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けやき坂46はなぜ面白く、新しく、楽しい? ライブ演出や展開のスピードから分析

2018年02月16日 18:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 けやき坂46は、欅坂46の持つ“もう一つの可能性”を提示するだけでなく、自分たち独自の道を切り拓く存在へと成長し続けている。1月30日から2月1日までの3日間行われたけやき坂46の日本武道館単独公演は、それを証明するのに十分なライブだった。詳細なレポートや一人ひとりの発言は別稿に譲って、本稿ではいくつかのトピックを抜き出してみたい。


 ビジョンも使わず等身大のパフォーマンスで表現した冒頭2曲から、モーションキャプチャを導入して瞬間移動のように演出した「語るなら未来を…」、ワイヤーアクションを取り入れた「誰よりも高く跳べ!」など、演出面でも「サーカス」をテーマの中心に据えながらメリハリを付けた同公演。なかでも一番の変化は、メンバー以外のパフォーマーをステージに上げ、よりスケールの大きな世界観を表現してみせたことだろう。その極地といえるのが中盤の「100年待てば」 だった。


(参考:けやき坂46は“ハッピーオーラ”でさらなる快進撃へ


 この楽曲はもともと、けやき坂46始動のきっかけになった重要人物・長濱ねるのソロ曲であり、昨年、彼女が兼任を解除し欅坂46専任になると聞いたときには、けやき坂46のライブで聴くことはもうないだろうと思っていた。が、メンバー11人だけでなく、ダンサーTAKAHIROが代表を務めるダンサーエージェント・INFINITYの面々がフラッシュモブとして加わったことで、武道館がこの日一番の“ハッピーオーラ”に包まれた。


 幕間で道化師によって披露されたジャグリングやフラッグといったパフォーマンスは、けやき坂46が全国ツアーで挑戦してきたこと。それを踏まえて考えると、この日の演出は決して突飛なものではなく、すべて彼女たちが切り開いてきた道の上にあり、欅坂46とは別の可能性そのものだ。


 そんな可能性をさらに拡大するべく増員されたけやき坂46の2期生は、幕張公演に続き堂々たるソロダンスとMCで観る者を驚かせた。彼女たちの単独パフォーマンスは「おいでシャンプー」(30日公演)「君の名は希望」(31日公演)「制服のマネキン」(1日公演)と乃木坂46のカバーであり、いずれも31日に卒業を発表した生駒里奈のセンター曲だった。この構成が偶然か必然かは不明だが、坂道シリーズの礎を築いた楽曲をこのタイミングで披露するのは、ある種“継承”の決意表明であり、先輩たちへの大胆な挑戦状とも取れる。「制服のマネキン」でセンターに立った渡邉美穂の表情からは、楽曲の元来持つイノセントさを感じることができた。


 2期生も加わった総勢20名による「NO WAR in the future」は、欅坂46が「サイレントマジョリティー」から提示してきたアコースティックギター×ダンスミュージックの最新系ともいえる楽曲で、グループ随一のフロアアンセム。インド舞踊→殺陣→フラメンコ→コサックダンスと世界の踊りを次々に繰り出してから楽曲へ入るという演出は、これまで何度も書いてきたように、世界の舞台を見据えるけやき坂46の真骨頂ともいえる。


 アンコールでは、新曲「イマニミテイロ」が披露された。同曲は乃木坂46が「アンダー」という曲で提示してきたような、逆境をはねのけるために贈られた歌なのだろう。だが、パフォーマンスにハッキリとした影は見られず、むしろ明るく楽しく前向きな逆襲劇を歌っているように感じられた。


 そして、最後にサプライズとして発表されたのは、けやき坂46単独名義でのアルバムリリースだった。先の乃木坂46が今年初頭にアンダーアルバムをリリースし、好セールスを記録したことは記憶に新しいが、それを早くも坂道シリーズ内で、けやき坂46が応用した形だ。坂道シリーズにおいて、特にけやき坂46のクリエイティブには、制作チーム内でのサイクルが素早く展開されているように思える。だからこそ、今のけやき坂46は面白く、新しく、そして楽しい。(中村拓海)