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かぼちゃの馬車、入居率振るわないのに書籍で「9割」と記載…責任追及の材料になる?

2018年02月25日 09:02  弁護士ドットコム

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大きな問題になっているシェアハウス投資「かぼちゃの馬車」をめぐって、一冊の本がクローズアップされている。


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「『家賃0円・空室有』でも儲かる不動産投資ーー脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル」という本だ。ダイヤモンド社から2016年8月に発売された。著者は大地則幸氏。「かぼちゃの馬車」を手がけるスマートデイズ(旧スマートライフ)の前社長だ。


朝日新聞の取材によれば、本の中にはシェアハウスの入居率が「9割」との記載があるが、大地氏は「書いてあるとすれば、それはライターのミス。僕は執筆していないから」と記者に答えたという。実際の入居率はそれとはほど遠いものだったとされる。


出版に際しては、ライターに書いてもらってその内容を確認した上で、自らの名前で出すことは珍しいことではない。今回、大地氏は内容を確認した上でライターに責任を押し付けているのか、それとも内容の確認をせずに出したのかはわからない。


ただ、本に書かれる内容を信じて、シェアハウス投資を決めた人もいるのではないか。例えば本には「空室が出たり、家賃滞納者が出たりというリスクを回避し、安定した家賃収入が保証されているのです」との記載が確認できるが、実際は、「見通しが甘かった」などとしてオーナーが得る家賃収入は一方的に減らされ、ゼロになった。


記載内容が事実と異なることがわかっていたら申し込みをしなかったという場合、民事上なんらかの請求をする余地はないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。


●一般論としては「自己責任」だが・・・

ーー記載内容を信じて被害を受けた場合でも自己責任となるのでしょうか


「はい。一般論としては、投資を勧める内容の書籍に書いてあることを信じて、ある投資をして損失を被ったとしても、それは投資した人の自己責任ということになるでしょう。刊行されている書籍でも、そこに書かれている情報の信頼性が玉石混淆であることは言うまでもありません。


どのような情報を信じて投資をするか、しないかは、まさに投資する人が自分の責任で判断すべき性質の事柄です」


●「僕は執筆していない」など言い逃れは通用しない

ーースマートデイズ前社長の著書の場合はいかがでしょうか


「本件については、シェアハウスを運営するスマートデイズ社の代表者(当時)自身が、同社のシェアハウスビジネスのビジネスモデルを解説した書籍ですので、同列には論じられないと思います」


ーーどういうことでしょうか


「つまり、『家賃0円・空室有でも儲かる不動産投資・・・』は、スマートデイズ社が運営するシェアハウスへの投資を考える潜在的顧客に対して、同社の代表者自身が、『入居女性に仕事を紹介し、企業からの仲介手数料を得ることで、家賃をゼロにしてもなお利益を生むモデル』などと、そのビジネスモデルの新規性や優位性を訴えかける内容になっています。


書籍の記載を信じたということのみを根拠に民事上の請求をすることはなかなか難しいとは思いますが、例えば、スマートデイズ社からの投資勧誘に説明義務違反等の違法性があったとして顧客が同社に訴訟を起こす場合には、同書に書かれているような説明や勧誘が当該顧客に対してもあったのだろうという推定が可能です」


ーー被害者が、スマートデイズによる説明義務違反等の違法性を裁判で訴える際に、補強材料のひとつになりうるということでしょうか


「はい。同書には、スマートデイズ社の運営するシェアハウスの入居率が『9割』との記載があるとのことです。実際の入居率との間でかなりの相違があったとすると、書籍でも潜在的顧客にそのような事実と異なる数字を用いてアピールをしているのだから、具体的顧客にも同様に事実と異なる数字を用いて投資を勧誘したのではと疑わせるといえます。


代表者が著者とされているわけですから、『ライターのミス』『僕は執筆していないから』などという言い逃れは通用しないでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、不動産関連、離婚・相続、労働事件・労災事件、企業法務、契約紛争、高齢者の財産管理、債務整理、刑事事件等を取り扱っている。事務所名 : たつき総合法律事務所
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com