2018年02月21日 10:42 弁護士ドットコム
超低金利が定着し、機関投資家としての運用益にばかり頼れなくなった生命保険各社。「入っておくと将来安心です。今のうちに是非」などと、必死に加入者を増やす営業を続けている。なかには「生命保険は控除の仕組みがあり、お得です」と税制上のメリットもしっかりおさえて営業トークを続ける社員もいるようだ。
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だが、ちょっと立ち止まって考えたい。「生命保険料控除」というものは、金額に上限があるということ。多額の保険料を払い込んでも、控除という観点では差が生まれないことがある。以下、制度の概要と仮のケースを通じてみていく。
まず、生命保険料控除とは、生命保険やがん保険などの保険料を支払っている人(契約者)が受けられる税制上の優遇措置だ。1月1日ー12月31日の1年間に支払った生命保険料の総額をもとに控除される額が計算され、結果として所得税や住民税が安くなる。
「結果として」というのがポイントで、会社員らは勤務先の年末調整で、自営業者らは確定申告での手続きが必要。保険会社が送ってくる「控除証明書」を使わないといけない。加入先の生命保険会社が手続きをしてくれるわけではないことに注意が必要だ。
国税庁によると、控除額は年間の支払い保険料に応じて4パターンにわかれる。一般の生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料のそれぞれの年間支払い保険料に応じて、所得税の場合は以下のように控除額が導き出される。3つの保険料区分を足し合わせた控除の上限は12万円だ。(2012年1月1日以降に締結した保険契約の場合)
(1)年間支払い保険料が2万円以下なら「全額を控除」
(2)2万円超、4万円以下なら「支払い保険料×1/2+1万円」
(3)4万円超、8万円以下なら「支払い保険料×1/4+2万円」
(4)8万円超なら「一律4万円」
ここで、仮のケースを用いて所得税の控除額を考えたい。東京都内の自営業男性は年間34万円の保険料を以下のとおり支払っているが、控除額は計8万円となる。
【加入保険】
A社の終身保険(年間保険料24万円)、B社のがん保険(同10万円)=計34万円
【控除額】
終身保険は12万円のため、上記(4)に該当し、控除額は4万円
がん保険は10万円のため、上記(4)に該当し、控除額は4万円
生命保険文化センターの調査(2015年9月)によると、生命保険(個人年金保険含む)の世帯年間払い込み保険料は、全生保の平均で38万5千円にのぼる。多くの家庭が多額の保険料を負担している様子がうかがえるが、「払っているわりには、税制のメリットがそこまでではない」と感じるのも無理はないだろう。
【監修】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
税理士・特定社会保険労務士・海事代理士・特定行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務・労務・法人設立まで幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 蝦名事務所
事務所URL: https://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)