国会では、裁量労働制の対象職種拡大を巡り議論が繰り広げられている。先日は、厚労省が提出したデータに不備があったとして安倍晋三首相が発言を撤回したが、与党は、働き方改革関連法案を提出する姿勢は崩していない。
こうした状況に、「裁量労働制になったことで労働時間が短くなったり、休みが取れるようになった例は聞く限りない。データに不備があることも、間違っていたのに法案提出を進めることもおかしい」と疑問を投げかけるのが、裁量労働で働く人たちで作る労働組合「裁量労働制ユニオン」だ。執行委員の青木さんは裁量労働制の現状について
「相談に来る人の多くは、年収300万円前後。低い人だと250万円程度の、ワーキングプアレベルのケースもある。高収入な専門職だけが裁量労働で働いている訳では無い」
と明かす。
「裁量労働制を導入する企業の多くは、制度の適用条件を満たしていない」
ユニオンに寄せられる声で多いのは、長時間労働にまつわるものと、裁量労働制の適用範囲外で働かせられているという相談だ。
問題の原因にあるのは、経営者側の「人件費を減らしたい」という思惑だ。青木さんによると、社労士や人事コンサルが、人件費削減案として裁量労働制を提案し、経営者がそれを鵜呑みにする例が後を絶たないという。「裁量労働制にすれば残業代を支払わなくてよい」と解釈し、適用要件を満たしていなくても導入してしまう企業が多いそうだ。
裁量労働制は「専門業務型」と「企画業務型」の2つに分かれる。「専門業務型」は弁護士や研究開発職などの19職種に限られ、「企画業務型」は企画立案、調査分析、などを行う労働者が対象だ。しかし、実際には、研究開発という肩書を付けておきながら全く違う仕事をさせられる例もある。
「相談者からも、裁量労働制は残業代不払いの隠れ蓑になっている、制度自体がおかしいという声がよく聞かれます。裁量労働制のメリットとして、労働時間や仕事の進め方の自由度が挙げられますが、これは裁量労働にしなくても実現できます。早く帰宅することも、経営者が認めれば出来る事です」
「働きに見合った給料じゃない、おかしいと感じたら専門家に相談を」
中には、自分が裁量労働制で働かされていると知らされない労働者や、気づいていない労働者もいるという。青木さんは、「労働時間長くてしんどい、残業代が支払われない、働いた分に見合った給料じゃないなどの違和感を感じたら、組合や専門家に相談してほしい」と訴える。
「経営者に『あなたは裁量労働制だから』と言われても諦めないで欲しい。制度を使っていても、実態は裁量労働制の適用要件に合致していないという場合がほとんどです」
裁量労働制ユニオンは2月25日の15時から18時まで、同制度で働く人たちを対象に、無料の電話相談「裁量労働制・残業代不払いホットライン」を実施するとしている。