医師の間に長時間労働が蔓延しているようだ。全国の勤務医が個人で加盟できる「医師ユニオン」は2月20日、「勤務医労働実態調査2017」の最終報告を発表した。
同ユニオンは昨年7~9月にアンケート調査を実施し、全国の医師1803人から回答を得た。その結果、時間外労働は平均で月61.8時間に上ることがわかった。
特に救急科では94.9時間、産婦人科では82.7時間と過労死ラインを超えている。労働基準法の原則の上限である月45時間以内に収まっているのは、42.8時間の眼科と37.2時間のリハビリテーション科のみだった。
約8割は当直明けでも「通常勤務」 休日少なく、先月の休み「0回」も1割
当直は月平均で2.3回だが、ただ待機しているだけという医師は少ない。34.5%は「通常勤務と変わらない」、47.2%は「通常よりは少ない」と回答しており、8割以上の医師が日当直で通常の業務も行っていることがわかった。
この日当直は、本来の業務を行わずに待機しているだけであれば、労働時間に算入されない。しかし通常の仕事を行っているのであれば、れっきとした時間外労働だ。にもかかわらず、日当直を勤務時間に見なしていない医療機関も多いという。
当直明けの勤務は「通常勤務」が78.7%、「半日勤務」が15.4%で、報告書では、
「当直を担う医師の多くは翌日も通常勤務となっており、30時間を超える連続勤務を担わされている」
と指摘している。
医師は休日も少ない。先月の休みが「0回」だった人は10.2%、「5回」未満の人は合計で47.3%に上っている。4週間で4日以上の休日を定めた労基法違反の状態に置かれた医師が半数近くいることになる。
「医師を増やして休日数の増加を」望む声多数
過労が原因で医療ミスが引き起こされることもあるようだ。医療過誤の原因としては「スタッフ同士のコミュニケーション不足」が57.7%でトップだったが、「慢性疲労による注意力不足」も56.4%に上っている。
特に当直明けの連続勤務だと、集中力や判断力が「大幅に低下」するという人が36.8%、「やや低下」が42.4%で、合わせて約8割もの医師が集中力の低下を感じている。その結果、診療上のミスが「通常よりやや増える」は54.2%、「相当多い」は13.5%となっている。医師の健康だけでなく、患者の安全が脅かされている可能性が高い。
働き方で改善してほしいこととしては、「完全な休日を増やす」(50%)、「当直・日直回数を減らす」(30.7%)、「通常の残業を減らす」(30.6%)の順に多かった。そのために有効な方法としては「医師数の増員」が63.7%でトップだった。
現在、働き方改革の一環で医師の労働時間規制が検討されており、過半数の51.6%が「賛成」している。しかし改革が行われても「ほとんど改善しない」と考える人が58.1%に上っている。理由として最も多かったのは「今の医師不足では、必要な診療体制を維持できない」(39.4%)だった。