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モーニング娘。は現在進行形の物語だーー愛と敬意が詰まった『二十歳のモーニング娘。』を分析

2018年02月19日 20:02  リアルサウンド

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 2017年、結成から20周年を迎えたモーニング娘。。2月7日、同グループのメジャーデビュー20周年を記念するミニアルバム『二十歳のモーニング娘。』が発売された。モーニング娘。は2014年以降、名前に西暦の下二桁を加えた名称で毎年活動してきた(現在の正式名称はモーニング娘。’18)が、このアルバムはモーニング娘。20thという特別名義でのリリース。現在のモーニング娘。’18メンバー13名に加え、初期メンバーと歴代のリーダーを務めた卒業メンバーが共演を果たした一枚だ。


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 本作は、発売初週に4.8万枚を売り上げ、2月19日付のオリコンチャートで週間ランキング1位を記録。モーニング娘。のアルバムがオリコンの週間ランキングで1位を獲得したのは、2003年発売の5作目『No.5』以来、実に14年11カ月振りとなった。


 1997年、『ASAYAN』(テレビ東京系)内で放映された「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の最終選考落選者5人で結成。彼女たちは「モーニング娘。」と名付けられ、同年11月にインディーズシングル『愛の種』を発売。全国5都市で同シングルの手売り販売を行うキャンペーンで目標売上5万枚を達成したことから、翌98年1月28日にシングル『モーニングコーヒー』でメジャーデビューを果たした。


 その後、3rdシングル『抱いてHOLD ON ME!』がオリコンチャート週間ランキングでグループ初の1位を獲得。1999年から人気はさらに拡大し、累計164万枚の売り上げを記録した7thシングル『LOVEマシーン』の大ヒットによって、モーニング娘。はグループ本体のみならず、派生ユニットでも数々のヒット曲を生み出す国民的アイドルグループとなっていった。


 結成から現在まで、モーニング娘。に参加したメンバーは総勢41人。モーニング娘。単体だけで数えても、これまでにリリースした作品はシングル65枚、オリジナルアルバム15枚に上る。


 卒業と加入を繰り返して、新しいメンバーが名前と楽曲を受け継いでいくというスタイルは、今でこそ多くのアイドルグループでごく一般的なものになっているが、当時のグループの在り方としては画期的だった。その結果、人気の浮き沈みや音楽性の変遷こそあったものの、モーニング娘。は20年もの間、熱狂的なファンに愛され続けてきたのだ。


 このたびリリースされた『二十歳のモーニング娘。』は、初期の5人から現在の13人に至るまで、少女たちが繋いできた20年の歴史を祝うに相応しい全8曲を収録。先行して配信された「五線譜のたすき」をはじめ、初期と現在のメンバーが共演する初期楽曲のカバーから、モーニング娘。’18の最新楽曲、モーニング娘。ファンとしてもよく知られる有名アーティストによる提供曲まで、娘。への愛と敬意が詰まったミニアルバムとなっている。


 最初と最後を飾るのは、彼女たちのメジャーデビュー曲「モーニングコーヒー」とインディーズデビュー曲「愛の種」。モーニング娘。20thとして一期メンバー5人と現メンバー13人の計18名が参加している。楽曲名には「20th Anniversary Ver.」と添えられ、当時の爽やかな曲調から音数を増し、BPMを上げることでより現代的なアレンジへとアップデートされている。


 2曲目の「WE ARE LEADERS! ~リーダーってのもつらいもの~」は、前山田健一の作詞作曲の下、歴代リーダー10人が代わるがわるボーカルを務める一曲。モーニング娘。ならびにつんく♂からの影響をかねてから公言している前山田健一らしく、モーニング娘。のメンバー紹介楽曲として知られる「女子かしまし物語」の手法を雛型にしたユーモラスな曲に仕上げている。それぞれのリーダーの個性と経歴をイジったり引用したりする歌詞からは、20年を支えてきたリーダー達への敬意が伝わってくるようだ。


 また、特に道重さゆみの大ファンとして知られる大森靖子が作詞作曲した「ENDLESS HOME」は、現役メンバーの譜久村聖と小田さくらをコーラスに迎え、初期の代表的メンバーである安倍なつみがメインを歌う。大森靖子は、過去にハロー!プロジェクト所属の℃-uteに提供した「夢幻クライマックス」でも、メンバーの名前を歌詞に入れ込む手法を使っていたが、この曲では「愛の種」「ふるさと」といったモーニング娘。初期の楽曲名を歌詞に引用。その上で、多くの卒業メンバーがいまや母親となっている現在の状況に思いを馳せている。


 デビュー当時からのファンにとってたまらないのは、インディーズデビュー曲の「愛の種」と同じく、サエキけんぞうが作詞、桜井鉄太郎が作曲を担当した「タネはツバサ(Wings of the Seed)」だろう。この楽曲は、初期メンバー5人による20年越しの新曲。その歌詞や曲調も、彼女たちがまいた種が芽吹いていった20年後の未来からの、「愛の種」へのアンサーソングと言うべきものとなっている。


 本作には、それらの20周年特別仕様の楽曲のみならず、つんく♂作詞作曲によるモーニング娘。’18の純粋な新曲2曲も収録されている。ムーディなダンス歌謡に今を生きる少女たちへのメッセージが乗る「花が咲く 太陽浴びて」と、淡い恋の感情と夏祭りの情景を親しみやすくユーモラスに描いた「お天気の日のお祭り」。タイプは違えど、どちらもつんく♂節が堪能できる楽曲だ。この2曲はいい意味で20周年を感じさせない曲調となっており、これから先の未来を見据えて今この瞬間を生きる、現在進行形のモーニング娘。を伝えている。


 20年間、紆余曲折を経ながら五線譜のたすきを繋いできたモーニング娘。。常に移り変わっていくメンバー構成ゆえに、その歴史には、同じ瞬間は一度も存在しない。彼女たちは今も、瞬間瞬間を懸命に生きている。一方で、その積み重ねが歴史となり、歌として、作品として受け継がれてきた。この物語は、まだ現在進行形で未来へと繋がっている。(青山晃大)