トップへ

競馬場やウインズ「依存症」対策で希望者に「退場のお声がけ」、本当にやってるの?

2018年02月19日 10:52  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「ご来場時に退場を促すお声掛けをご希望のお客様は、インフォメーションへお申し出ください」


【関連記事:「田中の対応最悪」社員名指しの「お客様の声」、そのまま社内に貼りだし公開処刑】


2017年4月からJRA(日本中央競馬会)の競馬場やウインズ(場外馬券場)に、こんな文言のポスターが貼られるようになった。ギャンブル依存症に対する取り組みだ。


しかし、「ご来場時に退場を促す」と言っても、主要競馬場には1日万単位の人が訪れる。ウインズだって、G1にもなれば大混雑。そんな中、どうやって実行するのだろうか。そもそも問い合わせはあるのか。JRAに運用を聞いた。


●2017年の対象者は1人、問い合わせ24件…2018年中に家族申告も可能へ

JRAはギャンブル依存症への取り組みを強化している。2017年10月には当人、12月からは家族からの申告で、インターネットでの馬券販売(PAT)を停止する制度が始まった(https://www.bengo4.com/c_1009/n_7251/)。


これに対し、現地での取り組みが、冒頭のポスターと見回りによる対応だ。JRAによると、希望者には顔写真つきの申請書を提出してもらうそうだ。現在は、本人申請のみで、2018年秋ごろまでに家族からの申請にも対応したい考え。


実績としては、2017年中に受理されたのは1人のみ。ただし、電話窓口には本人や家族からの問い合わせ・相談が24件寄せられたという。


●個人情報へ配慮、限られた職員で共有

申請者の情報は、競馬場・ウインズの関係者などで共有する。悩ましいのは、個人情報の問題だという。


「ギャンブル依存症であるというのは、極めてデリケートな問題。警備の都合上、人数などの具体的な体制については答えられないが、警備を担当するJRAの正規職員の中で氏名や顔写真を共有している」(JRA報道室)


現在の対象者は1人。来るか来ないかも分からない相手に、どれだけの体制をとるのかという難しさもある。「ルートは限られているので、入場ゲートは特に力を入れる。個人情報に配慮しながら、最適な形を模索していきたい」


別の職員は、「自分がギャンブル依存症だと告白するのは勇気がいる。家族に打ち明けることにもなるだろうし、そういう面での抑止効果もあるのではないか」とも話していた。


●地方競馬でも同様の取り組み

JRAと同じ農林水産省が監督する地方競馬でも、JRAと同じ施策が進行中だ。NAR(地方競馬全国協会)によると、場内での声がけは2017年度から実施。JRA同様、こちらも2017年に1人から申し出があったという。


「依存症の相談があれば、各自治体の窓口を紹介しています。そこで解決してしまうことが多いようで、声掛け希望にまではあまり至らないようです」(NAR担当者)


一方、ネット投票については、問い合わせが一定数来ているようだ。地方競馬では、2017年11月に本人申告でのアカウント凍結を開始。2018年4月からは家族申告でも凍結を可能にする予定だという。


取り組みの背景には、政府方針が関係している。政府は、2016年12月のカジノ法(IR推進法)の成立以降、閣僚会議で依存症問題について検討。議員立法による「ギャンブル依存症対策基本法案」も国会に提出されている。


(弁護士ドットコムニュース)