インディカー・シリーズでは、一部はインディ500のみ参戦を続けているが過去5年ほどの間にパンサー・レーシング、KVSHレーシング、サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング、ドラゴン・レーシング、ドレイヤー&レインボールド・レーシングがシリーズから姿を消した。
しかし、2018年のベライゾン・インディカー・シリーズには新たにフルシーズン・エントリーを行うチームが現れた。シリーズに定着し、長く参戦を続けてくれることを期待したい。
最初に紹介するのは、ハーディング・レーシング。インディアナポリスのビジネスマン、マイク・ハーディングがオーナーで、昨年インディ500を含む3レースに出場。当初の計画通りに今年からフルシーズンを戦う。ドライバーは昨年同様にギャビー・チャベスを起用する。エンジンも昨年と同じくシボレーだ。
チームプレジデントには元インディカー競技長のブライアン・バーンハートが今年から就任。二度のインディ500優勝を誇るアル・アンサーJr.がドライバーコーチ兼エグゼクティブコンサルタントを務め、多くのチームで指揮をとって来たラリー・カリーがチームマネジャーという体制を敷いている。エンジニアは一昨年AJフォイト・レーシングで佐藤琢磨と組んでいたマット・カリー。チーム・マネジャーのラリーは彼の父親だ。
2014年インディライツ・チャンピオンのチャベスは24歳だが、スピードと安定感を兼ね備えている。2015年にインディカーへステップアップ(ブライアン・ハータ・オートスポート)するやインディ500とシリーズ両方でルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。
2017年は3回目の出場だったインディ500で9位(インディでの自己ベスト)、テキサスで5位フィニッシュ(シリーズでの自己ベスト)を記録した。今回のオープンテストでチャベスは20番手だった。
次はヨーロッパの名門チーム、カーリン。佐藤琢磨をイギリスF3チャンピオンに就けたチームは2015年にインディライツへの参戦を開始し、2016年にはエド・ジョーンズをチャンピオンの座に就けた。アメリカでの活動4年目となる今年、トレバー・カーリンが取り仕切るチームはインディカーへとステップアップ。エンジンはこちらもシボレーだ。
エアロが一新されることで、全チームが同じスタートラインに着くタイミングがチャンスと見たカーリンは、ミドルフォーミュラで実績を積んできたチームらしくインディカー初年度から2カー体制を敷く。
ドライバーは昨年までチップ・ガナッシ・レーシング・チームズで走っていたマックス・チルトンとチャーリー・キンボールのふたり。彼らはいずれもカーリン卒業生だ。
インディアナポリスから遠く離れたフロリダ州にベースを置くこととしたチームは、アメリカのトップカテゴリーで成功を収めることができるだろうか? フェニックスでのテストではキンボールが18番手、チルトンが19番手のタイムをマークした。
3チーム目は2009年から下位フォーミュラで活動してきたユンコス・レーシング。カーリン同様にインディライツからステップアップ。アルゼンチン出身のリカルド・ユンコス率いるチームは昨年インディライツとプロ・マツダのダブルタイトルを獲得。
インディライツチャンピオンとなったカイル・カイザーとともにインディカーへの本格挑戦を開始する。彼らは昨年、すでにインディカーデビューは済ませている。インディ500にスペンサー・ピゴットとセバスチャン・サーべドラをドライバーとして2台のシボレー搭載マシンをエントリーしたのだ。
現時点でカイザーが出場できるのは4レースだけ。残る13戦のうちの4レースにはGP2で走っていたオーストリアのルネ・ビンダーが出場することになっているが、それでもまだ9戦は出場予定が立っていない。フェニックスでのオープンテストは2日間だったが、カイザーはルーキーテストを前日にクリアし、テストは1日のみの走行。順位は最下位の23番手だった。
オープンテストでは苦戦した3チームだが、インディカーに新しい風を吹かすことができるのだろうか?