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HOWL BE QUIETは次なるフェーズへと歩み始めた 『Dousite? TOUR』で再確認した本質

2018年02月19日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 HOWL BE QUIETが、昨年12月20日千葉LOOKを皮切りに関東近郊8カ所をまわったツアー『Dousite? TOUR 2017~2018』。追加公演では名古屋CLUB QUATTRO、梅田CLUB QUATTROを巡り、2月10日渋谷CLUB QUATTROにてファイナルを迎えた。


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 HOWL BE QUIETはメジャーデビューを機に、毎作品/ツアーごとに新たなスタイルに挑戦し続けてきた。メジャー1stシングル曲「MONSTER WORLD」では鮮やかなビジュアルイメージとデジタルサウンドを大胆に打ち出し、いわゆる“ロックバンド”のイメージを大きく覆すことに成功。ライブでもその世界観を表現すべく、竹縄航太(Vo/Gt/Pf)がハンドマイクで縦横無尽にステージを動き回ったり、レーザーを用いた演出を取り入れるなど、視覚的な趣向を施していった。そういった意欲的な活動を重ねた結果、1stフルアルバム『Mr.HOLIC』(2017年5月発売)はエレクトロサウンド全開のダンサブルな曲から歌心溢れるバラードまで充実したポップソングが並ぶ作品となった。


 そして行われたアルバムリリースツアー『Mr. HOLIC ~僕が虫で、君が男でも恋したいのです~ TOUR』。ここでまた、バンドの雰囲気は一変する。演奏も演出もそれまでと比べるとシンプルに構成され、楽曲そのものを届けることに重点を置いたスタイルでのライブが展開されたのだ。その後に行われた今回の『Dousite? TOUR』もその流れを汲んだものとなっており、1曲目の「Dousite」から打ち込みのビートなど同期音も一切なし、竹縄はピアノとともに中央に位置付き、メンバー4人が鳴らす音のみで全曲が披露された。


 「4年前のツアーの頃を思い出すために」と黒木健志(Gt)はライブ中のMCで本ツアーの開催経緯について語った。4年前といえば、インディーズ時代の代表曲の一つ「GOOD BYE」を発表した後くらいの時期だ。彼らは『Mr.HOLIC』という作品を作り上げたことで「カテゴライズできない存在でありたい」という姿勢を示すフェーズを終え、当時のようにまっさらな状態でHOWL BE QUIETの音楽と向き合う境地にたどり着いたということなのだろう。そしてまたここで、改めてバンドの本質を再確認するためのツアーだったのかもしれない。


 この日のライブは16曲中7曲が新曲。気持ちを新たに前進しようとするバンドの意志が伝わるようなセットリストだった。なかでも今までありそうでなかったジャジーなテイストにのせて、恋愛の喪失感を食卓の変化で表現した曲が印象深い。それ以外の新曲も様々な曲調にのせて少し情けない男性像やノスタルジーが歌われ、“帰る”ということも一つ重要なテーマになっていたように感じた。また、「PERFECT LOSER」「ギブアンドテイク」などオリジナルではデジタル音を用いた楽曲は黒木、橋本佳紀(Ba)、岩野亨(Dr)の厚みのある演奏とコーラス、竹縄のピアノによりドラマチックに彩られ、「レジスタンス」などではオーディエンスの歌声と手拍子が加わり、新鮮な華やかさが生まれていた。もちろん音数が絞られたことでピアノの音色の存在感やバンドのグルーヴをより感じることができ、持ち味であるグッドメロディ、竹縄の歌う言葉も引き立っていた。逆を言えば、それらの要素が根底にある限り、どんなスタイルであろうとも、HOWL BE QUIETの音楽であることに変わりはないということでもある。その時々に“曲が求めているものを全部やる”という部分は、個人的にはこれからも変わらずにあり続けてほしいと願う。


 ここ2年ほどの活動を経て、新たな一歩を踏み出そうとする彼らを目の前にアンコールで歌われたラブソング「にたものどうし」を聞くと、不思議と今のバンドの姿にも重なって聞こえた。このツアーで得たものが今後の作品にどう反映されていくのか、HOWL BE QUIETの“リスタート”をしかと見届けたい。(久蔵千恵)