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志田未来の嫌な顔が憎い!? “いくつもの顔”を見せる『明日の君がもっと好き』で新境地へ

2018年02月17日 07:52  リアルサウンド

リアルサウンド

 『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系)で、伊藤歩に噛みつき、渡辺大を翻弄し、森川葵を恋い焦がれさせている志田未来。キーパーソンとも言えるポジションを好演し、ひとつの作品内で見せる“いくつもの顔”に注目が集まる。子役出身者として華々しいキャリアを築き上げてきた彼女だが、もはやその面影は見当たらず、新境地に踏み込みつつあるのだ。


 恋に冷めた植物系男子の造園デザイナー・松尾亮(市原隼人)、ダメンズばかりに引っかかってしまう30代秘書・里川茜(伊藤歩)、過去のトラウマがきっかけで年上女性に異常な態度を見せる男・城崎遥飛(白州迅)、自身の性的アイデンティティーに悩みを抱える女・丹野香(森川葵)、彼ら男女の複雑に交錯する“運命”を描いて話題の『明日の君がもっと好き』。そこに志田が演じる黒田梓も登場する。彼女は茜の妹であり、その茜から奪った智弘(渡辺大)の夫であり、夜にガールズバーで働く香とは懇ろな間柄である。つまり、伊藤歩との姉妹関係、渡辺大との夫婦関係、森川葵との友情・恋愛関係を演じ分け、物語を転がすポジションとして彼らに働きかける。


 それぞれの関係性の中で見せる、その“顔”の多さ。姉に対しては、自身と比較して劣等感に苛まれ、常に嫌味の効いたトゲのある言い回しで迫る。どこで“怒”のスイッチが入るかまったく読めない彼女の演技の、あのスリル感を楽しむ向きも多いのではないだろうか。智弘との冷めた夫婦関係には人妻としての説得力ある終始ローテンションで挑み、打って変わって香の前では明るい少女のようなトキメく姿を見せる。香との関係を妬いた智弘を翻弄し楽しむ小悪魔的な笑顔をのぞかせたかと思えば、カミングアウトし居場所を失った香を守ろうと必死な姿を見せる。


 こうして、本作での志田は“いくつもの顔”を使い分ける。子役としての強い印象が残っている俳優の場合、見守ってきた身(=視聴者)としては、やはり我が子を見るような気持ちになりがちだろう。「成人しても、子供は子供」、というものである。そういった人々の存在をしたたかに裏切る好演であることに間違いない。


 幼少期から女優活動を開始した志田は、 『女王の教室』(2005/日本テレビ系)で民放ドラマ初のレギュラー出演を果たした。彼女にとって出世作でもある本作で、知名度は跳ね上がり、数多くいる子役たちの中でスター的な存在となる。続く『14歳の母』(2006/日本テレビ系)では主演を務め、センセーショナルな題材にシリアスな演技で適応し、幅の広さを見せつけた。やはりテレビでの活躍が圧倒的に多いが、2009年には『誰も守ってくれない』で映画に初主演、2010年には『借りぐらしのアリエッティ』で声優に初挑戦し、見事に声だけでタイトルロールを演じ上げた。演じるキャラクターは多岐にわたるが、子役スターということもあり、いずれも子供たちの代表といえるような、共感を呼びやすいものが多かった。


 『明日の君がもっと好き』での志田のキャラクターはまさに新境地を切り拓いているが、ここ最近では、『伊藤くん A to E』などでも新たな顔を見せてくれた。冒頭に記したように、たしかに演技の面では子役時代の面影を払拭したものと見て取れる。しかしいまだ残るあどけなさは、予想外のギャップを生み、現在の彼女の活躍にプラスに働いているように思える。なかなか共感を得がたいような複雑なキャラクターでも好演を見せるようになった今、変わらぬルックスと積み上げられた経験値は、同世代のほかの者たちの持っていない大きな武器になっているだろう。


 まだまだ中盤戦の『明日の君がもっと好き』。加速する運命の歯車の、最も重要な原動力に彼女がなっているのは間違いないが、今度どのように立ち回るのか目が離せない。


参考:森川葵が語る、女優としての現在 「どこに向かっていけばいいのか迷走中」


(折田侑駿)