長く連絡をとっていなかった古い友人から、唐突に電話やメールなりをもらうと、「懐かしいなあ」と思う前に、ある懸念が出て来る。それが「あれ? 選挙の時期か?」と「さてはマルチか?」の2つである。そして悲しいことに、どちらもそこそこ経験してきた。
セピア色の友情を、フルカラーの汚い現実が無思慮に覆い尽くしてしまうあの瞬間。僕の気持ちはとっても暗くなる。(文:松本ミゾレ)
「正直今まで友人だと思っていたのに、勧誘をされショックです」
先日、ガールズちゃんねるで「友達、身内にマルチ勧誘された方!!」というトピックを目にした。
投稿者は先日、今まで仲が良いと思っていた友人に、マルチの勧誘を受けてしまったという。35万円もする美顔器をいきなり購入しないか、と持ちかけられたそうだ。よくある話だが、購入するとその友人にもいくらかのバックがあるという。
「お金はないよ」と断ったが、この友人は結構しつこかったようで、「あなたの幸せのために言ってるの」と必死で食い下がってきたのだとか。「正直今まで友人だと思っていたのに、勧誘をされショックです」と書き込んでいる。おお、嫌だ嫌だ。見ていられない……と言いたいが、この手の話、もっと見たい。
「なぜか一本二万の水を勧められた。当然縁は切り、水も買わなかった」
ではここから、実際に親しい人物からマルチの勧誘を受けて、ガッカリしてしまった人々の声を、いくつか一緒に見ていこう。
「同窓会行ったらマルチの会場と化した事ならあるw クラスで人気の美人な子が勧めだして、とりまきや男子はウンウンと話聞いてた」
「久しぶりに『会おう』といわれ会うと、知らない人(先輩らしい)ときた。『本当の友達いる?』とか、『いまのままで本当にいいの?』とか二時間くらい話され、なぜか一本二万の水を勧められた。当然縁は切り、水も買わなかった」
他人の不幸話コレクターとしては、そこそこ満足できる質のネタがいくつもあって、どれを紹介しようかつい悩んでしまった。しかしどうだろうか。どれも結構気合いの入った嫌な思い出話ばかりではないか。
それにしても、マルチなりカルトなり、勧誘している連中の顔というのは、どうしてああも薄っぺらいんだろう。キャッチセールスもそうだけど、まず笑顔が明らかに下手で、必死感が隠し切れていなかったり、セールストークも通り一遍なものだから、マニュアル通りの話しかできない。
何より全く幸せそうにも見えないし、金も持ってなさそうだ。場合によっては金持ちの先輩役と目される他人が話に割り込んでくるケースもあるが、結局スーツだけは高級品なのに、時計や靴が安物だったりするから、すぐに底が知れる。
虚栄を前面に押し出してどうにか金を引き出そうとする、あさましい素人営業。こんなのを過去の友人がやっているなんて知ったら、もう泣くに泣けないというやつだ。21世紀の今になってまだマルチなんかやってる奴は馬鹿で、友人知人全員から蔑まれるだけの、実に恥ずかしい存在でしかない。