ここ3年間の開幕前テストというと、ほとんど残念な記憶しかない。ホンダは毎年、初日からトラブル続出で、まともに走れたためしがなかったからだ。トロロッソと組む今年こそは、大丈夫なのではないか。そう思いつつも、一抹の不安は拭えない。
当事者のホンダも思いは同じだったのか、今年は例年以上に多くのスタッフがカタロニア・サーキットに集結し、万全の体制でテストに臨んだ。具体的な人数は教えてもらえなかったが、日本からの出張者とイギリス・ミルトンキーンズ駐在の技術者など、少なくとも20名は来ていたはずだ。
テスト初日。約10分遅れの午前9時10分から始まった合同テストで、真っ先にコースインしたのはトロロッソ・ホンダのブレンドン・ハートレーだった。インスタレーション走行を終え、各部のチェックの後、再び走行を開始。ホンダ製パワーユニット独特の、すこしくぐもった排気音は今年も変わらない。
ハートレーの周回数は順調に増え続け、昼過ぎには全10台中最多の72周を周回。さらに昼休み直前には、ソフトタイヤで1分22秒371の自己ベストを叩き出し、総合5番手で午前のセッションを終えた。
午後になると気温が急激に下がり、さらに小雨も降り始めたために、チームはこれ以上の走行は意味がないと判断。1時間以上前倒しで、切り上げることを決めた。ハートレーの周回数は93周。トロロッソとホンダの初仕事は、成功裏に終わった。
「コンディションが許せば、120周程度は走る予定でした」小雪がちらつき始めた午後9時半。チームミーティングの途中で抜け出した田辺豊治ホンダF1テクニカル・ディレクターの顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
「まずはできるだけ周回を稼いで、潰すべき問題を早期に潰していきたい」とテスト開始前に言っていた。それだけにコンディションの悪化にもかかわらずこれだけの距離を稼ぎ、しかもまったくのトラブルフリーだったことには、十分に満足しているようだった。
今季は年間3基という厳しい使用制限がかかる。しかし信頼性の話題ばかりが先行することは、田辺ディレクターの本意ではないようだ。
「信頼性重視でパワーを落としてやってると、いざパワーを上げた時に、われわれの方もあれってことが起きかねない。レースでの使い方を想定しながら、極端に信頼性へ振らないやり方をしてます」
信頼性とパフォーマンスを、いかに高いレベルで両立させるか。開発のカギを握るのはまさにその部分であり、先行するライバルたちに追いつくにはそこを突き詰めていくしかない。
2日目にはピエール・ガスリーがステアリングを握る。今週は不順な天候が続きそうだが、周回数さえしっかり稼げれば、4日間のテスト終了時にはトロロッソ・ホンダの今季のポテンシャルが、ある程度は見えてくるはずである。