世にガンダム作品は数あれど、ファンの数だけ推しはさまざまだ。一言でガンダムといっても、作品ごとにカラーは明確に異なっており、それぞれにコアなファンがいるものだ。
僕は「Z」と「G」が特にお気に入りだが、逆に嫌いな作品は何かと考えてみても、「Gセイバー」ぐらいしか浮かばないもので、概ね受け入れている。どんなガンダムも、大体通しで観ると愛着がわくし、面白く感じる部分もいっぱい見つかるものだ。(文:松本ミゾレ)
ことあるごとに「お前を、殺す」っていう主人公
TOKYO MXのアニメ枠「アニメの神様」内で、2月27日から「新機動戦記ガンダムW」の再放送がスタートする。
本作は1995年4月からテレビ朝日系で放映されていた、いわゆる宇宙世紀モノとは別の時間軸で繰り広げられる物語である。最大の特徴は、5人の美少年が登場し、それぞれに見せ場が用意されているという点だろう。
当然みんなガンダムに乗っていて、それぞれに微妙に主張や戦う目的などが異なっている。で、肝心の中身なんだけど、これが結構面白い。美少年たちはみんなキャラも確立されているし、最近のアニメにありがちな、描き分けが出来ておらず、人物がみんな親戚レベルで似ているなんてこともない。見た目が違うことが一発で分かるというのは、アニメを視聴し続ける上で結構大事な要素だ。
主人公のヒイロは無口な上に何かにつけ「お前を、殺す」っていうし、いつ見てもタンクトップで寒そう。お調子者デュオは「俺の姿を見た者は、みんな死んじまう」と、これまた物騒なことを宣言する。ヒイロと同じく無口なトロワは、スネオヘアーで強烈な個性を無言で主張する。
カトルというお坊ちゃまは体重が最軽量の41キロしかないシンデレラ体重の権化だ(ただし5人とも体重は40キロ台)。五飛という大陸系のイケメンは血気盛んで常に不機嫌。おまけに共同戦線がやや苦手と、皆それぞれにキャラ立ちしている。
ほかのサブキャラも個性的で、放映開始からたちまちに人気となった作品だ。再放送されるとは嬉しい限りである。
自爆し、暴走し、大量の無人機が登場する新時代のガンダム、その功績は大きい!
ところで「ガンダムW」といえば触れずにはおけないのが、自爆である。本作に登場するMSのいくつかには自爆機能が搭載されている。ヒイロは劇中でこの自爆スイッチを入れて実際に自爆してみせた(もちろん本人は生きていた)他、その後も事あるごとに自爆しようとする。
そのためガンダムファンの間では、本作は「自爆アニメ」と称されることもある。が、別にギャグでやっているわけではなく、自爆を検討する段階で必ず相応の理由は用意されている。
また、終盤ではゼロシステムというインターフェースを搭載した新型MSが登場するが、これが結構な曲者。パイロットの身体能力の限界を超えたスペックを発揮させるという優れた回路だが、その代償として肉体や精神にかなりの負担を強いてしまう。
その結果暴走し、敵味方問わず攻撃してしまうという最悪の事態を招くこともあった。ここまで苛烈な負担は、過去の作品では廃人寸前の強化人間ぐらいしか味わうものではなく、いずれの場合も最終的には機体もろとも破滅していた。流石に主要人物がゼロシステムを搭載したMSに乗ってもなんとか死は免れるが……。
極めつけは、無人の機動兵器MD(モビルドール)である。従来のガンダム作品では、ビットやファンネル、バグなどの武装としての側面が強い自律兵器以外は、たとえ廃人であろうと、ゾンビ化していようと、機体には原則パイロットが存在した。しかし本作では自律行動が可能な、完璧な無人のMSが登場するのだ。
見た目はMSだが、中身は全くの別物。放映当時小学生だった僕は驚きに似たものを感じたことを覚えている。
様々な新機軸を盛り込んで一つの物語に馴染ませた本作は、未だに新鮮な部分も数多く見受けられる。この機会だ。もし未見というのであれば、是非ともご覧いただきたい。