPを知ってくれた方は、まず僕らのライブを観て欲しいです。僕らの歌を五感で受け止めてもらいたいですし、ニューヨークでの経験によって培った部分も間違いなく出ていると思うので。僕らの成長した姿を、ひとりでも多くの人に見せることができたらいいなと思っています。(取材・文=麦倉正樹/写真=石川真魚)