トップへ

「夫婦別姓訴訟」3月に再び提訴へ…最高裁判決から2年「再度、判断求めたい」

2018年02月27日 18:12  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

選択的夫婦別姓を求める裁判が、新たに始まる。2015年12月に「夫婦同姓は合憲」とする最高裁判断が出されてから約2年。東京都や広島県在住の事実婚夫婦4組が3月、国や自治体を相手取り、別姓の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、賠償を求める訴訟を各地裁で起こす。


【関連記事:「選択的夫婦別姓」求めサイボウズ社長が提訴…2年前に「同姓合憲」判決、今回は戸籍法で勝負】


弁護団代表は、前回の夫婦別姓訴訟で最高裁まで戦った榊原富士子弁護士。原告の1人と弁護団は2月27日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見。前回の夫婦別姓訴訟では、夫婦同姓制度を定めた民法750条が憲法が保障する「婚姻の自由」を侵害していると訴えたが、今回はどのような主張を展開するのか。


●原告の事実婚30年夫婦は「21世紀には変わると思ったが…」と提訴

今回の訴訟で原告となるのは、いずれも事実婚をしている東京都内の夫婦3組と広島県内の夫婦1組。今回の会見に際し、もう事実婚をして30年になるという都内の夫婦からは、切実なコメントが寄せられた。


「私たち夫婦は事実婚をして30年になる大学教員です。30年前も、日本でも夫婦別姓について多くの議論がなされていました。2人ともにすでに論文を出していたので、姓を変えることは考えられませんでした。


どんなに遅くとも21世紀に入るまでは制度が変わると思っていましたが、実現せず今に至ってしまいました。これまで、別姓を認めていなかった国々でも改革が進み、日本のみになってしまいました。進展しないことは失われた30年そのもの。私たちは裁判に訴えることにしました」


また、会見に出席した、同じく都内在住の看護師の40代女性は、2001年に結婚式を挙げたが、夫婦がお互いの姓の変更を望まなかったという。夫婦の名前はそれぞれ、姓とのバランスも考えて、親がつけてくれた大事なものだとし、仕事でも「看護師など各種資格は戸籍名になるため、旧姓を使用することができません」と不便を訴えた。


女性は子どもを出産した際、事実婚では「婚外子」となってしまうため、一時的に婚姻届を出し、出産後に離婚届を出した。「事実婚の夫婦では、法的な権利が及ばないことが多々あります。これからの社会に必要な選択肢を考えて」と語った。


●今回の新主張は「夫婦別姓」を希望する人の「信条」を差別

では、今回の訴訟はどのように戦うのだろうか。ポイントは「夫婦別姓」を希望する人たちに対する差別があると指摘している点だ。


具体的には、憲法14条1項違反、憲法24条違反、国際人権条約違反があると主張する。まずは弁護団が「新主張」と説明する憲法14条1項違反だ。


【憲法14条第1項違反】


憲法14条1項は、「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めている。しかし、夫婦別姓の婚姻届が受理されないということは、「夫婦別姓を希望するという、夫婦としてのあり方及び生き方に関する自己決定に委ねられるべき事項」、つまり「信条」が差別されているという主張だ。


また、法律婚のみに与えられている法益権利や法的利益(例えば共同親権、相続権、税法上の優遇措置、不妊治療)が与えられない、夫婦であることの社会的承認も得られないなどの点でも、差別があるとする。


【判断のポイント】


「夫婦を同姓とすることに合理性があるか」ではなく、夫婦別姓を希望する人が現在の婚姻制度から排除されてしまうという観点を、弁護団は判断のポイントとして挙げている。


●2015年夫婦別姓訴訟の最高裁判断を問い直す

【憲法24条違反】


主張の2つ目は憲法24条違反だ。


2015年12月、最高裁大法廷は夫婦同姓は「合憲」という判断を示した。これに対し、弁護団は「非論理性」を主張して、改めて問い直す。婚姻について定めた憲法24条では、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とある。


しかし、弁護団によると、夫婦別姓を認めない現在の婚姻制度では、約96%が男性側の姓に改名していることから、「両性の実質平等が保たれてないことは明らか」とする。


【国際人権条約違反】


また、最高裁判決直後に閣議決定された第4次男女共同参画基本計画でも、「男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響が中立的な制度・慣行の構築が必要である」と明記されていることから、選択肢なき夫婦同姓の制度は「真っ先に見直さなければならない」と訴える。さらに3つ目の主張として、国際人権条約である自由権規約と女性差別撤廃条約に違反していると主張している。


●若い世代の5割以上が選択的夫婦別姓制度の導入を容認

2015年から約2年。少しずつ世論は動いている。内閣府が今年2月13日に発表した最新の世論調査では、選択的夫婦別姓制度導入を容認する人の割合は全世代で4割を超え、40歳未満では5割以上だった。


また、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏ら4人が1月9日、日本人同士の結婚で、夫婦別姓を選択できないことは憲法違反だとして、国に1人あたり55万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴。前回の夫婦別姓訴訟で争点となった民法ではなく、戸籍法上の問題を指摘して法廷闘争にのぞんでいる。


榊原弁護士は「前回の裁判の後、勉強を重ねてきた。再度、最高裁の判断を求めたい」と話している。



(弁護士ドットコムニュース)