これまでTCRインターナショナル・シリーズにレパード・レーシングとして参戦してきたチームWRTが、新設のWTCRワールド・ツーリングカー・カップへの参戦を発表。この参入を機にアウディスポーツ陣営へとスイッチし『アウディRS3 LMS』を走らせると同時に、TCR王者のジャン-カール・ベルネイに加え、3度のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権王者であるゴードン・シェドンを起用する。
これまでの2年間はTCRインターナショナルにフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRで参戦し、デビューイヤーの2016年にはステファノ・コミニが王座を獲得してきたチームWRT。
続く17年シーズンはロブ・ハフやシェドンといった世界的ツーリングカー・スターを助っ人起用し、そのサポートを受けたベルネイとともに2度目のタイトルを獲得するなど、TCR最高峰で連覇を果たしたチームが正式にWTCRへのエントリーを表明した。
もともとブランパン耐久など、GT3を使用するカテゴリーでアウディスポーツとの太いパイプを持っていたベルギーを拠点とするチームWRTだけに、これで名実ともにアウディのトップカスタマー待遇で新たなツーリングカー選手権に挑むことになる。
その強豪チームに迎え入れられたBTCCスターのシェドンは、2017年最終戦ドバイでレパード・レーシングのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRでTCRマシンを初体験し、デビュー戦ながらポールポジション、初表彰台を獲得するなどチームメイトの初戴冠に向け獅子奮迅の活躍を演じた。
そのシェドンは、この新たなプログラムへの参加に向け12年にわたって参戦してきたBTCCを離れることに「カルチャーショックを受けることになるかもしれない」と語った。
「僕にとってBTCCのパドックは“セカンド・ホーム”のようなもので、WTCRのパドックの仕組みや空気を学ぶことはとても興味深い経験になるだろう」とシェドン。
「4月にブランズハッチではなく、マラケシュにいるのは確かに大きく違うように感じる。でも、その週末に自宅のソファに座って“僕のマシン”がBTCCでレースしているのを見るのも奇妙な感覚になると思うから、こうして世界的なレースを戦えるのは光栄なことだ」
また、長年にわたりホンダのドライバーを務めてきたシェドンにとって、アウディスポーツのようなモータースポーツで長い歴史と戦績を重ねてきたメーカーのマシンをドライブすることにも興奮しているという。
「アウディはとくにツーリングカーで偉大な歴史を持っている。覚えているのは(フランク・)ビエラのA4クワトロが戦っていた頃のノックヒル戦での鮮烈な走りだ。また彼らは世界中でエキサイティングなGTプログラムを有してもいる」とシェドン。
「実はいくつかのメーカーと何回か話し合いの機会を持ったけど、そのときはBTCCを去るなんて考えてもいなかったし、アウディとも話はしていたけど、そんなにシリアスなものではなかった。それが1月のオートスポーツ・インターナショナル・ショー(ASI)の数日間で一気に現実味が増し、そのちょうど数日後にはドイツに渡って、翌週の火曜までにはアウディスポーツとの契約をまとめていたんだ」
WTCC世界ツーリングカー選手権に引き続きWTCRを統括するユーロスポーツ・イベントにより、新シーズンに向けた数々のアナウンスが続くなか、そのワールドカップ初年度のグリッド上にはガブリエル・タルキーニ、ロブ・ハフ、イバン・ミューラー、テッド・ビョーク、ノルベルト・ミケリス、ティアゴ・モンテイロら、元チャンピオン獲得経験者を中心に世界的なツーリングカー・ドライバーが集っている。
またチームWRTと同じくアウディRS3 LMSを投入するコム・トゥ・ユー・レーシングは、すでに発表済みのデニス・デュポン、オーレリアン・パニスに加えて、ナサニエル・バートンとフレデリック・バービッシュの2名を加えた4台体制となることも発表され、今後もフルグリッド26台のリストが徐々に明かされる予定となっている。
「そう、このシリーズは最後まで戦いが続くことになるだろうね」と、既報のエントリーリストを眺めつつ語るシェドン。
「レーシングドライバーとして、僕らは皆誰もが可能な限りレベルの高い“遊び場”で競争したいと願っている。それこそがレース最大の魅力なんだ」
「ルールや条件が変化する際に挑戦するのは悪いことじゃない。もちろん、TC1に対して(TCR規定マシンが)なんら劣るところもない。マシンバラエティはあれど、勝てるマシンはほんの一握りだ」
「壮大な戦いが繰り返され、フィールド全体が素晴らしいショーと化すだろう。実力のあるチーム、優秀なマニュファクチャラーが多数揃い、ツーリングカー・レースに必要なすべてがそこにある。エキサイティングなシーズンになるのは間違いなさそうだ」