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芳根京子の見事な顔芸もスイッチャーに 『海月姫』から感じる“テンポ感の良さ”のヒミツ

2018年02月27日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 第5話のラストでの鯉淵蔵之介(瀬戸康史)からのキスにつづき、先週の第6話のラストでは蔵之介の弟・修(工藤阿須加)からの告白。またしても大混乱に陥り、冒頭から怒涛の超早口長ゼリフで蔵之介に電話をかける倉下月海(芳根京子)の姿から始まった2月26日放送のフジテレビ系月9ドラマ『海月姫』第7話。そろそろドラマの終盤の展開をイメージさせる流れになりながらも、各キャラクターがその喜劇要素を高めるためのファイナルプレゼンテーションに入った予感だ。


参考:写真と振り返る『海月姫』第7話


 なかなか立退きに同意しない“尼~ず”の面々の前に、稲荷翔子(泉里香)が投入してきた最終兵器である“千絵子抄”(富山えり子)の母・千世子(富山えり子・二役)が登場。“尼~ず”の中で一番のまともキャラ“千絵子抄”だが、富山が一人二役で演じることで、他のメンバーに負けず劣らずの個性を発揮する。妙な間の取り方で古典的なギャグを演出し、蔵之介を突き飛ばすアクション千世子に、初めて和装以外の姿を披露する千絵子。


 ぶっ飛んだキャラクター付けがされない代わりに、一人二役という難役にトライした富山えり子。舞台女優としてキャリアを積んだ彼女は、2014年に放送されたドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)で、早押しクイズのプロフェッショナル・遠藤いずみを演じていたイメージが強い。共演俳優たちが相次いでブレイクを果たす同作の中で一足出遅れながらも、月9ドラマのキーパーソンという大役に抜擢され、他のキャラクターにはないシュールな笑いを作り出したのだから大金星ではないだろうか。


 もちろんシュールさでいえば鯉淵家の運転手・花森よしおを演じる要潤も負けてはいない。今週は久しぶりに彼のキャラが猛炸裂。突然懐から小学校のときの通知表を取り出したり、カメラ目線を繰り出す予想外の動きをしたと思えば、高級レストランでは13人を口説いた武勇伝を語り出そうとしはじめる。相変わらずのトーンのままこのドラマの笑いを生み出し続ける彼からは、最終的には芳根京子や泉里香、“尼~ず”の面々を差し置いて、本作のコメディーリリーフとしての役割を独占する勢いを感じるほどだ。


 さて、原作者・ 東村アキコもTwitterでお気に入りだと絶賛していた稲荷と佐々木公平(安井順平)の場面で、ついに稲荷が修への気持ちを認め、複雑な三角関係がより複雑な四角関係に発展。かと思えば、さらに賀来賢人演じる人気ブランドのCEOカイ・フィッシュの登場で、もう一角増える予感を漂わせる。そんな中、修は蔵之介の母に会いにミラノまで遠路はるばると出向く。今回の序盤で一番暴走していたはずの彼はいつのまにか鯉淵家の家族のドラマを回収しはじめていたのだ。このドラマのテンポ感の良さはこういう部分によく表れている。


 肝心のヒロイン芳根京子は、今週はいわゆる“顔芸”に徹したかのような、表情が中心となるコメディー演技だった。天水館を買い取るために3億必要だと聞かされたときの表情や、階段での修からのプロポーズに小さく頷くしかめっ面。デートの場面からの流れは秀逸で、水を吹き出してから裸眼で顔をしかめると、デザイン案を思いついた流れで覚醒モードへと切り替わる。そして布を染める場面での真面目な表情と、見事なスイッチを披露してくれた。(久保田和馬)