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ラストアイドルファミリー、初コンサートで示した“プロデューサーの集合体”としての強みと可能性

2018年02月17日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2月14日、Zepp Tokyoにて『ラストアイドルファミリーファーストコンサート』が開催された。


(関連:ラストアイドル「バンドワゴン」が表現する信念とアイデンティティ デビューまでの歩みを振り返る


 ラストアイドルは、2017年8月よりスタートした秋元康総合プロデュースによるアイドルオーディション番組『ラストアイドル』(テレビ朝日系)から生まれたユニット。昨年8月からスタートした1stシーズンでは、「プロアマ問わず、兼任可能」「1対1のパフォーマンスバトル」というルールのもと、確定メンバーとして勝ち残った7名がラストアイドルとしてデビュー。バトルの挑戦者を中心としたセカンドユニットには、Good Tears、シュークリームロケッツ、Someday Somewhere、Love Cocchiの4組が誕生。兼任メンバーを含めた総勢25名がラストアイドルファミリーとなった。1月より始動した2ndシーズンでは、それぞれ5組のユニットに対して小室哲哉、織田哲郎、指原莉乃、つんく♂、秋元康のプロデューサーが就任し、総当たりバトルで勝ち残ったユニットが2ndシングルの表題曲として楽曲を歌うことができる。2ndシーズンの真っ只中に開催された今回の初ワンマンライブは、ラストアイドルファミリーのほかに、兼任するグループの登場、ラストアイドルメンバーのソロコーナーなど充実した2時間に。番組スタートから半年。他のグループにはない“プロデューサーの集合体”としての強み、ファミリーとしての可能性を感じさせたコンサートであった。


 コンサートは、「1stシーズンの楽曲披露」「ソロコーナー」「兼任ユニットコーナー」「2ndシーズンの楽曲披露」のブロックに分けられて進行していった。アンコールを含めて、計31曲。ほぼ1曲毎にステージを入れ替えていく構成は、めまぐるしく、それでいて密度の濃いコンサートである。中でも特筆すべきは、ライブ終盤の2ndシーズンブロックだ。各ユニットは、プロデューサーと関係のある楽曲と2ndシングルの楽曲を披露していく。


 織田哲郎がプロデュースするGood Tearsは、相川七瀬「夢見る少女じゃいられない」を披露後、グループの新曲「スリル」をパフォーマンス。織田は、「夢見る少女じゃいられない」にも通ずるかっこよさを前面に押し出した、シリアスかつクールな楽曲「スリル」をグループに提供した。難易度の高いダンスから小悪魔セクシーへと路線変更を経て、現在に至っている。Good Tearsはグループの一番手として、攻めのスタイルで会場を一気に盛り上げていった。


 打って変わって、可愛らしさが特徴の秋元康プロデュース、シュークリームロケッツがステージに登場。秋元は、可愛らしさはそのままに、新たに英語ではくしょんを意味する「Achoo」を大胆にテーマに取り入れた「君のAchoo!」を提供した。振り付けは、ラストアイドルの楽曲「バンドワゴン」を手がけたCRE8BOYが担当。イノセンスを感じさせる歌詞と、メロの繋ぎにメンバーがくしゃみをするというパート、振り付けにも用いているハンカチでカメラを拭くといったユニークな演出から、斜め上をいく秋元の発想力を感じさせる。


 HKT48「メロンジュース」で勢い良くステージに現れたのは、指原莉乃プロデュースのSomeday Somewhereだ。間島和奏をセンターに清楚さを感じさせていたグループだったが、指原のプロデュースで王道アイドル路線へと変更に。間島の歌唱力に加え、清原梨央の愛らしさを加えたダブルセンターで「この恋はトランジット」を完成させた。「王道アイドルソング」というテーマは、指原がプロデュースする=LOVEにも共通する部分。指原は、=LOVEと同様の振付師を迎え、短いスカート衣装にも挑戦させた。前作「Again & Again」とは違った元気な6人のパフォーマンスがステージに映える。


 モーニング娘。「ザ☆ピ~ス!」をバックに登場したのは、つんく♂プロデュースのLove Cocchi。「私とあなた」という歌手としての心構え、歌詞の意味を伝える大切さをつんく♂からしっかりと学んだ彼女たちは、彼の思い描くグループのテーマ「春高バレーのベスト8に出場できる学校の選手がしているような髪型」に近づけるためにショートカットへとイメージチェンジ。歌の技術、ビジュアルに関しても、人一倍厳しく指導を受けた状態でステージに上がっている。ハロプロの楽曲を多く手がける木下菜津子の振り付けも相まってか、Love Cocchiの「青春シンフォニー」からは、どこか“ハロプロイズム”を感じずにはいられない。放送の中では、表情の作り方や歌詞に対しての一人ひとりの主張を指摘させられる場面があったが、Zeppのステージでは裸足にて笑顔で誇らしげにパフォーマンスする5人がいた。


 トリを飾るラストアイドルを手がける小室哲哉は、「風よ吹け!」で見事グループのイメージを一変させた。「スクールガール」をコンセプトにした衣装と、「マーチング」「楽器」のテーマをポイントにした楽曲は、アイドルソングとしてはかなり風変わりだ。楽曲中には、アンテナに手をかざすことで音を奏でる楽器「テルミン」を、メンバーの吉崎綾が演奏しサビに突入していく。この日がファンの前では初めての披露であったが、<歩いてみよう/よ>など歌詞の合間合間にコールを入れやすい要素が詰まっていることにハッとさせられる。前作の「バンドワゴン」とは、大きく方向転換をしながらも、ラストアイドルのイメージを崩すことなく、小室哲哉の手によって新たな要素が加えられている。


 秋元康プロデュースから5人のプロデュースへと生まれ変わった2ndシーズンのラストアイドルファミリーは、まさに十人十色のグループの特色を兼ね揃えていると言えるだろう。例えば、AKB48グループ、坂道シリーズなどでは秋元康がプロデュースを行い、ハロプロはつんく♂というように、作詞、作曲においてクリエイターが違うことはあっても、同じファミリーにおいてプロデュースが異なることは極めて稀だ。秋元はコメントの中で、「料理に和食や中華、イタリアン、フレンチがあるように」と、各メンバーを“食材”に例え、“調理法”をプロデュースに例えているのが分かりやすい。そんなライバルであり、同士である5グループがファミリーとして結束した時、結成半年とは思えない大きなグループが誕生する。ラストアイドルファミリーとして披露した「バレンタイン・キッス」、TRF「寒い夜だから…」、アンコールでの「ラスアイ、よろしく」には、AKB48グループのライブやハロコンなどにも見られるファミリー独特の一体感が生まれていた。


 コンサート中には、ソロコーナーの審査員として選ばれた吉田豪を前に、因縁の相手でもある長月が「なんでいるのー!」と嫌そうにプク顔を見せるも、勝者として選ばれ「大好きです」と態度を急変させるなど、番組恒例の笑いも生み出していた。また、MCの進行を吉崎が仕切っていたのも、ファミリー全体として注目すべき点だろう。ライブ中には2ndシングルの発売日が4月18日に決定したことがアナウンスされた。果たして、ラストアイドル以外のグループが表題曲を獲得するという下克上は起きるのだろうか。(渡辺彰浩)