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桂由美が迎賓館でショー開催、葛飾北斎の絵画からインスパイアされた新作を日本初公開

2018年02月20日 19:33  Fashionsnap.com

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(左から)「桜花に富士」「牡丹に蝶」「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をそれぞれモチーフにしたドレス、(右端)ゴッホ「ばら」をモチーフにしたドレス Image by: FASHIONSNAP
ユミカツラインターナショナルと同社の桂由美代表が2月20日、伝統工芸技術を活用して制作した着物やドレス約60点をフロアショー形式で公開した。迎賓館赤坂離宮を会場に、「BEYOND EAST & WEST(東洋と西洋を超えて)」というテーマのもと葛飾北斎の絵画をモチーフに採用し、パリで発表した最新コレクションをはじめとするドレスや着物が披露された。

 ショーの会場になったのは「羽衣の間」と「花鳥の間」で、5部構成で開催された。シーン1では江戸時代に活躍した尾形光琳や伊藤若冲、俵屋宗達らの作品からインスパイアされたドレスが登場し、今年1月にパリで発表した最新コレクションからは葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」「桜花に富士」「牡丹に蝶」などの絵画をモチーフにしたユミラインドレスやボリュームスリーブドレスなどを日本で初披露。また日仏文化交流の発展を願い、北斎から影響を大きく受けたモネやゴッホらの代表作も取り上げた。シーン2はアコヤ真珠を多用した新作をはじめとする婚礼向けのオートクチュールドレス、シーン3ではメンズブライダル「ユミカツラ・ムッシュ(Yumi Katsura Monsieur)」のステージを展開。シーン4には伊藤若冲の「老松孔雀図」をモチーフに孔雀の羽根をロングトレーンで表現した西陣織のドレスなど主役としての存在感を引き立てる作品が登場し、最後のシーン5ではパリコレクションで高評価を得たという鈴木其一の「藤花図」からインスパイアされたトレーンの打ち掛けをはじめとする和装スタイルが紹介された。
 今回の見どころの一つは、桂が日本初のブライダルファッションデザイナーとして53年にわたり仕事をする中で衰退していく日本の伝統技術の応用。「着物は衣服の中でも最もエレガントなものだと思っている」という桂は、友禅や西陣織、刺繍、染めなどの技術を洋装に取り入れることで存続に寄与したい考えで、ヨーロッパでは「YUMI YUZEN」としてファンが広まりつつあるなど手応えを感じているという。同氏のクリエイションを表現するのに適した場所として迎賓館赤坂離宮を選び、西洋と東洋の融和がショーだけではなく空間全体で体現された。同所でファッションのイベントが行われたのは今回が初めて。館内中央部にある「彩鸞の間」では京の名工 木戸源生による手描き友禅と刺繍工芸士の金艶による王朝刺繍の実演も行われた。
 桂はデザイナーとして活動をする上で「品格」「優雅」「ロマンチック」という3つのコンセプトを重視している。「現代はセクシーなルックが多いが、"秘すれば花"という言葉にもあるように"秘める"ことに日本人ならではの奥ゆかしさがあると思う」。自身としては西洋と東洋の融和ではなく"超える"ことで「別世界が生まれるのでは」と捉え、引き続き制作に邁進していくという。