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ストレイテナーが示した楽曲への誇りとファンへの感謝 2018年幕開け飾った“マニアックライブ”

2018年02月25日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ストレイテナーが2月20日、新木場STUDIO COASTにて『テナモバ presents 「STRAIGHTENER MANIA」』を開催した。


(関連:ストレイテナー ホリエアツシ×秦 基博が語り合う、共作で生まれた“新たな物差し”


 2018年に結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えるストレイテナーの今年1発目のライブは、オフィシャルモバイルファンクラブサイト(テナモバ)会員限定ライブ。今回はメンバーそれぞれが演奏したい曲をプレゼンし合い、その中から「最低2年はライブでやっていない」という条件をクリアしている楽曲をセレクトしたのだという。その内容はまさに“ストレイテナーマニア”たちが狂喜乱舞するレア曲揃いのスペシャルなものとなった。


 1998年、ホリエアツシとナカヤマシンペイにより結成されたストレイテナーは、2003年にシングル『TRAVELING GARGOYLE』でメジャーデビュー。同年からバンドに参加したベースの日向秀和(正式加入は2004年)と、2008年にギターの大山純が正式加入し、以降はこの4人で活動を続けている。そのため、今年は現メンバーで迎える10周年というタイミングでもある。


 ストレイテナーはメジャーデビュー以降、シングルを21枚、フルアルバムを9枚、ミニアルバムを3枚リリース(2018年2月21日時点)。その他インディーズ盤、企画盤なども含めると相当な楽曲数を世に送り出してきたことになる。この日、そんなレパートリーの中から近年なかなか演奏機会に恵まれなかった“隠れた名曲”にたっぷりと光が当てられた。


 披露されたセットリストには、大きく括ると序盤に2000年代、中盤に2010年代、終盤に再び2000年代の楽曲が並んでいた。ホリエが「今日俺が一番やりたい曲なんだよ」と紹介していた「BLACK DYED」、日向がストレイテナーのNo.1ソングとして推していた「KINGMAKER」、披露前にナカヤマから一番やりたかった曲であると説明があった「LOST WORLD」など一部公演中に明らかにされたものもあるが、各メンバーがどの曲を選んだのか、それをなぜ選んだのかも興味深い(別途確認したところ、大山は「放物線」など近年の楽曲の中で演奏頻度の低いものを選んでいたそう)。


 また、今回、20年のキャリア上の楽曲がまんべんなく揃えられたことで、ストレイテナーというバンドが歩んできたサウンドの変遷にもふれることができた。「COLD SLEEP」や「Blue Sinks In Green」のように演奏のキメが多くBPM早めの曲、「Stilt」や「Dead Head Beat」のように海外インディーからの影響が感じられるグルーヴィーな曲、「STAINED ANDROID」や「氷の国の白夜」のような歪んだギターやスラップベースなどを用いたハードな印象のロックナンバー、「星の夢」のようなプログレさながらの展開によるスペーシーな曲……と実に様々だ。一方で、2000年代後期の楽曲である「AFTER THE CALM」や「LOVE RECORD」には近年のバンドの雰囲気に見られる温かな響きがあり、元来持ち合わせている要素であることを再認識する。ただ、トータルで見ると、やはり2000年代の楽曲にはバンドで音を鳴らす衝動が感じられるものが多くあった。メンバーたちも演奏の合間のMCにて「エモい曲が多い」というような感想を口々にしていたほどだ。しかし、いずれの曲にも通底してあるのはバンドの強固なグルーヴとホリエが歌うメロディラインの美しさだった。


 本編最後には、テナモバで事前にアンケートが行われていたリクエスト曲の1位「TRIBUTE」を、アンコールでは「CLARITY」と「BERSERKER TUNE」を演奏。特に「BERSERKER TUNE」ではこの日最大の盛り上がりを見せた。


 メジャーデビュー10周年のタイミングに開催された日本武道館公演では、投票を募ってセットリストを決めるという試みでファンとともに記念すべきライブを作り上げたストレイテナー。今回のライブにも日頃から応援してくれているファンにむけた感謝の思いが溢れていた。「普段やらない曲をやる」ということは、バンドにとって多くの準備期間を要するチャレンジングなことだ(ライブのリハーサル直前まで新曲のレコーディングも行っていたという)。しかし、そういったファンへの思い、そして自分たちが生み出した楽曲への誇りと愛着がレア曲披露という特別なライブを実現させたのだろう。往年の曲中心ではあったものの、過去を懐かしむというよりは前進するバンドの姿が映し出されていたライブだったようにも思う。


 4月11日にはアプリゲーム「デジモンリアライズ」主題歌「The Future is Now」を収録したシングルの発売、5月にはアルバムの発売とそれに伴うワンマンツアーの開催も発表された。「昔の曲は何を言ってるのかよくわからない歌詞もあった。でも何があっても貫こうぜってことを歌っていたと思う。何があっても貫いて今があります」とはライブ中のホリエの言葉。貫いてたどり着いた20周年、ますますストレイテナーへの期待が高まる。(久蔵千恵)