フル電動LMP1車両『プロジェクト424』の開発を進めるイギリスのペリン(Perrinn)は、2月19日に開発進捗とマシン仕様の一部を公開。動力源にはフォーミュラE用のモーター3基を搭載していることを明かした。
オープンソースのプロジェクトとして予てからスポーツカー耐久のプランを発表してきたイギリスのペリンは、活動実態をWEB上のオープンソース・ネットワークに置き、設計開発者集団として技術ソリューションを提供。過去にもプロトタイプ・カテゴリーの車両設計を幾度かアナウンスしており、この『プロジェクト424』と呼ばれるフルEVのLMP1は、2017年の10月にプロジェクトが公開されていた。
初出の仕様では、この電動LMP1は500kgのシャシーに600kgのEVパワートレーンを搭載。フロント250kW、リア400kWで総出力600kWのモーターを備え、車体中央部には400kgにもなる54kWhのバッテリーを搭載するとされていたが、先日明かされたマシン情報の一部によれば、その心臓部となるモーター供給に際し、電動シングルシーター選手権のフォーミュラEにパワートレーンを供給するサプライヤーと契約を結んだという。
そのマニュファクチャラー自体は未発表ながら、これにより『プロジェクト424』のマシンにはリヤに2基、フロントに1基のFE用モーターが搭載され、総出力は750kW、馬力換算で1000PS以上のアウトプットを得るに至った。
このプロジェクトの責任者であり、情報を公開したニコラ・ペリンによれば「我々はフォーミュラEに参戦するマニュファクチャラーの1社と供給契約を結び、2017/18年のシーズン4用パワートレーンを搭載することになったが、この事業計画が真に成功するまでその詳細を明かすことはできないんだ」と語った。
「現状、フォーミュラEではレギュレーションで200kWに出力制限が行われているが、コンポーネントとしてはそれ以上の余力を有していて、我々はそのキャパシティを活用し750kWの出力を実現した」とペリン。
活動の実態はWEB上のネットワークにありながら、その本拠としてイギリス・ヨークシャーにベースを置いたペリンは、すでに自前でのバッテリー製造を開始。汎用品となる既存のセル64個をパックとしたモジュール9本、400kgを車体中央下部に配置。インストールを床下から行う設計とした。
元ウイリアムズF1でデザイナーとして働き、レースエンジニアを務めた経歴も持つペリンは、この『プロジェクト424』を6カ月後にはシェイクダウンできると自信を見せており、現行のハイブリッド車両であるLMP1より約330kg重い1200kgの車両重量を有しながら、アベレージとしてLMP1とLMP2の中間程度のラップタイムを記録できるとしている。
FE用パワートレーンの供給と同時に明かされた一部の数値によれば、現状の算出値でも最高速は約355km/h、0-100km/h加速は2秒とされ、プロジェクトの目標としてさらなる電動技術の発展に貢献するテストベッドとしての機能を果たしたい、としている。
「当初、我々のタイムボードでは2018年のル・マン24時間にモックアップを展示し、遅くとも2019年のシーズンからマシンを走らせたいと考えていたが、哲学は同じながらバッテリーの統合を考慮してマシン全体を再設計した。もちろん、世界中のデザイナーや設計者の手によってね」とペリン。
「現行のLMP1-Hで許容されるバッテリーサイズより200mmほど長く、その重量は400kgになる。当初は交換作業を考慮してシャシーの裏側にバッテリーモジュールをボルト留めすることも考えたが、私たちはさらに優しい方法を思いついたんだ」
さらにペリン氏はバッテリー技術の進歩により、非接触充電などを活用してル・マン24時間でもバッテリー交換なしで走り切れる日が「この4~5年以内にもやってくる」と信じている。
「だからこそ、我々のプランとしてはバッテリー技術の進歩に合わせて、常にマシン設計・デザインの改善を進めていくことにある」
その『プロジェクト424』の初期テスト費用として、ペリンは200万ポンド(約3億円)の資金調達が必要だと試算しており、現在もプロジェクトの支援者を募っている。